ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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人海戦術②

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そして、夜。





コンコンコン——





きっと、藤堂先生だ。





ガラガラ——


藤堂「ひーなちゃん。こんばんは」





ほら、やっぱり……



わざと五条先生が来ないようにしてるんだ。

そんなことしたって無駄だから。





藤堂「ひなちゃん、一緒に吸入行こうか」


ひな「行きたくないです」


藤堂「どうして行きたくないの?先生に教えて?」





うぅ……



藤堂先生のその優しい声は調子が狂いそうになる。





ひな「今さら吸入したって修学旅行には行けないので」


藤堂「だけど、今のままじゃお家にすら帰れないよ?早く退院したいでしょ?」





うぅ……



家には帰りたい。

退院したい。

でも、ここで素直になったら負けた感じがする。





ひな「……帰れなくていいです。というか、なんで五条先生は来ないんですか?わざとですよね。みんなわたしの機嫌を戻そうとして順番に来てる」


藤堂「ふふっ。ひなちゃんはやっぱり賢いね。じゃあ、五条先生呼んでくるね」





と、藤堂先生が行ってしまった。



まずい、そうなってしまったか。

やられた……










コンコンコン——





五条「ひ~なぁ~?」





あ、来た……

相変わらず早い、すぐ来るんだから。

でもまだ本気で怒ってなさそう?



って、足音の数多いな……

まさかみんな来たのかな?

とりあえず、布団に隠れよ。





五条「そうやってまた隠れて、俺に会いたかったのか会いたくなかったのかどっちなんだ?自分から出てきたら怒らないから。早く出ておいで」





出るもんか……





五条「はぁ……出ないつもりなのか?そろそろ身体限界だろ。早く出てきなさい」





五条先生の声が変わり始めた。

鬼レベル2だな。(全5段階)





五条「なぁ?聞いてるか?いつまで待たせる。これが最後だぞ、出てこい」





1レベルアップ……





五条「……はぁ」





あ、やばっ……





と思ったら、





バサッ!!!





布団を引き剥がされた。

そして、腕を掴まれて身体を無理やり起こされた。





五条「ひなっ!!」





ビクッ!





五条「お前は何がしたいんだ!!先生たちが来てくれてるのに、今日はごはんも食べない、吸入にも行かない、布団からは出てこない。どういうつもりだ!!治す気あるのか!?」





もう完全に怒ってる。

だけど、もとはと言えば修学旅行に行かせてくれないのが悪いんじゃん!





ひな「どういうつもりもなにもないです!!治そうとしてたのに、頑張ってたのに修学旅行行かせてくれないのだってどういうつもりなんですか!?」


五条「ひなの身体が大事だからだろ!!頑張ったのはわかるけどまだ良くなってないんだ。調子悪いのに無理して行って取り返しのつかないことになったらどうするんだ!!」


ひな「取り返しのつかないようなことになる身体ならなおさら治療なんてしなくていいです!!どうせ治ってもまた悪くなるんだから!!先生たちの言いなりは嫌!身体なんてどうでもいいから好きにさせてよ!!」





言い返すと、





五条「ひなのっ!!いい加減にしなさい!!!」





…………ハッ!!





五条先生は左手でわたしの腕を掴みながら、右手を思いっきり振り上げた。

そしてその瞬間、止まっていた身体の全制御機能が動き出すようだった。





ひな「いやぁぁぁっ!!!」





五条先生の腕を思いっきり振り払ってベッドを飛び降りた。

そして、床の上で頭を抱えて座り込んだ。

身体の震えが止まらない。





五条「わ、悪いっ……!ひなごめんっ……」





って声は、耳から耳を通り過ぎていくだけ。





ひな「ハァハァッ……ごめんなさいっ……ゲホゲホッ、ごめんなさっ……ハァハァ、ごめんなさぃ……ごめんなさぃ……ゲホゲホゲホゲホ、ッハァ……ハァハァ、ハァハァ」


五条「ひな、もう大丈夫だから落ち着いて。怒ってないから」





優しい五条先生の声がする。

優しい五条先生の手が肩に触れる。

だけど、怯えきった身体は元に戻らない。





ひな「嫌ぁっ!ゲホゲホッ……ッハァ、ッハァ……やだ……ハァハァ、ゲホゲホッ……ッハァ、ッハァ……ハァハァ……ッハァ…………ッハァ」


五条「ひな、ちゃんと息して!意識保て!」





と言われたけど、もちろんそんなことはできず。

わたしは意識を手放した。










***



*五条side





藤堂「……うん、落ち着いたね。ひとまず大丈夫だよ」





病室のベッドで眠るひなを、藤堂先生が聴診してくれた。





五条「申し訳ありませんでした……」


宇髄「五条の気持ちもわからんではない。気にするな」





手を振り上げた時にぶつかったひなの瞳が頭から離れない。

工藤先生が夏樹に手を上げた時もひなは相当な怯えようだった。

それを俺にされたら……





藤堂「悠仁、ひなちゃんなら大丈夫。悠仁がどうしてああなったのかわからない子じゃないから。少しすれば、必ず悠仁のところに戻ってくるよ」


五条「だといいですが……」


工藤「にしても、五条先生もひなちゃんのことになるとな……」


神崎「全くですよ。ひなちゃんも危なかっしい子なのに五条先生も危なっかしいんだから~」


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