ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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退院①

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——1ヶ月半後





シュッ、シュッ、シュッ、シュッ……



いつもと変わらない朝、まこちゃんがわたしの血圧を測る。





真菰「ひなちゃん、ちょっと緊張してる?」


ひな「緊張なのかな?なんか、不思議な感じがするの」


真菰「まぁそうだよね。お昼になれば、五条先生とひとつ屋根の下なんだもんねっ」





いつもと変わらない朝だけど、いつもと違う1日の始まり。





わたしは今日退院する。





ひな「なんでまこちゃんそんなにうれしそうなの……?」


真菰「ん~?ふふっ。それはもちろんひなちゃんが退院できるからだよ~?」





蕁麻疹が落ち着いて退院が決まってから、まこちゃんも五条先生以外の4人の先生たちもみんなうれしそうにする。

うれしそうというか、みんなしてやたらとニコニコしてくる。

それに、退院したら五条先生と住むってことは結構前から決まってたみたいで、みんなはわたしが五条先生から聞くよりももっと前から知ってたらしい。

一緒に住むのはわたしなのに、なぜかわたしだけが知らなかった。










コンコンコン——


五条「おはよう」


ひな「おはようございます」


五条「聴診するぞ」


ひな「はい」





五条先生が首からステートを外して、チェストピースをわたしの胸に当てる。

そして、すごく真剣な顔で音を聞く。

こうして五条先生に聴診してもらうのもこれが最後。





五条「……ん?あれ、心臓の音が……」


ひな「……えっ?」





心臓の音が……なに……?





五条「ちょっといつもより騒がしいなぁ……」





と言いながら、ステートを耳から外し首にかける五条先生。





え?

わたし、今日これから退院するんだよ……ね?

もしかして……





ひな「五条先生?わたし、今日退院できな……」





ぽんっ……



わたしが言い切る前に、五条先生が頭にぽんっと手を乗せて見つめてくる。





五条「なにをそんなにドキドキしてんだ?心臓、やかましいぞ」


ひな「え?」





心臓がやかましい……って?

つまり、退院はできる、ん?いや、できない?どっち?





五条「はははっ。そんな顔しなくても大丈夫だ。こんなに元気な心臓、何の問題もない。肺の音も大丈夫だ。退院できるぞ」





はぁ……なんだよかった……





ひな「一瞬退院できないかと思いました……」


真菰「ふふっ。ひなちゃんよかったね。これで本当に退院決まりだね!」


五条「11時頃に出るから、着替えて準備しとくんだぞ」


ひな「はい!」





そして……










「「ひなちゃん、退院おめでとう!」」


ひな「ありがとうございます。お世話になりました」





いよいよ退院の時間。

まこちゃん、神崎先生、宇髄先生、工藤先生、藤堂先生、みんなが病室に来てくれた。





五条「忘れ物ないか?ちゃんと、荷物全部こん中入れたか?」


ひな「はい」





そして、もちろん五条先生もわたしの隣にいるけど白衣は着てない。

これから一緒に帰るから、ジーパンに薄手のニット姿。

スーツもよく似合ってたけど、このシンプルな装いも、五条先生の綺麗な体を引き立たせてる。

それに、荷物を持ってくれてる腕は少しまくってあって、血管がほどよく浮き出てる。





藤堂「ふふっ。もうすっかりお似合いだね。ひなちゃんと五条先生」


宇髄「だな。よかったな、ひなちゃん。退院できて、五条先生と暮らせることになって」


ひな「はい。少し緊張しますけど、ずっと病院で生きていくんだと思ってたので、本当にありがたいです。少しだけ、お父さんができたみたいでうれしいです」


五条「……お父さん」


工藤「ははっ!五条先生お父さんだって」


宇髄「おい、工藤……」





あれ?なんか先生たちみんなめっちゃ笑ってるし、五条先生はなんか、あれ?傷つけちゃった?





ひな「え、あ、いや、もちろん先生と思ってますよ!主治医だって。決して五条先生が老けてるからお父さんってわけではないです!!」


真菰「ひなちゃん、そ、そういうことじゃないの……(笑)」


神崎「あははっ。ひなちゃんは本当に純粋でおもしろいな~」





ん?なんか違った?変なこと言ったかな?

