ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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人海戦術①

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——翌日





五条「……夜中発作起きた?」





朝、ひなの喘鳴が酷いので聴診しながら聞いてみる。

が、ひなは不貞腐れて黙ったまま。



今朝の熱は37度5分。

昨夜の感覚が正しければ、朝なのに熱が下がってない。

朝ごはんもヨーグルトしか食べなかったらしい。





五条「今しんどくないか?」





って聞いても、返事はなし。





五条「ひな、喘息の調子があまり良くないから、今日から昼にも吸入するからな。寝る前と合わせて1日2回。いいね?」





何も言わないけどひなの瞳が揺れた。

きっと、『なんで?嫌だ!』と思ってるんだろう。





五条「吸入の時は呼びに来るから。それ以外は大人しくしときなさい。それと貧血も出てるから、トイレも不安ならまこちゃんと行きなさい。わかったか?」


ひな「……」





うんともすんとも言わん……





結局、ひなの声は聞くことなく回診を終えた。










***



*ひなのside





お昼ごはんはまたゼリーしか食べなかった。

薬を飲んでぼーっとしてたら、





神崎「ひ~なちゃんっ!吸入行こっか!」





って、底抜けの明るさで神崎先生がやってきた。



五条先生は忙しくて来れなかったのかな。



と思いながら、渋々神崎先生と処置室に向かう。



そして……





ブーン……ゴォー……サァー……——





ひな「ッ……ゲホゲホッ……コホッ……ゴホゴホッ……」





こんな拷問みたいなことを1日に2回もしないといけないなんて……。

毎日寝る前に頑張ってたのに、修学旅行には行けなくなったし、どうせ2回にしたところでこんなの意味ないでしょ。





ひな「ハァハァ……ゴホゴホゴホッ、ッハァ……ケホッ……」


神崎「ひなちゃん、あとちょっとだよ~。頑張れ頑張れ」





先生たちのあとちょっとは全然ちょっとじゃないんだから。

もうわかってるんだから。

はぁ、苦しい。

ちょっとマスク浮かそう……





神崎「あぁ~!ひなちゃんダメ。ちゃんと終わるまでつけないと!」





と、神崎先生に口のマスクを押さえられる。

五条先生だけかと思ってたら、神崎先生も抜け目ないんだね。





はぁ……





やっと吸入が終わるといつものようにヘトヘト。

部屋に戻って神崎先生が出ていくと、秒で寝てしまった。










そして、夜——





工藤「ひなちゃん!久しぶり!」





吸入へわたしを連行しにやってきたのは、工藤先生。

去年、退院してすぐに夏樹くんにチクられた以来だから、10ヶ月ぶりくらいに会った。





ひな「どうして、工藤先生が……?」


工藤「五条先生と神崎先生、少し忙しくて。ごめんな、俺じゃ嫌だった?」





いや、そんなことないしそんな言い方されたら吸入が嫌ですとも言いにくい……





ひな「嫌じゃないです」


工藤「うん!そしたら行こう!」





と、それはそれは元気に白い歯を見せられて渋々ついて行き……





工藤「ひなちゃん、マスク押さえといてあげるから手離してもいいよ。しっかり吸ってな!」





と、これまた元気いっぱいに余計な……

いや、ご丁寧にマスクまで押さえてもらって吸入を終えた。










***



——次の日





ひな「ケホケホッ……ッハァ……ゴホッ、ハァハァ……」





夜中に発作が起きてからずっと苦しい。

横になってられなくて身体を起こしてみるけど、疲れてまた横になってを繰り返してる。





コンコンコン——


真菰「ひなちゃん、大丈夫!?」





回診前になってまこちゃんが来た。

もうすぐ五条先生も来ちゃう。





ひな「ハァハァ……大丈夫です。ッハァ…………ゲホゲホッ」


真菰「五条先生すぐ来てもらうね」





あー、やめてー……。



って思うのに、すぐに電話をかけちゃうまこちゃん。

もちろん、五条先生はすぐに来る……





五条「大きい発作起きただろ?いつあった?」





まこちゃんがサッとパジャマをめくって、すぐに五条先生が聴診を始めた。





ひな「ハァハァ……発作なんてありません……ケホッ……」


五条「隠してもわかるから嘘つくな。夜中の間にあっただろ?なんですぐ呼ばないんだ」


ひな「わかるなら聞かないで。ケホッ……」


五条「あのなぁ、大体わかるってだけで正確に把握したいから聞いてるんだ!まこちゃん、点滴用意してきてくれる?」


真菰「わかりました」





は?点滴って言った?

