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特報
しおりを挟む今日はわたしから、大事なお話をふたつ。
まずは、ノワールの重大ニュースを。
実は、ノワール国際病院で院長を務めていた小野寺蒼先生が、院長を引退された。
御年70歳。節目ということで、このタイミングで退くことは以前から決めてあったそう。
その後任として、新たな院長に就任したのは、なんと、宇髄先生。
さらに、豪先生も蒼先生と同時に引退されたので、工藤先生が外科の医局長になった。
院長が交代したノワールは、なんとなく組織が新しくなった印象がありつつも、国内トップレベルの医療機関として、高度で幅広い医療を提供していることに変わりなく。
ますます進化するここノワールで、医師の道を歩めていることに感謝と誇りを抱いている。
そして、もうひとつ。
五条「改めて。よろしくな、ひな」
ひな「よろしくお願いします。五条先生」
2年前の約束通り、わたしは五条先生と入籍。
夫、五条悠仁。
妻、五条ひなの。
晴れて、わたしたちは夫婦になった。
結婚式は挙げないことにしていたし、既に同棲もしているので、特にドタバタすることもなく。
氏名変更の手続きや職場の雇用関係書類が少し大変だったくらいで、落ち着いて新たな生活をスタートできた。
ちなみに、祥子さんの真似をしたかったのと、"五条"だと何かとややこしくなりそう……ということで、仕事では旧姓を使うことに。
でも、それなのにみんな、わたしのことを"ひな先生"って……。
結婚前、五条先生に婚約者がいるとの噂は知れ渡っていたようだけど、それが誰なのかは知られていなかったそうで。
五条先生と結婚した途端、わたしが五条先生のパートナーであることは瞬く間に病院中に轟いて……。
りさ先生や黒柱が『ひな先生』と呼ぶのもあってか、他の先生も職員もみんな、"ひな先生"呼び。
せっかく旧姓で通しているのに栗花落先生と呼ばれることはほぼ無くて、もはや、わたしが"栗花落ひなの"であることを知らず、"五条ひなの"どころか、"五条ひな"だと思っている人すら少なくない。
ひな「研修医時代は『栗花落先生』って呼んでくれてたじゃないですか……」
ある時黒柱たちに聞くと、
藤堂「そりゃあ、あの時は間違いなく栗花落先生だったし、建前上ね。医者は医者でもひよっこだったから、栗花落先生で通しておくべきだったでしょ?あ、ひよっこなら別にひな先生でもよかったのか。雛鳥のひな」
ひな「と、藤堂先生……」
工藤「でも、もしひな先生って呼んでたら、それはそれでひなちゃん嫌がっただろうし。俺たちがひなちゃんを昔から知ってるのも、他の研修医や先生には知られたくないみたいだからな」
ひな「そりゃそうですよ。黒柱と親しいなんて思われたら目立つじゃないですか。先生方は憧れの存在なんですから、もう少しその辺りの自覚を持ってください……」
神崎「ずっとひなちゃんって呼んできから、そっちのがシンプルに言いやすいんだよね。カルテに栗花落って書かれてあると、未だに一瞬"ん?"となるよ。というか、結婚してすぐの頃に『五条先生』って呼んでみたけど、ひなちゃん気付かず無反応だったからね(笑)」
ということだった。
そんなわけで、
~小児科医局~
神崎「ひな先生、明日のカンファ、時間変更で15時からになったからよろしく」
ひな「承知しました。ありがとうございます」
看護師「ひな先生!」
ひな「はい!」
看護師「805号室のゆみちゃんが院内学級で発作を起こしたようですっ」
ひな「すぐ行きます!」
~805号室~
ひな「ゆみちゃん、落ち着いたかな。さっき苦しかったね。がんばってえらかったよ」
ゆみ「ひなせんせ……」
ひな「うん?」
ゆみ「ゆみ治る……?」
ひな「大丈夫。少しずつ良くなってるからね。早く元気になるために、少しねんねしよっか。ぽんぽん……」
~小児病棟廊下~
小児「あ!ひなせんせぇーーっ!」
ひな「こーら!廊下走らないよっ!!」
小児「はぁ~い!」
わたしはすっかり、小児科のひな先生で、
あっ……。
ひな「お疲れ様です」
五条「お疲れ」
ひな「……ペコッ」
五条先生とは、廊下ですれ違っても基本的にはこんな感じ。
仕事中は誰よりも距離があるというか……距離を保つようにしているのだけれど、
ガチャッ——
五条「おかえり。遅かったな」
ひな「あれ?ごじょ……悠仁さん。帰ってたんですか?」
五条「ああ。LIMEしただろ」
ひな「全然見てませんでした」
五条「ったく、ひなはいつも……なんかあったのか?」
ひな「カンファの後、すぐ帰るつもりが救急に呼ばれて」
五条「んぁ?なんで他のやつ呼ばないんだよ。研修医でもよかっただろ」
ひな「ちょうどわたししかいなかったんです。悠仁さんもオペ入ってたし、だから先に帰ってるとは……」
五条「ひなが今日は早いと思って、オペぶっ飛ばしたから」
ひな「オペはぶっ飛ばすものじゃないでしょ……もちろん車も何でもですけど」
五条「そんなことより疲れてないか?」
ひな「疲れたけど大丈夫です。あっ、もしかしてごはん待っててくれましたか?」
五条「いや……ひなを待ってた」
ぎゅっ……
ひな「ふぁっ、ちょっ……」
ちゅっ……
ひな「んっ……」
家では、悠仁さんの愛で窒息しそうになりながら。
兎にも角にも、公私共に幸せな毎日を送っている。
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