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No.1
07 最初の街
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俺とマリアを乗せた救命ボートが海岸沿いに灯台らしき構造物が見える方に向かって移動すると、石造りの建物が立ち並ぶ街並みが視界に入ってきた。
そこにはハバキと似た様な姿の鳥人間がそこかしこに地上1mぐらいを飛んで移動していたり、獣の毛皮をその身に宿した人の様な奴とかあからさまに肉食感満載のキバなんかを生やしてる爬虫類っぽい顔の奴が歩いている。
「普通の人の方が少ないってのは異世界転生モノでは普通なのか?」
「どうかしら?前にも言ったと思うけどあたしって最近の転生モノってあまり趣味に合わなかったからほとんど見てないの。少し前のニッポンの軍隊が異世界に行くタイプのなら面白かったから見たけどそっちは普通の人の方が多い感じだったかな?」
軍隊じゃなくて自衛隊のアニメだな。俺もそれは見た事がある気がするが…
「んーそれにしても俺らってずいぶんと見られてる気がしないか?」
「そうね。すごく見られてるわ♡やっぱりわかる人にはわかるのよ♡」
俺とマリアの温度差はもう縮まらないのかなぁ…ちょっとシナを作ってウッフンなんて言ってそうな感じにこっちを見てウインクとかしてくるマリアがなかなかにウザイ。
「とりあえずマリア、ハバキが所属している兵隊が居る場所がどこらへんになるのかそこらの人に聞いてみてくれ」
「はーい♪」
俺は船着き場らしき場所に救命ボートを寄せ、とりあえずロープを持って桟橋に上がり係留してからエンジンを切った。
視界にマリアを収めつつ作業をしていたら、ずいぶんと多くの人に囲まれたマリアが手振り身振りで話をしていて、それに何人かの女性らしき人が答えてくれていた。
「どうだった?ハバキの居る場所は分かったか?」
マリアの話している辺りから少し距離を取りボートから離れない様にしつつ声をかけたらマリアが振り向いて頷いた。
「町の反対側の入り口に兵舎があるんだって。たぶんそこに居るって教えてくれた」
小走りに近付いてくるマリアと一緒に何人かの女性が近付いて来た。
「ねぇあなたって商人なの?この子の持ってる装飾品とか食料などを他にも色々持ってるって今聞いたんだけど」
大きなネコの目の様な虹彩をもつ他に動物らしき特徴のまったく無い人が代表で話しかけてきた。
「あぁ、一応持って来てはいるが…一応ハバキって奴に話が届いてからでないと商売とかどうやったらいいか分からないから、ちょっと待ってもらってもいいか?」
「あらそうなの? 街の商業管理組合にまだ挨拶に行ってないなら勝手に売り買いとかしたら怒られちゃうわね。分かったわ。それじゃあ明日もう一回この辺りに寄るから商売できるようになってたらよろしくね」
ネコ目の女性がそう言って一緒に居た人と共に離れて行った。
「なんか普通に話をまとめる感じに割って入ってきて話しかけてきたけどあの人ってこの町の偉い人なのかな?」
「どうだろうな。服装を見る限りでは他の人より少し布の量が多めでカラフルな感じだったから、もしかしたらこの街の権力者の1人かもしれないな」
「布の量?それが偉さと何か関係があるの?」
「よく見てみれば分かるぞ。貧乏人は足とか腕を露出してる奴が多めで貴族階級とか権力者ていうのはほとんど地肌を外に露出しない感じの服装をしてるから」
昔の人の生活習慣を元に考察された一般論をマリアに提示するも、この世界でそのまま同じ感じに世の中が回ってるかどうかなんてわからないのでそれほど意味のない説明ではあるが、そこまで大きく間違ってない感じがする。