ありえない。





ひな「大丈夫です、しなくていいですから……ゴホゴホゴホッ!」


五条「どこをどう見たら大丈夫なんだ。ごはんも食べてないし、胸の音も酷いし、発作は起きてるし、熱も38度出てるんだ」


ひな「そんなことないです!! しんどくないし!! ゲホゲホッ、ハァハァ」





五条先生と言い合いをしてる間に、まこちゃんが点滴を持ってきた。

わたしは五条先生に腕をガシッと押さえられて、すぐに針を刺された。



はぁ……もう最悪……










12時になって、ごはんの時間になった。

看護助手さんがお粥を運んできてくれたけど、まったく食べる気にならない。





ひな「コホコホッ……」





時折咳込みながら、ベッドの上でじっと窓の外を見つめる。



コンコンコン——



あぁ、五条先生が来たんだな……



と思ったら、





宇髄「ひなちゃーん、ごはん食べてるかなー?」





ん?

宇髄先生が、どうして……





ひな「どうして宇髄先生が来たんですか?」


宇髄「今、五条先生も神崎先生も手が離せなくてね」





昨日の工藤先生と同じ……

これは、なんかおかしい。

神崎先生が来るのはわかるけど、工藤先生も宇髄先生もなんで突然わたしのところに来るの?

次は藤堂先生が来るってこと……?





ひな「お腹空いてないのでごはんはいらないです」


宇髄「じゃあ、後でお腹空いてから食べてみるか?」


ひな「……点滴してるのでもう食べなくていいです」


宇髄「うーん、ひなちゃん……」





宇髄先生が唸ってる。

宇髄先生って、ガタイめっちゃ良くて怖い系な感じと思いきや、結構優しくて穏やかでみんなのお兄さんって感じなんだけどな。

怒ってないけど、完全に参った困ったって声してる。





宇髄「そしたら、吸入しに行こうか」





やだ。もう行きたくない。





ひな「やめときます」


宇髄「ひなちゃん、吸入はしておかないと喘息が良くならないから行こう。すぐ終わるから」


ひな「行きたくありません!」





言って、布団をすっぽりかぶった。





ひな「ゴホゴホゴホッ……」


宇髄「ひなちゃん、お布団からは出よう。身体しんどいだろう?ちょっと聴診だけしていいかな?」


ひな「しんどくありません。しないでください。ゴホゴホッ」





布団に潜り込んだまま答える。





宇髄「……うん、わかった。無理にはしない。その代わり、先生が部屋出たら布団からは出てな。約束な?」





と言って、宇髄先生は出て行った。










***



~小児科医局~





工藤「宇髄先生!先生はどうでした!?」


宇髄「撃沈だ。ごはんも嫌、吸入も嫌、聴診も嫌って布団に潜られた」


神崎「宇髄先生もダメか~。ひなちゃんも頑固だな。一度拗ねると長いタイプか」


五条「申し訳ありません……。恐らく、反抗期も始まったんです。だから優しくしてるし、先生たちにも行ってもらってるってのに……。ちょっと、そろそろ俺行きます」


宇髄「五条待て。まだ藤堂がいるから。反抗期ならなおさら人変えよう」


藤堂「そんな話聞いた後で、俺自信ないですよ……(笑)」


神崎「いや!藤堂先生はひなちゃんの王子様だから、ワンチャンいけるかと!」


藤堂「ひなちゃんはバカじゃないからなー」


神崎「まぁたしかに、ひなちゃんって賢いですよね。宿題教えてた時から思ってたけど、何かと物事を理解したり本質を見抜く力があって、それをちゃんと他のことに繋げて応用もできる。夏樹ならいけたかもしれないけど、ひなちゃんはそうはいかないか」


工藤「あいつはまこちゃんで一発だからな(笑)」


藤堂「悠仁、ごはんは仕方ないとして吸入はどうする?させるなら今から俺行ってくるけど」


五条「いえ。宇髄先生のすぐ後はどうせ聞かないと思うので、夜にまたお願いします」


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