ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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凪の揺らぎ

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そして、予定日間近になったある日。





藤堂「ごめんね、ひなちゃん。悠仁がいない時に。あれ、おばさんもいない?」


ひな「はい。お母さんは、ちょっと用事ができたみたいで出掛けていて」





藤堂先生がお母さんにまだ挨拶できていなかったからと、我が家に遊びに来てくれた。





ひな「すみません、お母さんに挨拶しにって、悠仁さんから聞いたんですけど」


藤堂「そう思ったけど、僕も急に来ちゃったから気にしないで。都合聞いて来るべきなのにごめんね。いつも時間ができたタイミングで押しかけちゃって」


ひな「いえ、そんな。お母さんあと1時間くらいで帰ってくると思うんです。よかったらゆっくりしていってください」


藤堂「うん、ありがとう。あ、そしたらこれ渡しておこうかな。おばさんとひなちゃんに」





と、なにやら美味しそうなプレゼントをいただいて、





藤堂「ひなちゃんお腹随分下がってきたね。もう産まれるんじゃない?」


ひな「そうですか?予定日は一応まだなんですけど。でも、もういつでも会いたいです」


藤堂「もう本当にすぐだと思うよ」


ひな「そっか、楽しみだな~。あ、お茶淹れますね!」


藤堂「あー、いいのいいのいいの。ひなちゃんは座ってて。勝手するけど、勝手わかってるし、僕がするから」





そう言って、藤堂先生がキッチンに向かうので、お言葉に甘えてお任せすることに。










よっこいしょ。



ソファーに座り、いただいたプレゼントを開けて見ていると、



……っ、……。



なんとなくお腹が痛くなる。

痛みはそんなに強く無くて、お腹が張るというか生理痛というか、そんな感じ。



スゥ…………



お腹に手を当て、ソファーに身体を預け、少し俯くようにして痛みに向き合うと、



……あ、治まった。



すぐに何事もなかったかのようにスッと治まる。





藤堂「ひなちゃん?もしかしてお腹痛い……?」





ふぅ……と息を吐くと、お茶を淹れていた藤堂先生が、そう言いながらわたしのところに。





ひな「いえ、大丈夫です」


藤堂「その大丈夫はどういう大丈夫?いつから痛かったの?」





さすが、どこにいてもわたしの主治医。

キッチンからはわたしの姿もそんなに見えていなかったはずなのに、どうしてわかったんだろう。





ひな「実は、今朝からお腹がよく張ってて……」


藤堂「朝から?ひなちゃん、それ陣痛じゃない?どうりでこんなに下がってるわけだ……」





と、藤堂先生がお腹に手を当てる。





ひな「でも、まだ本陣痛かわからなくて。間隔も全然バラバラだし、前駆陣痛かなと思ったりしていて……」


藤堂「病院にはもう連絡した?」


ひな「いえ、まだ」


藤堂「宇髄先生に言われたでしょ?ひなちゃんの場合は、陣痛が始まったらすぐに連絡してきてって」


ひな「はい。でも、やっぱりあまり早く行くのも申し訳ないので、もう少し、せめて間隔が揃ってきてからにしようかなと思って」


藤堂「そんなことしなくていいの。宇髄先生の言うこと素直に聞かないと。僕が連絡するから、すぐ病院行こう」


ひな「え?でもまだ陣痛じゃないかも……」


藤堂「陣痛じゃなくても行こう。ね?」





ということで、わたしは藤堂先生とノワールへ。










車で送ってもらい、ノワールの産婦人科の裏口に到着。

産婦人科にこんな出入り口があったなんて知らなかったな……なんて思っていると、





藤堂「ひなちゃん降りられる?ゆっくりでいいよ」





と、藤堂先生がドアを開けてくれて、





ひな「大丈夫です、ありがとうございます」





車を降りようとした瞬間、



……っ。



またお腹の痛みが。





藤堂「お腹痛い?」


ひな「……はい、ちょっと……」


藤堂「痛み治まってからでいいよ。一旦閉めようか」





わたしが焦らないように、藤堂先生は開けたドアを軽く閉めて待っててくれて、





藤堂「平気そう?」


ひな「はい、行けます」





痛みが治まったので車を降り、病院の中へ。





真菰「あっ!ひなちゃん!!」


ひな「まこちゃん」





自動ドアを抜けると、ちょうど廊下の先からまこちゃんが歩いてきた。





真菰「宇髄先生から聞いて、タイミングピッタリでしたね」


藤堂「さすが。ありがとう」


真菰「お部屋案内するね。こちらにどうぞ~」





さっそくLDR室に案内され、





真菰「ひなちゃん大丈夫?とりあえず先に着替えちゃおうか。そのカゴに入ってるから、お着替えして、先生来るまでちょっと待っててね。ゆっくり着替えていいよ!」


藤堂「ひなちゃん、バッグここに置いておくよ。僕は車駐車場に停めてまた来るね」





と、まこちゃんも藤堂先生も一旦部屋を離れ、わたしはひとまず分娩着にお着替え。





実は、わたしのお産。

担当医は宇髄先生だけど、助産師はまこちゃんが担当してくれることになっている。



わたしが高校生になって小児科を卒業した後、まこちゃんは小児科の病棟看護師から産婦人科の助産師に異動していた。

実習で小児科に行った時、久しぶりに会えるのを楽しみに思っていたから、まこちゃんがいないことにびっくりしたけど、その後の産婦人科の研修で再会できて、もともと助産師の免許は持っていて興味もあったと聞いて納得。



