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天然な小悪魔ちゃん
しおりを挟む*五条side
~小児科医局~
五条「宇髄先生、藤堂先生、お疲れ様でした。ひなは?」
ひなが治療に行ってから2時間。
宇髄先生と藤堂先生が帰ってきた。
宇髄「治療は終わったぞ。もうひなちゃんのお腹に悪さするやつは残ってない。今日も時間かかったが、中でちゃんとイった。今はまたぐっすりだ。よく頑張った」
五条「よかったです。ありがとうございました」
藤堂「ただ、ちょっとまた喘息が悪化してそうなんだ。せっかく治療終わったのにひなちゃん嫌がるかもしれないけど、しばらくは引き続き入院させて様子見ね」
五条「そうですか。わかりました」
宇髄「一昨日も今日も、イクのに極限まで自分の体力を使ったからな。しばらく起きないと思うが、時間見つけてひなちゃんとこ行ってやってくれ」
五条「はい。わかりました」
***
~ひなのの病室~
ひな「スー……スー……」
夜になって、ひなの様子を見に病室へ来た。
治療が終わってから3、4時間経つが、まだ1回も目は覚ましてなさそう。
前回の治療の後と同じ。
寝顔を見ただけで、ひながどれだけのエネルギーを使い、どれだけ辛かったのかがわかる。
五条「よく頑張ったな……ひな……」
思わずそう呟きながら、ひなの頬をにそっと手を添えると、
ひな「ん……」
ひながゆっくりと目を開けた。
五条「ごめんな。起こしちゃったか?」
ひな「……五条、先生」
俺の顔を見るなり、ひなは目に涙を浮かべて、まばたきと同時にスーッと涙をこぼした。
***
*ひなのside
ひな「……五条、先生」
起きたら五条先生がいて、優しい顔の五条先生がいて……
顔を見ただけなのに、安心感やうれしさが入り混じって涙が込み上げてきた。
五条「ん?どうした?」
ひな「グスン……五条せんっ……ケホケホッ……ケホケホケホッ……」
五条「ひなちょっと身体起こすぞ。ゆっくり呼吸してな」
と言って、五条先生が身体を起こして背中をさすってくれる。
喘息ひどくなったのかな……?
久しぶりにちょっと苦しい。
発作にならないといいけど……
ひな「ケホケホッ……ハァハァ、グスン……ケホケホッ……」
五条「焦らないよ。大丈夫大丈夫。治療頑張ったから少し身体が疲れちゃったんだ」
そっか。治療頑張ったからか。
頑張ったって言ってくれてうれしい。
頑張ったのわかってくれてるんだ。
そういえば、今度こそお腹治ったのかな?
ひな「五条先生……ケホッ、治った……?治療、終わり……?グスン……」
五条「治ったぞ。もうお腹に溜まってたのなくなったからな。今お腹張ってないだろ?」
そういえば張ってない。
座って少し前屈みになってても苦しくない。
ひな「グスン、グスン……怖かった……治療……ヒック、痛くて、怖かったの……。五条先生、うぅっ……グスン、ケホッ、ケホケホケホッ!!」
五条「よしよし、怖かったな。よく頑張ってえらかった。もう大丈夫だから落ち着こう。泣いたら発作起きちゃうからな。大丈夫大丈夫」
ひな「ケホケホッ……うぅっ、ヒック……ケホケホッ……グスン……グスン……」
やっぱり、五条先生とこうしているとなんだか安心できる。
五条先生が包み込んでくれる手も声も匂いも、全部優しくて落ち着く。
ひな「ケホケホッ……グスン……ケホケホッ……ヒック、ヒック……ケホッ……ケホケホケホッ!」
五条「ひなちょっとしんどいな。苦しいだろ?1回吸入しとこう」
と、五条先生は棚に手を伸ばして吸入器を取り、わたしの口に当ててプシュッと。
どんなに呼吸が乱れてても、五条先生はタイミングをきっちり合わせてくるからしっかり薬も入ってきて、あっという間に楽になった。
ひな「ハァハァ……グスン……ハァハァ…………」
五条「だいぶ落ち着いたか?ちょっと聴診しとこうな」
と、五条先生がわたしの身体をベッドに寝かせようとするから……
ギュッ……
五条先生の白衣をギュッとして胸に顔を埋めた。
五条「……っ。ひな……?」
ひな「ヤダ……」
五条「やだって、胸の音聴いとかないと。俺が嫌なら藤堂先生に来てもらうか?」
ひな「フリフリフリ……違う……離れたくないの。五条先生一緒にいて……」
***
*五条side
ひな……
いつからこんな素直に甘えるようになったんだ?