その後港を巡回していた兵士の様な奴が港の使用料金がどうとかって話しかけてきたので、ハバキの事を伝えてみたところ、一応俺達の話が港にも届いていたらしく新人らしき兵隊が走って連絡に行ってくれた。
30分ぐらい経ってそろそろマリアがしびれを切らし始めた頃にハバキが数人の兵士を伴って浮きながら近づいて来た。
「よう!マサルにマリア!早かったな。この船に乗ってきたのか?」
10人ぐらい体育座りですし詰め状態で乗れそうな小型の救命ボートは一応船と認識できる様だ。
「あぁ、一応これぐらいの乗り物なら街の港に入れるかと思って準備してきたけど、ここって街に入るのに金が必要だったりするのか?」
「一応必要だけどマサルとマリアは必要無いぞ。近くに移り住んで来たお隣さんとして町の偉い奴に受け入れさせる様に話をつけておいたんで…そう言えば2人は今日からこの町に移り住むつもりって事で良いのか?」
ハバキの連れてきた兵士が港の警備員に何か袋を渡していた。恐らく港の使用料に相当する金額が入っているのだろう。
「まだ俺達が定住できるかどうかわからないから戻れるように準備して何日か生活できるように物資を見繕ってきてはいるが…」
「まぁそうだな。簡単には住み慣れた城を捨てるなんて出来ないだろうからな。分かった。こっちで用意した宿でいいなら4~5日ぐらいなら街を見て回ってもらって構わないから。それともしよければ…」
顔を近づけてハバキが『できればあのうまい料理を街のお偉いさんに一回振る舞ってもらえないか?』なんて聞いてきた。
とりあえずそれで滞在費がチャラになるなら安い物だと思い了解しておいたのだが、俺は厨房に連れて行かれてから一つ失敗した事に気付いた。
「薪を使う調理器具とか使った事ないし…困ったぞ」
「アウトドア用の調理器具とかどこかに入ってたりしないのかな?」
マリアが何気なく提案してくれたが、街のお偉いさん達に振る舞う料理をアウトドア料理で済ませるってのはどうなんだ?
そもそもこいつハバキについて行って街の見物でもしてればいいものをなんで厨房までついてきたんだろう。
「料理を嗜むものとしてそんなのを街のお偉いさんに出すのはちょっとなぁ」
「じゃぁ薪のかまどで料理って出来るの?あたしの住んでた所でもそうとう田舎の辺りに行かないと薪で料理してる所とか無いよ。最近はどんな田舎でも普通にガスコンロとか電気調理器で料理してるからね?」
まぁそれが俺達の感覚では普通なんだけど…こんな火力の調理場で出来る料理なんて煮込み料理か焼き料理くらいだよなぁ。
「ねぇ、このコンテナなんて色々入ってそうじゃない?」
マリアがタブレットPCに画像を表示させながら聞いてきたのは内容物にアウトドア製品各種と記載されている項目だった。詳しく見てみると日本の登山などの専門店舗を経営している会社のコンテナらしい。
「マリアはカタカナは読めるのか?」
「アニメで覚えたわ」
アニメ世代ってすごいのね。俺なんか英語がまともに読めるようになったのって…あぁマリアの年代とそう大差ない頃か。まぁでも世界の共通言語として一番話す人の多い英語とオタクカルチャー文化に傾倒してる奴や日本が好きな奴ぐらいしか話さない日本語を比べるのはあまりにナンセンスだ。マリアはすごいって覚えておこう。でもお前はまだまだだがな!(ペッタンコ具合の方で♪)
その後ハバキにマリアの言ってくれたアウトドア製品を使った料理の事を話したらちょっと渋い顔をされた。
「あの料理はあの城の中でしか作れないって事か…コマッタナァ」
何が困ったんだろう?
