ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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五条先生の提案

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わたしは毎晩必ず蕁麻疹が出るようになってしまった。

身体の調子は悪くないのに、夜になると蕁麻疹が出る。

治療でどうこうできるものではないらしく、薬や冷やしてかゆみを抑えることしかできない。

毎日出るのにかゆみに慣れることもなく地獄みたいだけど、蕁麻疹になるとわかってるだけで、気持ちに余裕が持てるようになった。

かゆくなり出すタイミングも決まってるので、蕁麻疹が出始めたらすぐに薬を塗ってもらって冷やしてもらってる。










***



あぁ、また蕁麻疹……。





今日も首がかゆくなってきた。

いつもなぜか首から出始める。



蕁麻疹には慣れたものですぐにナースコールをして、五条先生もすぐに来る。

五条先生とまこちゃんが来てくれることもあれば、五条先生がいなくて神崎先生が来ることもあるし、まこちゃんだけの時もある。

今日は五条先生だけ。





五条「痒くてなってきたか」


ひな「はい……」





お互いに"またか……"という感じでドライなやりとり。

わたしは慣れたようにかゆい場所を伝え、五条先生が膨疹箇所に薬をつけてくれる。

その間にわたしは氷のうをかゆいところに当てる。



薬を塗ってもらいながら、ふと、もう1ヶ月以上も毎日蕁麻疹が出てるなと思って、





ひな「いつまで続くのかな……」
五条「いつまで続くだろな……」





えっ?



口に出してみたら、五条先生とハモった。





五条「ん?同じこと考えてたか」


ひな「そ、そうみたいです」


五条「もう1ヶ月以上毎晩だからな。少しずつ出る範囲は小さくなってる感じだけど、辛いよな」





今日の五条先生すごく優しい。

まぁ、ここのところ怒られることもないんだけど。





ひな「慣れました。と言っても、かゆいのは慣れないですけど、またか……って諦めモードで」


五条「身体は今のところ特に問題ないんだ。体重も増えてきてるし、毎日学校も行って、体力はついてきてるはずだからそのうち治りはする」


ひな「そのうち治るって言われて、もう1ヶ月も続いてる。どうせ体力もそんなについてないんです。学校でも1番小さい。というか、1人だけ小学生みたいだから友達だってできないし。ごはんたくさん食べてるのに全然大きくならない。喘息も貧血も出てないのはきっとたまたまです。そのうちまた発作が出て倒れるのかも。はぁ……」





……あっ。

何も考えずにしゃべっちゃった。

五条先生いるのに、どうしよう。





五条「なぁ」


ひな「ごめんなさい……」





なんか怒られるかもと思って、とりあえずごめんなさいと口にした。





五条「顔上げて」





はぁ……と心の中でため息をついて、ベッドの横に立つ五条先生を見上げる。





五条「勝手にマイナス思考になるな。身体は元気なのに心が元気じゃないか?」





あれ?

全然怒ってない。

むしろ、優しい五条先生。





五条「ここに運ばれて来てからもう半年だ。来た頃と比べて元気になってると思わないか?身長も伸びて体重も増えて、1ヶ月以上発作を起こしてないし、熱だって出してない。ちゃんと成長してるだろ?人と比べてネガティブになるな。心が弱ると元気な身体まで弱ってくぞ」





たしかに、ネガティブに考えてると身体も元気がなくなっていく気がする。

でも、また身体が弱ったところで、いまさらって感じもする。

だって、





ひな「身体が元気だろうが弱ろうが、わたしってずっと病人だし。ずっと入院だし。このままずっと病院にいるんだし……」





どんなに元気で学校行っても、帰ってくるのは病院。

わたしは一生患者として生きていく。





五条「顔を上げる。そんなすぐうつむくな」





さっき上げた顔はまたうつむいてた。

でも、2回目はすんなり上げる気持ちにならない。

すると、隣に立ってた五条先生が椅子に座って、





五条「こっち向いて」





と、わたしの手を握った。

わたしは反射的に五条先生を見る。





五条「ネガティブ思考に入ると抜け出せないタイプか?そんな暗い顔するな」


ひな「そんなこと言われても……」


五条「退院はできるぞ。元気な人は入院なんてする必要ないだろ?」





……?

五条先生は、突然、一体、なにを言っているのか……





ひな「元気になってもわたしは退院できません。仮に退院したとして、住む家もなければお金もないから生きていけません……」


五条「退院はしたくないか?」


ひな「だから、できません」


五条「できるできないじゃなくて、したいかしたくないか聞いてるんだ。退院できるとしたら、したいか?したくないか?」


ひな「したいけどできません。わたしの答えはできないが正解なんです」


五条「じゃあ、もしも退院した後に住む家があって、お金もあったらどうする?」


ひな「……え?」





五条先生、なんでこんなこと聞くんだろう。

わたしが退院できないことわかってるよね?

だって、そもそもわたしに帰る場所がないってことは、五条先生が言ったことだし。





五条「どうする?」





どうするって……

答えないとこの質問終わらないのか……





ひな「もしも住む家とお金もあるなら、もちろん退院したいです」


五条「うん。それじゃあ、蕁麻疹が治って体調も良ければ退院しよう」





え?なんで?

五条先生、頭おかしくなったの?





五条「あの……住む家とお金がないので退院できないですけど……わたし、公園で飢え死ぬんですか……?」


五条「バカか。なんで医者が飢え死にさせるんだよ。住む家とお金はあるから。だから退院するぞ」





え?どういうこと……?

五条先生の話がわからなくなってきた……





五条「なぁ、ひな。俺と一緒に住まないか?」





え……?





ひな「五……条、先生……?今、な……ん……て……?」


五条「退院したら、俺と一緒に住もう」





頭が……真っ白……

五条先生と住むって……言ってるよ……ね?

どういうこと?なんで?え?





……え?





ここではわけがわからないことがたくさんある。

たくさんのわけがわからないを経験した。

それでも、五条先生と住むなんて話は、本当に今までで1番、わけがわからない。

今見開いてる目が、もう一生閉じない気がする。





ひな「五条先生と、一緒に、住む……って、わたしがですか?」


五条「あぁ。一緒に住もう」





本当にそう言ってる……



あぁ……もう本当に、



なにが



どうなって



いるの……


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