それほど、ひなにとってあの治療は辛かったのか……。
元気になったら、さすがにご褒美でもあげないとな。
小さい身体で何も知らない純粋な心で、あんな治療受けたらひなはすぐ壊れてしまいそうなのにな。
五条「今、俺と離れたら心細いか?」
ひな「コクッ……」
五条「じゃあ、座ったままでいいから聴診だけさせて。な?俺にもたれかかってたらいいから」
ひな「はぃ……」
って、ひな……。
俺の胸から顔を離して、そんな上目遣いで潤んだ瞳で見つめるな……
さすがに理性ぶっ飛びそうだぞ…………
って、まぁ俺も医者なんで、もちろんこういう時に理性がぶっ飛ぶことは実際ないが。
五条「ん。そしたら深呼吸して」
と、ひなのパジャマのボタンを2つだけ開けて手を滑り込ませると、激しくドキドキする心音が聴こえてくる。
本当にこのわかりやすい天然小悪魔ちゃんは……
五条「ひな、やっぱり少しゼーゼーしてるから横になってゆっくり休もう」
ひな「フリフリフリ……」
ギュッ……
ひな「思春期だから、寂しい……このままがいい……五条先生、ぎゅぅして……」
……っ!!ひ、ひな……っ//
こいつ、相変わらず適当に思春期って使ってるが……
そのおねだりの仕方といい、遠慮気味に抱きついてくるのはどこで覚えたんだ……?
五条「……ん。じゃあ、もう少しこのままな」
って、頭を撫でてやってたら、
ひな「スー……スー……」
3分もしないうちに、ひなの身体がどんどん俺に寄りかかってきて、あっという間に寝息が。
五条「ひな?」
ひな「スー……スー……」
さっきまでのはきっと無意識だな。
起きたらどうせ忘れてるんだろう。
ったく、お前は……
ひなが完全に寝落ちしたので、起きないようにベッドに寝かせ、そっと病室を後にした。
***
*ひなのside
——翌朝
コンコンコン——
藤堂「ひなちゃん、おはよう」
ひな「おはようございます」
朝の回診の時間、キラキラ王子様の登場。
昨日は五条先生の顔を見たのが最後で、いつの間に寝たのか記憶がなくて、なんなら五条先生と何話したかもあんまり記憶になくて、気づいたら朝になってた。
ま、気づいたら朝なんてことはしょっちゅうだから、もう慣れたんだけどね。
藤堂「ひなちゃん、今朝は身体怠くないかな?しんどくない?」
ひな「大丈夫です」
藤堂「うん、よかった。そしたら聴診しようか」
と言われ、パジャマのボタンを外して前を開ける。
藤堂「深呼吸してね」
ひな「スー……ハー……スー……ハー……ケホッ」
あ、咳出ちゃった……
藤堂「うん、いいよ。ちょっと喘息は心配かな。目もごめんね」
と言って、いつもみたいに目の下もめくられる。
ひな「藤堂先生、お腹の治療はもう終わりですか?」
藤堂「うん。昨日ちゃんと全部出せたから終わったよ。って、あれ?昨日、五条先生から聞かなかった?」
ん?やっぱり、五条先生と何話したか記憶にないね、これは。
ひな「すみません。五条先生と何話したかあんまり覚えてなくて……」
藤堂「ははっ。治療で疲れちゃってたかな?でも、それ五条先生には黙っといてあげよう。絶対ショック受けるから(笑)」
ひな「ご、ごめんなさい。お願いします」
藤堂「でもね、ひなちゃん。お腹の治療は終わったんだけどね、喘息があまり良くないからもう少しこのまま入院して様子見させてくれる?貧血もまだ心配だし、それに、お腹の方もまた分泌液溜まっちゃうかもしれないから、しばらく観察させて欲しいんだ」
もうすぐには帰れない気は薄々してたけど、せっかく治療頑張ったのに入院延長か……。
ひな「わかりました……。でも、期末テストどうしよう。来週からだったんですけど……」
藤堂「うーん。それまでに退院はちょっと厳しいかなぁ。成績が心配?」
ひな「はい。医大の推薦、上位5人に入らないともらえないし、わたし自力で受験するのは不安で。でも今Bクラスだし、せめて来年Aクラスに上がれるくらいは頑張ろうと思ってたんですけど……」
藤堂「そうだね。ひなちゃんの今までの成績でカバーできるかもしれないけど、さすがに定期試験ひとつ飛ぶと響くかもしれないしな……。ちょっと、僕から学校側に期末試験を穴埋めする方法がないか聞いてみるね」
ひな「いいんですか?ありがとうございます」
藤堂「うん。でもそのかわり、ひなちゃんは早く元気になるように、今日からまた昼と夜ネブライザー頑張ろうね」
げっ……
交換条件が鬼なんですけど?
吸入嫌いなのに、1日2回も……
しかも久しぶりだな。
あーやりたくない……
藤堂「ひなちゃん、吸入の時は呼びに来るけどまた逃げちゃダメだからね」
うっ……
藤堂先生のキラキラスマイルが、こ、怖い……。
だって、笑ってるけど目が本気なんだもん。
これは本当に逃げたら怒られそう。
藤堂先生を本気で怒らせたら絶対やばい。
ひな「はい。頑張ります……」
藤堂「うん!ひなちゃんえらい!そしたら、呼びに来るまでは今日はゆっくりしててね。何かあったらすぐナースコールするように」
と、藤堂先生は白衣をなびかせて爽やかに病室を去って行った。
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