俺の顔を見て俺が自分の苦悩を察してない事に気付いたハバキが説明してくれた話によると、
「食べたものの味を共有できる魔法があるの?」
「食べたものというより記憶した情景を5感を伴って情報を共有する魔法って感じだ」
なんかすごい魔法が使える様だ。
「だからこの町で一番設備の整っている領主館の厨房を使えるように話をつけて、私が食べた料理を食べさせるって話を元に交渉したんだが…」
「あの料理のクオリティーを求めるならば、最低でもガスコンロと清潔な水がその場で出せる程度の設備が無いと無理だな」
「そっかぁ…」
ハバキは少しの間ブツブツ小声で独り言を言いながら何か考えていたが、とりあえず考えがまとまったらしく俺の方を見て近付いて来た。
「あの厨房であればあの料理は作れるんだよな?」
顔が近いってば。
「あぁ俺がずっと仕事をしてきた場所なんであの時見せた料理程度であれば作れるが」
「よし。ちょっと話をつけてくるから。おい!おまえら!この二人を街に連れて行って色々案内して差し上げろ!」
俺に話しかけつつ近くに待機していた兵士に命令して厨房から飛び出していったハバキ。
俺とマリアと残された兵隊さんは揃ってポカーンですけどどうしたらいいの?
「ハバキ隊長って種族的に頭の回転が速くてたまに何を考えてどうしてそうなるのかってのがよく分からないなんて事があってですね」
ラルクアとセルビスって名前の兵隊さん2人が俺とマリアを連れて街を案内してくれた。
「そういえばハバキってほとんどハダカなのはあれは種族的なものなのか?」
「あぁ飛天翔族の連中は基本的に夏場はあんな姿だな」
「冬場はほとんど動かなくなるから着ぶくれてるけどね」
どうもハバキ達飛天翔族は、ここよりもっと暖かい場所が生息圏らしい。
寒さに弱いと言うより重い装備をつけて飛べないのが原因で温かい時期限定で仕事をする季節労働者の様な生態で生活している様だな。
おおらかと言うか変わってるというか…半年ほとんど仕事をしなくても街の衛兵の隊長職を務められる程度には優秀って事なのだろうか?
ハバキの情報をネタにラルクアとセルビス2人と少しずつ打ち解け合いながら街の中を見て回っていると屋台がそこそこ多くあるのが気になった。
「ここらの食事事情って毎日屋台で食う感じなのか?」
台湾あたりの屋台のイメージを思わせるような雑多な感じに専用の通りがある。
「そうだな。種族的にも調理が苦手な連中がけっこういるから屋台で食事を済ませる奴がそこそこ多い感じだ」
「マサルも料理人なんだよな?ハバキ隊長がすごく嬉しそうに食事の記憶を見せてたから俺らもその味を知ってるけどあれってやっぱり作るのって大変なのか?」
屋台を横目に見ながら屋台通りを通り抜け、今度は武器防具類が並んだエリアに来た。
「今まで毎日5食30人分以上を2人で作ってきたんでメニューが決まってるならそれほど大変って事は無いが俺の所の調理場ってちょっと特殊でね」
道を歩いていて簡単に手に取れる所に1mぐらいの刃渡りの剣が置いてあったり某ウルヴァ〇ンの爪みたいなのが置いてあったりなかなかに危険な環境の中マリアの手を握って歩いてると今度は食材を扱っているエリアにさしかかった。
一応似たような店が近くに集まって営業する様に場所が決められているみたいだ。
「ここらは食材が売っている辺りなんだな」
「あぁ。ここらは船着き場と街道門から近いので、搬入しやすい所だから重い物の多い食材なんかを扱う店が多いな」
「もう少し行ったら奴隷とか売ってる辺りになってその先に俺達の兵舎があるんだ」
「ねぇ、ここには宝石とか扱ってるお店って無いの?」
「あるぞ。ただそんなに多くないから宝石とかを扱う店は治安の良い領主館のある辺りか俺達兵舎の近くにあるぞ。マリアちゃんは宝石に興味があるのか?」
マリアとラルクアは仲良く店の話をしつつ並んで歩く様になってきた。
ラルクアのちょっと中性的な顔立ちがとっつきやすかったのかな?
