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ノワール学園中等部②
しおりを挟む「ひなのっ」
ビクッ
誰かに呼ばれて顔を上げると、
ひな「え?……な、夏樹くん!?」
一瞬誰だかわからなかったけど、そこには以前病室で一緒になった夏樹くんがいた。
わたしが倒れたりなんだかんだあった間に退院しちゃってて、ちゃんとお別れできてなかった。
夏樹「ずーっと下向いて、大丈夫か?」
ひな「夏樹くん、なんでここに……?」
夏樹「なんでって、同じクラスだから。俺もこの学校に通ってる」
そうだったんだ。
でも、知ってる人がいてちょっと安心。
だけど、夏樹くんなんか様子が……
ひな「身長と声が、変わった?」
夏樹「あぁ。なんか、俺声変わり始まってさ。あと、4月の時から10センチ伸びた。そのおかげでなんか喘息も治ったんだ」
ひな「え?喘息って治るの?」
夏樹「俺は小児喘息だったから治ったぞ。ひなのは違うのか?」
ひな「わかんない……けど、五条先生に治らないって言われた」
夏樹「そっか……」
なんて話してると担任の先生が来て、
担任「これ、栗花落さんの教科書なんだけど、重くて持って帰れないわよね?」
机に置かれた全教科分の教科書。
たしかにこんなのとても全部持って帰れない。
夏樹「あ、先生、俺持ちますよ。今日部活ないしひなの送っていきます。入院中部屋同じでひなののこと知ってるんで」
担任「あら、そう!それは頼もしいわ。そしたら工藤くん、よろしくね」
ということで、
夏樹くんが教科書を全部持ってくれて、ついでにあまりわかってなかったバスの乗り方も教えてもらって、一緒に病院へ帰ってきた。
小児病棟につくと、ナースステーションのまこちゃんが帰りに気づいてくれて、
真菰「あ!ひなちゃんおかえりって、夏樹くん??」
夏樹「よっ!まこちゃん久しぶり!」
真菰「わぁ!夏樹くん背が伸びて声変わりして、なんかお兄さんになってきたね!ってなんで夏樹くんがいるの?」
夏樹「俺、ひなのと同じクラスになってさ。ひなのの教科書持ってやって」
真菰「そういうこと!とりあえず、お部屋行こうか!」
と、病室に戻ってきた。
真菰「あれ?そういえば、ひなちゃん学校終わったって五条先生に連絡入れた?」
……はっ!!
すっかり忘れてた。
学校に行くことになって、五条先生からはスマホも渡されてた。何かあったら連絡できるようにって。
今日は学校終わったら連絡するように言われてたのに、夏樹くんと会ってすっかり忘れてた。
ひな「忘れてた……」
真菰「じゃあ、わたしから言っといてあげるね!手洗いうがいしてお着替えしてね」
ひな「ごめんなさい……」
と、まこちゃんは病室を出て行った。
とりあえず鞄を置いて、ポケットからスマホを取り出す。
夏樹「ひなの、スマホ持ってたのか?」
ひな「うん。学校行くからって五条先生にもらったの」
夏樹「え!じゃあLIME友達なろうぜ!」
LIME(ライム)、五条先生にこれでメッセージ送ってって言われてたアプリだ。
ひな「うん、でも、どうやってやるのかわかんない」
夏樹「えっとな、まずこの緑のアプリ開くだろ~……」
と、夏樹くんに教えてもらってると……
コンコンコン——
五条先生がやってきた。
五条「……夏樹??お前ここで何してんだ……??」
夏樹「五条先生、久しぶり。って、変なことしてねーよ!!ひなのが教科書持てないから一緒に来たんだ」
と、夏樹くんが指さした教科書をチラッと見て、一瞬納得したような顔をしたと思ったら、
五条「で、それは今何してるんだ……?」
夏樹くんの手元を見る。
夏樹「え!あ、いや、その、ひなのがスマホ持ってたから、LIMEを……」
五条「教えていいのか?」
ひな「え?あ、ダメですか……?」
五条「お前はあんまり意味わかってないな……。おい、夏樹。ひなのスマホ貸せ!俺がやるからお前が触るな。あと、工藤先生に報告しとくからな」
夏樹「なっ!わざわざ言うなよ……。まぁ、ひなのと友達になれるなら兄ちゃんにバレたっていいけどな」
2人のやりとりがあんまりよくわからなくて、とりあえずぼーっと突っ立ってると、
五条「それはそうと、連絡してこいって言っただろ?」
ハッ……!
ひな「ごめんなさい。忘れてました……」
五条「忘れてましたじゃない!心配するだろ!ちゃんと連絡くらいしなさい!!」
あぁ……怒られた……
五条「それと、帰ってきてから手洗いうがいしたか……?」
ハッ……!
してない……
まこちゃんに言われたのにしてない……
こっちのほうがやばい。
五条先生の声もこっちの方が低くなった。
ひな「してません……」
五条「早くしなさい!!夏樹にLIME教えとる場合か!それが終わったらさっさと着替える!」
ひな「ごめんなさい……」
すぐに洗面所で手洗いとうがいを済ませ、カーテンを閉めて制服からパジャマに着替えた。
夏樹くんはLIMEの登録が終わったみたいで、じゃあなとその間に帰って行った。
着替え終わってカーテンを開けると、
五条「学校どうだった?疲れてないか?」
いつもの五条先生に戻ってた。
ひな「少し緊張しました。だけど、今日はまだ授業もなかったので。それに、夏樹くんが同じクラスにいて、少しだけ安心しました」
五条「そうか。聴診するから胸開けて」
と、五条先生の聴診を受ける。
五条「ん。いいぞ。明日から授業も始まるから、今日はゆっくりして明日に備えなさい」
ひな「はい」
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