先生たちの会話がよくわからない。





ひな「あの、五条先生……?」


五条「気にするな、俺も気にしてない」





いや、めっちゃ気にしてる感じがするけど……





五条「ほら、そろそろ行くぞ。先生方、ありがとうございました。まこちゃんも、ありがとう。今日はお先に失礼します」


「「じゃあね、ひなちゃん!」」


ひな「ありがとうございました!」





こうして、先生たちに見送られながら、わたしは五条先生と病室をあとにした。










***



ひな「あの、五条先生のお家ってここからどのくらいですか?」


五条「ん?すぐだ」





地下の駐車場で五条先生の車に乗り込んで、そういえばと思って聞いてみた。



すぐか。

朝も夜も早かったり遅かったりするから近くに住んでるんだな。





五条「シートベルトしたか?出発するぞ」


ひな「はい」





と言って、病院の駐車場を出てからほんの3分ほど。





五条「着いたぞ」





……えっ?近っ!!





五条先生が車を止めたのは、屋上からも見えていた病院の斜め向かいの方にあるマンションの駐車場。

車で3分とはいえ、信号に引っかからなければ1、2分でも着きそうな距離。

学校よりも近くて、たぶんわたしの足で歩いても7、8分あれば着きそうなくらいすぐそこだった。



ポカーンとしながら車を降りて、綺麗なエントランスを抜けてエレベーターに乗る。

そして、五条先生が鍵をかざすと勝手に行き先階のボタンが光って、わたしはまたポカーンとなる。

そうこうしてると、いつの間にか玄関の前に来ていて、五条先生がドアを開けていた。





五条「どうぞ」





言われて中に入った瞬間、一気に緊張が押し寄せて来た。



玄関、広い……

ここだけでも、あの人の家で過ごしてた部屋くらいありそう。





五条「ほら、ぼーっとしてないで早く靴脱げ」


ひな「す、すみません」





靴を脱いで、スタスタ家の中に入っていく五条先生のあとをついて行く。



……うわぁ、すごい。



廊下を真っ直ぐ進んだ先のドアを開けると、広いリビングがあった。

L字の大きなソファーに大きなテレビ。

アイランドキッチンと大きなダイニングテーブルも。

そして、大きな窓からは街が一望できる。 

思わず窓の方に駆け寄ると、





五条「こら!走るな!」





ピタッ……





ひな「ごめんなさい……」





五条先生に叱られた……





五条「家の中で走ったら危ないだろうが。転けてその辺に頭でもぶつけたらどうする。そもそも、いつも走るなって言ってるだろ。病院連れ戻されたいのか?」





うっ……

退院したのにさっそくお説教されてる。



そうか、五条先生と暮らすってことはいつもそばにお医者さんがいるってことだもんね。

油断も隙もないな。

気をつけないと、これじゃあ毎日怒られる……。





五条「ほら、こっち来い」





と言われ、廊下に行く五条先生についていくと、今度はバスルームに案内された。





五条「ここは風呂と洗面所な。とりあえず手洗いうがいして。いいか?帰ってきたら毎回ちゃんとするんだぞ」


ひな「は、はい」





そんな洗面所はとても綺麗で、洗面台は広々。



なんだこのお家は……



と思いつつ、手洗いうがいをして、次に案内されたのは……





ひな「ここ、わたしの部屋……?」





勉強机にソファーにドレッサー。

床には薄いピンクのラグも敷いてあって、女の子らしいお部屋になってる。

さっき見たリビングやバスルームのスタイリッシュな感じとはここだけ違う。





五条「あぁ。とりあえず必要そうなものは揃えといたけど、足りないものや欲しいものがあったら遠慮なく言えばいい」





そんな……

自分の部屋があるだけで十分すぎるくらいなのに……

わたしのために、こんな素敵なお部屋用意してくれて……





ひな「五条先生、本当にありがとうございます。わたし、自分のお部屋なんて初めて……」





うれしくてうれしくて目から溢れた涙を、五条先生は指でそっと拭いてくれた。





五条「おい、泣くな。せっかく退院したんだから……」


ひな「グスン……すごくうれしくて……」





五条先生が微笑んでくれる。





五条「クローゼットに服入れてあるからとりあえず着替えろ。俺はリビングで待ってるから」


ひな「はい」





これまで普段着なんて持ってなくて、病院からここまでは制服を着てきた。

さっそく、ウォークインクローゼット見てみると、





ひな「わぁ……」





クローゼットにはかわいいお洋服がいくつか掛かっていて、引き出しにもズボンやパジャマや部屋着などが入ってた。

わたしにとってはもう服屋さんにいるような気分。

とりあえず、引き出しに入ってたかわいい部屋着に着替えてリビングに行った。


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