「あぁあそこ。あの兵士が2人門の所に立ってる所が俺達がいつも居る兵舎だ。そしてその先にあるのが領軍の詰め所になる」
兵舎の門の先はそこそこ広い空間があり、訓練などに使ってそうな施設らしき物や兵隊さんたちの住居みたいな大きな建物が並んでいた。そして領軍の建物は俺達が最初に案内された領主館と似た大きさの建物で街の海と山のちょうど真ん中辺りの街のはずれに位置する場所にあった。
頭の中に描いたこの街は北にそこそこ高い山があり、南にそこそこ開けた平野があって、西に北の山から続く少し大きな川が流れていて、東に他の街に繋がる大きな街道が続いている。
なんとなく日本の関東平野とかイタリアのミラノなんかをイメージさせる街が繁栄しやすい地形と共通するイメージがある。
「ここに街を作った先人はよく分かってたみたいだな」
「そうなのか?」
「あぁ。ここならある程度の人が住んでいるだけでどんどん他の所から人も物資も集まって来るだろうな」
「そんなのが街を見るだけで分かるものなんだな。マサルは学者さんでもあるのか?」
セルビスが少し態度を改めた感じに聞いてきた。
さっきまでは鎧を着た肩をぶつける様な気軽さがあったのだが、ちょっとだけ距離を感じるしゃべり方になった気がする。
「学者なんて言えるほどの知識を持ってるわけじゃないんで勘違いしないでくれ。俺は船の料理人だぞ」
ある程度ざっくりとではあったが街を見て回り、売ってる物の金額を聞きながらここの通貨が金貨と銀貨、銅貨があり、金貨だけ大小2種類。それぞれの間に10倍の価値があるのを教えてもらった。銅貨から大金貨まで千倍の価値の差があるって感じ。ちなみにそれぞれの素材の四角い硬貨(硬貨の半分の価値)もあるそうだが、あまり流通してないらしい。
「おーい!!」
今日泊まる予定の宿に案内してもらっているとハバキが文字通り飛んで近付いて来た。
「マサルは今日城に戻るのか?」
到着早々質問してくるハバキ。
「特に帰るつもりはなかったが?」
「帰れない訳ではないんだな。よっし。これからネームレス退治に行くから城主として討伐の許可を出してくれ」
なんか話がいきなりすぎてちょっと困るが…えっ?ネームレスを討伐するの?
ラルクアの言っていたハバキ隊長がよく分からないって言葉の意味がなんとなく理解できた気がした。
そこにはハバキと似た様な姿の鳥人間がそこかしこに地上1mぐらいを飛んで移動していたり、獣の毛皮をその身に宿した人の様な奴とかあからさまに肉食感満載のキバなんかを生やしてる爬虫類っぽい顔の奴が歩いている。
「普通の人の方が少ないってのは異世界転生モノでは普通なのか?」
「どうかしら?前にも言ったと思うけどあたしって最近の転生モノってあまり趣味に合わなかったからほとんど見てないの。少し前のニッポンの軍隊が異世界に行くタイプのなら面白かったから見たけどそっちは普通の人の方が多い感じだったかな?」
軍隊じゃなくて自衛隊のアニメだな。俺もそれは見た事がある気がするが…
「んーそれにしても俺らってずいぶんと見られてる気がしないか?」
「そうね。すごく見られてるわ♡やっぱりわかる人にはわかるのよ♡」
俺とマリアの温度差はもう縮まらないのかなぁ…ちょっとシナを作ってウッフンなんて言ってそうな感じにこっちを見てウインクとかしてくるマリアがなかなかにウザイ。
「とりあえずマリア、ハバキが所属している兵隊が居る場所がどこらへんになるのかそこらの人に聞いてみてくれ」
「はーい♪」
俺は船着き場らしき場所に救命ボートを寄せ、とりあえずロープを持って桟橋に上がり係留してからエンジンを切った。
視界にマリアを収めつつ作業をしていたら、ずいぶんと多くの人に囲まれたマリアが手振り身振りで話をしていて、それに何人かの女性らしき人が答えてくれていた。
