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ホームパーティー①
しおりを挟む——7月下旬
気づけばもう夏休み。
去年の夏はお父さんとお母さんが来たけど、今年は来られないって。
でも、受験生のわたしは毎日勉強しなくちゃいけないし、夏休みだからといって暇には感じてない。
1学期が終わっての順位は3位だった。
このままいけば医大の推薦がもらえるけど、みんな夏休みに猛勉強してくるはず。
決して油断はできないから、わたしも夏の間は猛勉強。
そんな今日も、リビングに参考書やノートをたくさん広げて勉強中。
部屋の机よりこっちの方が広いし、わたしはいろんなものを盛大に広げながらやるタイプだから、リビングの方がやりやすくて。
すると、
ピロリン♪
五条先生からLIMEが。
"言い忘れてた"
ん?言い忘れてた?
突然こんなことLIMEして来るなんて珍しい。
何があったんだろ?とトーク画面を開いてると、
"今日みんな家来る"
ん?みんな家来る?
いまいちピンとこなくて、返事を打った。
"みんなって誰ですか?"
(既読)
"先生たち"
"柱と夏樹"
先生たち……柱と夏樹……?
……え?
ちょっと待って、黒柱の先生たちと夏樹くんが家に来るってこと?
ここに?この家に?今日来るって言った?
"いつ来るんですか?"
(既読)
"だから今日"
"今から"
"1時間くらいでみんなと帰る"
……嘘でしょ!?
ちょっと、本当にそんなの聞いてないよ!
わたし部屋着だし、髪もボサボサ!!
ってか、なんでみんな来るの?
いつそんな話になってたの!?
もー!!
ということで、わけがわからないまま急いで身なりを整えて、五条先生が綺麗にしてくれてるけど一応軽く掃除して、リビングに散らかした参考書やノートを拾い集めて片付けて。
そしたらあっという間に1時間くらい経ち、
はぁ、疲れた。
と、ソファーに腰掛けたところで、
ガチャッ——
五条「ただいま」
「「お邪魔しまーす!」」
五条先生、藤堂先生、神崎先生、工藤先生、宇髄先生が。
夏樹くんはいないけど、あんまり気になってない。
みんな手に袋をたくさんぶら下げて、リビングに入ってきた。
藤堂「ひなちゃん、こんばんは」
ひな「こ、こんばんは」
神崎「お~、ひなちゃん久しぶりっ!」
ひな「お、お久しぶりです」
工藤「夏樹も来るんだけどな、あいつ塾終わって一旦家帰ってるから後で来る」
ひな「そ、そうですか」
宇髄「ひなちゃん、あれからどうだ?元気か?」
ひな「は、はい。おかげさまで……」
とりあえずわたしに声をかけて、わいわいとダイニングへ行く先生たち。
みんな慣れたように、買ってきたであろうオードブルを袋から出してテーブルに並べ、
神崎「藤堂先生、大きいお皿ありますか?」
藤堂「あるよ。悠仁、後ろちょっとごめん。お皿出す」
って、藤堂先生なんかもうキッチンに立って、どこに何があるかわかってる感じだけど……
なぜ、そんなにうちの勝手がわかってるの?
それに、悠仁って……
藤堂先生、五条先生のこと悠仁って呼んでたっけ??
