ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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苦い思い出②

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ひな「後で飯食いながらってこういうことだったんですね。五条先生がお昼食べながら電話してくれるってことかと」


五条「今気づいたのかよ。健診終わったら一緒に食べようって朝話しただろ。本当にお前は……」


ひな「ごめんなさい。それにしても、突然の電話は心臓に悪いです。あの着信音を聞いてると心臓がヒュンって、縮むかと思いました」


五条「えっ?発作起きたのか……?」


ひな「え?発作?」


五条「心臓。ヒュンと縮むって、痛くなったのか?」


ひな「え?あ、違いますよ。驚いただけです。電話の着信音聞くと、なんかどうしようってなっちゃって苦手だなと思って」


五条「あぁ、そういうことか。それで出るの遅かったのな。今の子は電話苦手ってよく聞くけど、ひなも現代っ子か。で、ひな何食べる?」





と話してると、藤堂先生が来た。





「「いただきます」」





相変わらずの量を食べる先生方2人を前に、わたしはハンバーグ定食のご飯少なめ。





藤堂「ひなちゃんもだいぶしっかり食べるようになったね」


ひな「ハンバーグ大好きです」


五条「ひなおかずばっかり食べるんですよ。ご飯はあまり食べませんよ」


藤堂「そうなの?ご飯もしっかり食べないと」


ひな「その、白いご飯が苦手というか、味ないと食べれなくて……」


藤堂「ご飯も味あるよ、美味しいでしょ。ちゃんとよく噛んで味わってごらん。あと、それ子ども用のお茶碗一杯分だからね。残さず食べること」


ひな「は、はい……」





そうか、先生たちの前で食べると食事の指導が始まっちゃうんだ。

なんか、藤堂先生はもはやお父さんみたいになってるし、うぅ……。





藤堂「ひなちゃんクラスは何組だった?A?」


ひな「あっ!そうなんです、A組に入れたんです!入院中試験受けれなかったのに、藤堂先生のおかげです。ありがとうございました」


藤堂「いいえ。でも、これはひなちゃんが頑張った結果だよ。入院中も身体起こせる時はずっと勉強してたの知ってるしね。で、修学旅行の話、詳しく聞かせてくれる?」


ひな「あ、はい!」





と言って、かばんからプリントを取り出して先生たちに見せる。





五条「アメリカか北海道選ぶのか。なるほど、ひなはアメリカ行きたいんだな」


ひな「え?」


藤堂「ふふっ。図星だね。さすが五条先生、ひなちゃんのことなんでもお見通し」





と、藤堂先生……っ//





ひな「で、でも、やっぱり無理ですよね。北海道でも遠いのに」


藤堂「5泊……フライトあるから現地で4泊か。9月……うーん……」





藤堂先生も五条先生も考え込んでる。

やっぱり、わたしはアメリカなんて無理だよね。





藤堂「正直、今のひなちゃんの身体では難しいかな」


ひな「そうですよね……」


五条「アメリカは連れてってやりたいんだけどな。ひなの故郷だもんな」


ひな「ダディーとマミーと暮らしてた時の記憶はないし、トムと……五条先生との記憶もほとんど残ってないから、正直故郷って感じはないんですけど。行ってみれば小さい頃の記憶も思い出せるかなって、少し期待しちゃいました」


藤堂「そうだよね。その気持ちはよくわかるんだけどね。今日の結果でも良くはなってきてるから、もう少し様子を見て、梅雨明けくらいに調子が良ければいいよって言ってあげられるんだけど」


五条「これ今月中に決めないといけないんだな」


ひな「そうなんです。だから、今回はもう諦めます。これから人生長いんだし、いつか大人になったらアメリカに行ける機会だって、きっと来ると思うので……。北海道は行ってもいいですか?」


藤堂「ひなちゃんがそういう気持ちでいてくれるとうれしいよ。北海道なら大丈夫だけど、それでも4日間だし飛行機もあるから、これからしっかり体調整えていこうか」


ひな「はい!」










***



*五条side



その夜、家に帰ってから、ひなのプリントにサインした。





ひな「五条先生、ありがとうございます」


五条「ん。忘れないように先にかばん入れといで」


ひな「はい」





と、ひなが一旦自分の部屋へ。

昼間、ひなはあんな風に言ってたけど、家に帰ってくるとずっとしょぼんとしてる。

本当はまだアメリカに行きたくて行きたくて仕方ないんだろう。

さすがに可哀想で、なんとかしてあげたいとも思うが……





ガチャッ——





なんて考えてる間にひながリビングに戻ってきたので、





五条「ひな、おいで」





ソファーにひなを呼んで隣に座らせて、そっとひなの身体を引き寄せた。





ひな「五条先生……?」


五条「ごめんな。本当はアメリカ行きたかったよな」





すると、ひなは少しだけ涙声に。





ひな「大丈夫です。わたしの身体じゃ行けないって思ってたから。北海道も行ったことないから楽しみだし。ただ、もしかしたらって思っただけです。ダディーとマミーと、五条先生と過ごした楽しい記憶を思い出せるかなって。そうすれば、嫌な記憶を消せるのかなって。もう、思い出したくない過去を捨てられるかなって……グスッ」


五条「ひな……」





姫島の一件以来、ひなはアイツの記憶がチラつくようになったまま。

ちょっとしたことで出てくる記憶が邪魔で苦しくて仕方ないんだろう。





五条「大丈夫だ。今日は俺がいる」





この前、帰りが夜中になった日、ひなが泣きながらソファーで待ってた。

アイツが夢に出てきたらしく、目が覚めて1人で怖くて眠れなくなったって。

LIMEでもしてくりゃいいのに、気遣っていつもしてこない。

その後、俺のベッドで一緒に寝ると安心してすぐ眠りについた。



そして、今日も俺のベッドに2人で入り、





五条「ひな、もっとこっちおいで」


ひな「はぃ……//」


五条「ほら、手」


ひな「五条先生……」


五条「朝まで握ってるから。これで悪い夢なんて見ない。安心して寝な」


ひな「はぃ……//」





と、照れて遠慮しがちなひなの手を握り、ひなが眠ったのを確認してから俺も眠りについた。










***



翌日、仕事の合間に親父へメールを送った。



内容は、日本に来てひなに会わないかということ。

両親もずっとひなに会いたがってたが、向こうで忙しいみたいだし、ひなもまだ不安定なことが多かったから、また時期を見てということになってた。



そして、その日のうちに返事があり、夏に一度、母親と揃って来ることに。


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