「どうだった?ハバキの居る場所は分かったか?」
マリアの話している辺りから少し距離を取りボートから離れない様にしつつ声をかけたらマリアが振り向いて頷いた。
「町の反対側の入り口に兵舎があるんだって。たぶんそこに居るって教えてくれた」
小走りに近付いてくるマリアと一緒に何人かの女性が近付いて来た。
「ねぇあなたって商人なの?この子の持ってる装飾品とか食料などを他にも色々持ってるって今聞いたんだけど」
大きなネコの目の様な虹彩をもつ他に動物らしき特徴のまったく無い人が代表で話しかけてきた。
「あぁ、一応持って来てはいるが…一応ハバキって奴に話が届いてからでないと商売とかどうやったらいいか分からないから、ちょっと待ってもらってもいいか?」
「あらそうなの? 街の商業管理組合にまだ挨拶に行ってないなら勝手に売り買いとかしたら怒られちゃうわね。分かったわ。それじゃあ明日もう一回この辺りに寄るから商売できるようになってたらよろしくね」
ネコ目の女性がそう言って一緒に居た人と共に離れて行った。
「なんか普通に話をまとめる感じに割って入ってきて話しかけてきたけどあの人ってこの町の偉い人なのかな?」
「どうだろうな。服装を見る限りでは他の人より少し布の量が多めでカラフルな感じだったから、もしかしたらこの街の権力者の1人かもしれないな」
「布の量?それが偉さと何か関係があるの?」
「よく見てみれば分かるぞ。貧乏人は足とか腕を露出してる奴が多めで貴族階級とか権力者ていうのはほとんど地肌を外に露出しない感じの服装をしてるから」
昔の人の生活習慣を元に考察された一般論をマリアに提示するも、この世界でそのまま同じ感じに世の中が回ってるかどうかなんてわからないのでそれほど意味のない説明ではあるが、そこまで大きく間違ってない感じがする。
その後港を巡回していた兵士の様な奴が港の使用料金がどうとかって話しかけてきたので、ハバキの事を伝えてみたところ、一応俺達の話が港にも届いていたらしく新人らしき兵隊が走って連絡に行ってくれた。
30分ぐらい経ってそろそろマリアがしびれを切らし始めた頃にハバキが数人の兵士を伴って浮きながら近づいて来た。
「よう!マサルにマリア!早かったな。この船に乗ってきたのか?」
10人ぐらい体育座りですし詰め状態で乗れそうな小型の救命ボートは一応船と認識できる様だ。
「あぁ、一応これぐらいの乗り物なら街の港に入れるかと思って準備してきたけど、ここって街に入るのに金が必要だったりするのか?」
「一応必要だけどマサルとマリアは必要無いぞ。近くに移り住んで来たお隣さんとして町の偉い奴に受け入れさせる様に話をつけておいたんで…そう言えば2人は今日からこの町に移り住むつもりって事で良いのか?」
ハバキの連れてきた兵士が港の警備員に何か袋を渡していた。恐らく港の使用料に相当する金額が入っているのだろう。
「まだ俺達が定住できるかどうかわからないから戻れるように準備して何日か生活できるように物資を見繕ってきてはいるが…」
「まぁそうだな。簡単には住み慣れた城を捨てるなんて出来ないだろうからな。分かった。こっちで用意した宿でいいなら4~5日ぐらいなら街を見て回ってもらって構わないから。それともしよければ…」
顔を近づけてハバキが『できればあのうまい料理を街のお偉いさんに一回振る舞ってもらえないか?』なんて聞いてきた。
とりあえずそれで滞在費がチャラになるなら安い物だと思い了解しておいたのだが、俺は厨房に連れて行かれてから一つ失敗した事に気付いた。
「薪を使う調理器具とか使った事ないし…困ったぞ」
「アウトドア用の調理器具とかどこかに入ってたりしないのかな?」
マリアが何気なく提案してくれたが、街のお偉いさん達に振る舞う料理をアウトドア料理で済ませるってのはどうなんだ?