宇髄「ワインはどうする?後にするか?」
藤堂「そうですね。少し食事してから開けましょうか」
工藤「あ、夏樹今向かってるって。ちょっと下まで迎えに行ってきます」
五条「工藤先生、玄関にある鍵持って行ってください」
工藤「了解、ありがとう」
目の前が突然賑やかになって状況が把握できない。
一体なんのお祭り騒ぎかと、わたしはポカーンとその様子を見つめる。
すると、
五条「ひな、おいで」
キッチンにいる五条先生に手招きされた。
ひな「五条先生、あの、これは一体何ごとですか……?」
五条「悪い悪い。前から決まってたのに言うの忘れてた」
藤堂「あら、ひなちゃん知らなかったの?」
ひな「はい、ついさっきLIMEで言われて。で、今日はまたどうしてみんな家に?」
五条「今日花火大会あるだろ?そこの窓から見えるから、みんなで見ようって」
ひな「え!今日花火ですか!?」
年に一度の花火大会。
花火がある時は入院してて見れないこともあったけど、中3の時、初めてこのリビングの大きな窓から五条先生と2人で見た。
少し距離があるからそんなに大きくは見えないけど、微かに音が聞こえてすごく綺麗だった。
あれが、今日また見えるんだ。
五条「もう夏樹来るみたいだからひな座っときな。あ、ついでにこれテーブルに持って行って」
と、お箸やお皿を渡されてテーブルに運ぶ。
ガチャッ——
夏樹「ひなのー!」
そして、夏樹くんも来た。
工藤「こら、ひなのーじゃない。お邪魔しますだろ!」
夏樹「お邪魔しまーす。で、ひなの元気だったか?」
ひな「元気だったかって、夏休み入ってまだ1、2週間なんですけど……」
夏樹「1、2週間も会わないと心配なんだ。ひなのはすぐ具合悪くなるから」
ひな「ちょっと!余計なお世話だよ!もうそんなやわじゃないから!」
夏樹「よく言うよ。この前も階段上っただけで息切らして授業遅れかけてたくせに」
ひな「あの時は荷物が重かったの!!」
なんて言い合いしてると、
宇髄「こらこら、君たち」
神崎「ケンカしないの~」
夏樹「喧嘩じゃねーよ。ひなのが素直じゃないだけ」
ひな「はー!? 夏樹くんがあることないこと言ったんじゃん!!」
夏樹「あることないことってことは、あってる部分もあるんだろ?」
ひな「それは言葉の綾でしょ!!」
藤堂「もぉ、こらこら2人とも(笑)」
工藤「夏樹~?これ以上ひなちゃんいじめたらどうなるかわかってるのか?五条先生の前だぞー?」
五条「夏樹、後でマジビンタ」
夏樹「はっ!? だからいじめてねーってば……」
宇髄「ははっ。ほら、夏樹早く座れ。飯にしよう」
ということで、ドタバタとホームパーティーが始まった。
「「乾杯~。お疲れ様です!」」
先生たちはさっそくお酒を飲んで、みんな楽しそう。
五条先生も普段わたしと2人だと飲まないのに、こうしてみんなと一緒だとめっちゃ飲むみたい。
そして、ご飯を食べ始めて1時間半ほど経ってくると、先生たちはすっかりお酒が入りましたという感じ。
わたしと夏樹くんはいないかのように、仕事の話や世間話やらで盛り上がってる。
ひな「先生たち盛り上がってるね」
夏樹「だな。あ、そろそろ花火始まるんじゃね?あっち行く?」
ひな「うん」
夏樹くんと席を立ち、お先にリビングのソファーに腰掛ける。
ひな「花火楽しみだな~」
夏樹「ひなの花火大会行ったことある?」
ひな「ないよ。ここから見たことがあるだけ。花火大会も行ってみたいって五条先生に言ったんだけど、煙が喘息にダメだから近くで見るのは無理だって」
夏樹「そうか。喘息って厄介だな」
なんて話してると、
ひな「あっ……!」
目の前に花火が上がり始めた。
すると、ダイニングにいる先生たちもみんなこっちに来て、
五条「ん、花火始まったか」
こんなに大きいソファーなのに、五条先生はわざわざ夏樹くんとわたしの間に割って入って座った。
夏樹「ちょっ、うわ!大人げねぇ!」
五条「ん?なんか言ったか?」
夏樹「うわ、マジで大人げねーじゃん……」
藤堂「ははっ。悠仁こういうとこあるから」
工藤「夏樹、ドンマイ。ひなちゃんの横はお前じゃダメだって」
そんな会話が隣でされてることにも気づかず、わたしはもう花火に夢中。
ひな「わぁ~……!!綺麗~……!」
すると五条先生が、
五条「綺麗だな」
って、腕を回してわたしを引き寄せた。
ドキッ!!
抱き寄せられたことにドキドキが止まらないのはもちろん、なにがこんなにドキドキするかって、五条先生に抱き寄せられる姿がうっすらとこの大きな窓に映ってること。
五条先生に抱き寄せられる女の子。
窓に映るドラマのワンシーンのようなその姿は、自分なのに自分じゃないみたいで、でも確かに自分で。
客観的に視覚的に認識させられることで、より一層ドキドキする。
ドキドキッ……
ドキドキッ……
……って、ダメダメ!
今は先生たちがいるし、夏樹くんまでいるんだからっ!
と、なんとか平静を装って花火に集中した。
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