そして、わたしのバースプランについて話をする中で、出産当日、面識の少ない助産師がいきなり担当することになると、わたしは不安が強くなるだろう、不安材料はなるべく減らしておこう、ということになり、昔お世話になっていたまこちゃんに担当してもらえることになった。





着替えを終えて、入院バッグを整理していると、





コンコンコン——


宇髄「ひなちゃーん」





宇髄先生が。





宇髄「今朝からお腹の張りあるって?今間隔と痛みはどのくらい?」





宇髄先生はわたしのお腹に手を当てて、





ひな「まだ20分だったり15分だったり……痛みは生理痛みたいな感じです。これ本陣痛なのかどうか……」


宇髄「恐らく陣痛だと思うがな。とりあえず、先に内診してからお腹診ようか」


ひな「お願いします……」





と、まずは内診から。





宇髄「ごめんな、ちょっと診るよ。痛くないから力抜いててな」





数日前の検診で、





宇髄「うーん……ひなちゃんごめん。今日ちょっと刺激していいか?」


ひな「え?」


宇髄「子宮口がまだ硬いんだ。赤ちゃんが順調なだけに、もう少し柔らかくなってて欲しい。本当はやってあげたくなかったんだけどな」





と、恐れていた卵膜剥離、俗に言う"内診グリグリ"を、ついに体験したわたし。

あまりの痛さに、久しぶりに処置で泣き叫んだので、今日はきっと気を遣ってくれている。



タオルの中で、宇髄先生の指があそこに入ってくる。



ピクッ……



内診グリグリを思い出し、反射的に身体がピクッとしてしまうが、





宇髄「大丈夫だから。信じて力抜いてごらん」





と、宇髄先生に膝をぽんぽんとされ、





宇髄「うん。子宮口2センチだな。ちゃんと開いてる」





丁寧且つサッと内診してくれて、痛みなく終了。

続いて、エコーをしている最中、





コンコンコン——


五条「ひな!」





悠仁さんと、藤堂先生が。





五条「大丈夫か!」





一目散にわたしの側に来る悠仁さん。





ひな「は、はい。大丈夫です……」





どうやら、わたしに陣痛が来たと聞いて、パニックになっているとでも思い込んだよう。





五条「お、そうか。ハァハァっ、思ったより落ち着いてるな」


藤堂「悠仁、だから大丈夫だってば(笑)」





藤堂先生が悠仁さんの肩にぽんっと手を置き、





宇髄「やかましいな。ひなちゃんは落ち着いてんだ、お前が落ち着かんか。なに息切らしてんだ」





宇髄先生がピシャリ。





五条「す、すみません」


藤堂「ちょっと緊張しすぎ。顔硬いよ~?ほら、お父さんっ」





ぽんぽんっと、藤堂先生に背中を叩かれた悠仁さんは、





五条「ごめんな、すぐ来られなくて。大丈夫か?」





と、わたしの手を握ってくれた。



そうこうしていると、





宇髄「ん……?」





突然、宇髄先生がエコーの手を止める。





ひな「宇髄先生……?何かありましたか……?」


宇髄「ごめん、ひなちゃん。もう一回内診させて」


ひな「えっ?」


宇髄「破水してるかもしれん」





そう言って、宇髄先生はプローブをしまい、わたしのお腹のジェルを拭き取って、





宇髄「入るよ~、息吐いて~」





今度は膣鏡を入れて、破水の有無を調べてもらう。





五条「ひな、大丈夫だ」





ついさっきまでとは反対に、わたしが少し動揺しているのを、悠仁さんが落ち着かせてくれる。





宇髄「やっぱり。高位破水してるな」


ひな「そんな、全然気づかなかったです……」


宇髄「気づかないくらい、羊水はそんなに漏れてないってことだ。心配しなくて大丈夫。ただ、破水してる以上お産は長引かない方がいいから、促進剤は早めに使うかもしれん。とりあえず、今から採血して、CTG付けて、カテーテルも早めに入れよう」





さっきまで平気だったのに、なんだか急に、いよいよ出産なんだって実感が湧いてきて、緊張してきて、少し不安になってきた。

そんなわたしの心境に気づいてか、





宇髄「ひなちゃん、大丈夫だ。何があってもサポートできる体制は整えてるから、安心して臨んだらいい。良いお産にしような」





と、宇髄先生が。





ひな「はい……お願いします」





言葉はそれだけだけど、それだけの言葉と宇髄先生が持つ包容力で、わたしの中でひとつ覚悟が決まった気がして、気持ちが軽く前向きになった。


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