そもそもこいつハバキについて行って街の見物でもしてればいいものをなんで厨房までついてきたんだろう。
「料理を嗜むものとしてそんなのを街のお偉いさんに出すのはちょっとなぁ」
「じゃぁ薪のかまどで料理って出来るの?あたしの住んでた所でもそうとう田舎の辺りに行かないと薪で料理してる所とか無いよ。最近はどんな田舎でも普通にガスコンロとか電気調理器で料理してるからね?」
まぁそれが俺達の感覚では普通なんだけど…こんな火力の調理場で出来る料理なんて煮込み料理か焼き料理くらいだよなぁ。
「ねぇ、このコンテナなんて色々入ってそうじゃない?」
マリアがタブレットPCに画像を表示させながら聞いてきたのは内容物にアウトドア製品各種と記載されている項目だった。詳しく見てみると日本の登山などの専門店舗を経営している会社のコンテナらしい。
「マリアはカタカナは読めるのか?」
「アニメで覚えたわ」
アニメ世代ってすごいのね。俺なんか英語がまともに読めるようになったのって…あぁマリアの年代とそう大差ない頃か。まぁでも世界の共通言語として一番話す人の多い英語とオタクカルチャー文化に傾倒してる奴や日本が好きな奴ぐらいしか話さない日本語を比べるのはあまりにナンセンスだ。マリアはすごいって覚えておこう。でもお前はまだまだだがな!(ペッタンコ具合の方で♪)
その後ハバキにマリアの言ってくれたアウトドア製品を使った料理の事を話したらちょっと渋い顔をされた。
「あの料理はあの城の中でしか作れないって事か…コマッタナァ」
何が困ったんだろう?
俺の顔を見て俺が自分の苦悩を察してない事に気付いたハバキが説明してくれた話によると、
「食べたものの味を共有できる魔法があるの?」
「食べたものというより記憶した情景を5感を伴って情報を共有する魔法って感じだ」
なんかすごい魔法が使える様だ。
「だからこの町で一番設備の整っている領主館の厨房を使えるように話をつけて、私が食べた料理を食べさせるって話を元に交渉したんだが…」
「あの料理のクオリティーを求めるならば、最低でもガスコンロと清潔な水がその場で出せる程度の設備が無いと無理だな」
「そっかぁ…」
ハバキは少しの間ブツブツ小声で独り言を言いながら何か考えていたが、とりあえず考えがまとまったらしく俺の方を見て近付いて来た。
「あの厨房であればあの料理は作れるんだよな?」
顔が近いってば。
「あぁ俺がずっと仕事をしてきた場所なんであの時見せた料理程度であれば作れるが」
「よし。ちょっと話をつけてくるから。おい!おまえら!この二人を街に連れて行って色々案内して差し上げろ!」
俺に話しかけつつ近くに待機していた兵士に命令して厨房から飛び出していったハバキ。
俺とマリアと残された兵隊さんは揃ってポカーンですけどどうしたらいいの?
「ハバキ隊長って種族的に頭の回転が速くてたまに何を考えてどうしてそうなるのかってのがよく分からないなんて事があってですね」
ラルクアとセルビスって名前の兵隊さん2人が俺とマリアを連れて街を案内してくれた。
「そういえばハバキってほとんどハダカなのはあれは種族的なものなのか?」
「あぁ飛天翔族の連中は基本的に夏場はあんな姿だな」
「冬場はほとんど動かなくなるから着ぶくれてるけどね」
どうもハバキ達飛天翔族は、ここよりもっと暖かい場所が生息圏らしい。
寒さに弱いと言うより重い装備をつけて飛べないのが原因で温かい時期限定で仕事をする季節労働者の様な生態で生活している様だな。
おおらかと言うか変わってるというか…半年ほとんど仕事をしなくても街の衛兵の隊長職を務められる程度には優秀って事なのだろうか?
