ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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モクモクタイム

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神崎「ひなちゃ~ん!モクモクタイムだよ~!」





お腹の治療が終わってから1週間。

喘息が良くならなくて、相変わらず毎日2回吸入してる。



期末テストもやっぱり受けられなかったけど、藤堂先生が学校に状況を説明してくれて、特別にもらった課題を提出すれば成績をつけてくれることになった。

量が多い割に期末テストほどの成績にはならないけど、何もないよりありがたい。



で、そんな課題をせっせとこなしてる最中、元気よく病室にやって来たのは神崎先生。

藤堂先生が忙しくて来れない時に来たりするんだけど、神崎先生はわたしのテンションを上げるためなのか、それともわたしが高校生なのを忘れてるのか、最近ずっとモクモクタイムって言ってくる。





ひな「は、はい……。モクモクタイムですね……」


神崎「お勉強頑張ってるのにごめんね。キリのいいとこまでやっていいよ!」


ひな「いえ、大丈夫です。行きます……」





と、神崎先生との温度差を感じながら処置室へ。

そして……





ブーン……ゴォー……サァー……





ひな「スー……ハァハァ……ゲホッ……ゲホゲホッ……ゴホゴホゴホッ…………!!」





今日もダメだ。

もう何回やってもこれだけは上手くならない。

ネブライザーをぶっ壊したくなるくらい大っ嫌い。





神崎「ひなちゃ~ん、楽に呼吸してたらいいよ」





その楽に呼吸するのを不可能にしてるのがこの機械なんですってば……。

もうほんとやだ……





ひな「ゲホゲホッ……ハァハァ……ゲホッ、ハァハァ……ハァハァ……」


神崎「あっ。こら~、ひなちゃん!マスクは外さないよ!」





うぅ、バレた……

神崎先生、今見てないと思ったのに……





男児「おねぇちゃん、がんばれー!!」


ひな「っ……!?」





突然後ろからそんな声が聞こえて振り返ってみると、年長さんくらいの男の子が。

そして、その子の手を繋ぐのは、五条先生。





男児「おねぇちゃん、モクモクきらい?ぼくじょうずだよ!」


五条「お姉ちゃんモクモク下手だな。よし、じゃあ智樹くんはお姉ちゃんの隣に座って……はい、今日も上手にやってみようっ!」





と、五条先生は智樹くんっていう男の子をひょいっと持ち上げて、わたしの隣の機械の前に座らせる。

すると、智樹くんは五条先生に渡されたマウスピースを自ら口に咥えて、涼しい顔して吸入し始めた。





な、なんだこの子は……。

しかも、まだ小さいのにマウスピースで出来るんだ。



五条先生も小さい子だからか、見たことないくらい笑顔で小児科医らしい話し方を。

こんな風に子ども相手できるんだ。

わたしには厳しかったのに、知らなかった……





ひな「ッ……ゲホゲホッ! ……ゴホッ……ハァハァ……ゴホゴホッ……」





あぁ、やっぱり無理だ。

こんな小さい子ができることをできないなんて。

もう疲れた……





五条「ひな~?お前バレてないと思ってんのか?次マスク浮かせたらもっかいやり直しだぞ」


神崎「ひなちゃん、隣で小さい子が頑張ってるんだからズルはダメ!お手本にならなきゃ。はい!頑張るよ~!」


ひな「んん……っ!!」





って、神崎先生にマスクを押さえられてしまって……





ひな「ゲホゲホッ……ハァハァ、ゲホゲホゲホッ!!……ゴホッ……」





しんどい……

発作よりしんどいかもしれない……

もうやだ、早く終わって。

いつもこのランプ消えるの遅すぎる。





ひな「……ッハァハァ……ゴホゴホッ……ハァハァ……ゴホゴホッ!!……ッハァハァ……ハァハァ…………ハァハァ……」





今日も格闘すること7分くらい。

やっとランプが消えてくれた。





神崎「はい、ひなちゃんお疲れさま~!うがいしよっか」





もう本当に疲れた。

課題しなきゃいけないのに、病室戻ってもこれじゃあすぐできない。

うがいして、ハァハァ言ってる間に隣の智樹くんも終わったみたい。

え?なんかわたしより早くない?





五条「ん。智樹くんおつかれさま。今日も上手だったな。えらいぞ~!」





と、五条先生が智樹くんの頭をわしゃわしゃ。





智樹「モクモクのこきゅうしてるから!あ、おねぇちゃんもモクモクのこきゅうをしたらいいんだよ!」





モ、モクモクの呼吸……

この子もきっとあのアニメ好きなんだろうな。





ひな「そ、そっか。教えてくれてありがとう」


五条「お、智樹くんはモクモク柱か~!今度お姉ちゃんに呼吸の仕方教えてあげような。さぁ、智樹くんお部屋帰ろうか!」


智樹「うん!ごじょーせんせっ、きょうのばんごはんなぁにー?」


五条「んー?今日はな~……」





と帰っていく五条先生と智樹くんをポカーンと見つめる。

そんなわたしの顔の前で、神崎先生は手のひらをヒラヒラ。





神崎「おーい!ひなちゃん大丈夫?ひなちゃんも病室戻るよー」


ひな「す、すみません。大丈夫です。五条先生って、あんな小さい子に好かれる感じだったんですね。初めて見ました、あんな五条先生……」


神崎「ははっ。五条先生、普段わりとあんな感じだよ?結構笑うし、子どもの目線に合わせて話すし、言葉遣いも変えるしね。まぁ、小さい子にも容赦なく叱る時は叱るけど」


ひな「わたし叱られてばっかりだった……今もですけど……」


神崎「それは~、五条先生ってツンデレだからさ。ひなちゃんにはなんかツンツンしちゃうんだろうね。まぁ、半分ひなちゃんが悪いこともあるけどね(笑)」


ひな「なっ……そ、そうですよね。自覚してます」


神崎「まぁ、五条先生はひなちゃんが嫌いでツンツンするわけでも無愛想になるわけでもないし。むしろその逆って感じ?んまっ、とりあえず病室戻ろう!」


ひな「は、はい……」





と、病室に戻ってきて、少し休憩してから課題に取り掛かった。


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