ハバキの情報をネタにラルクアとセルビス2人と少しずつ打ち解け合いながら街の中を見て回っていると屋台がそこそこ多くあるのが気になった。
「ここらの食事事情って毎日屋台で食う感じなのか?」
台湾あたりの屋台のイメージを思わせるような雑多な感じに専用の通りがある。
「そうだな。種族的にも調理が苦手な連中がけっこういるから屋台で食事を済ませる奴がそこそこ多い感じだ」
「マサルも料理人なんだよな?ハバキ隊長がすごく嬉しそうに食事の記憶を見せてたから俺らもその味を知ってるけどあれってやっぱり作るのって大変なのか?」
屋台を横目に見ながら屋台通りを通り抜け、今度は武器防具類が並んだエリアに来た。
「今まで毎日5食30人分以上を2人で作ってきたんでメニューが決まってるならそれほど大変って事は無いが俺の所の調理場ってちょっと特殊でね」
道を歩いていて簡単に手に取れる所に1mぐらいの刃渡りの剣が置いてあったり某ウルヴァ〇ンの爪みたいなのが置いてあったりなかなかに危険な環境の中マリアの手を握って歩いてると今度は食材を扱っているエリアにさしかかった。
一応似たような店が近くに集まって営業する様に場所が決められているみたいだ。
「ここらは食材が売っている辺りなんだな」
「あぁ。ここらは船着き場と街道門から近いので、搬入しやすい所だから重い物の多い食材なんかを扱う店が多いな」
「もう少し行ったら奴隷とか売ってる辺りになってその先に俺達の兵舎があるんだ」
「ねぇ、ここには宝石とか扱ってるお店って無いの?」
「あるぞ。ただそんなに多くないから宝石とかを扱う店は治安の良い領主館のある辺りか俺達兵舎の近くにあるぞ。マリアちゃんは宝石に興味があるのか?」
マリアとラルクアは仲良く店の話をしつつ並んで歩く様になってきた。
ラルクアのちょっと中性的な顔立ちがとっつきやすかったのかな?
「あぁあそこ。あの兵士が2人門の所に立ってる所が俺達がいつも居る兵舎だ。そしてその先にあるのが領軍の詰め所になる」
兵舎の門の先はそこそこ広い空間があり、訓練などに使ってそうな施設らしき物や兵隊さんたちの住居みたいな大きな建物が並んでいた。そして領軍の建物は俺達が最初に案内された領主館と似た大きさの建物で街の海と山のちょうど真ん中辺りの街のはずれに位置する場所にあった。
頭の中に描いたこの街は北にそこそこ高い山があり、南にそこそこ開けた平野があって、西に北の山から続く少し大きな川が流れていて、東に他の街に繋がる大きな街道が続いている。
なんとなく日本の関東平野とかイタリアのミラノなんかをイメージさせる街が繁栄しやすい地形と共通するイメージがある。
「ここに街を作った先人はよく分かってたみたいだな」
「そうなのか?」
「あぁ。ここならある程度の人が住んでいるだけでどんどん他の所から人も物資も集まって来るだろうな」
「そんなのが街を見るだけで分かるものなんだな。マサルは学者さんでもあるのか?」
セルビスが少し態度を改めた感じに聞いてきた。
さっきまでは鎧を着た肩をぶつける様な気軽さがあったのだが、ちょっとだけ距離を感じるしゃべり方になった気がする。
「学者なんて言えるほどの知識を持ってるわけじゃないんで勘違いしないでくれ。俺は船の料理人だぞ」
ある程度ざっくりとではあったが街を見て回り、売ってる物の金額を聞きながらここの通貨が金貨と銀貨、銅貨があり、金貨だけ大小2種類。それぞれの間に10倍の価値があるのを教えてもらった。銅貨から大金貨まで千倍の価値の差があるって感じ。ちなみにそれぞれの素材の四角い硬貨(硬貨の半分の価値)もあるそうだが、あまり流通してないらしい。
「おーい!!」
今日泊まる予定の宿に案内してもらっているとハバキが文字通り飛んで近付いて来た。
「マサルは今日城に戻るのか?」
到着早々質問してくるハバキ。
「特に帰るつもりはなかったが?」
「帰れない訳ではないんだな。よっし。これからネームレス退治に行くから城主として討伐の許可を出してくれ」
なんか話がいきなりすぎてちょっと困るが…えっ?ネームレスを討伐するの?
ラルクアの言っていたハバキ隊長がよく分からないって言葉の意味がなんとなく理解できた気がした。
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