138 / 253
ぶどうジュース事件②
しおりを挟む*五条side
ひなが誤ってワインを飲んでから5分足らず。
案の定、ひなの様子に異変が起き始めた。
ひな「ハァ……ハァ……」
宇髄「ん……?ひなちゃん大丈夫か?」
さっきまではっきりしてたひなの目はとろんとして、頬はどんどん紅潮し、息もハァハァしてきてる。
五条「ひな?」
声をかけてみると、とろんと潤んだ目をこちらに向けて、
ひな「ハァ……ハァ……ごじょぉせんせぇ……」
と、甘い声を漏らした。
五条「……っ、ひな……っ//」
神崎「あんらら、ひなちゃん完全にお酒回っちゃって」
宇髄「……こうなったか」
藤堂「悠仁、気をつけなね。他の男の前でひなちゃんにお酒飲ませるとどうなるか」
そりゃもう、ありとあらゆる男どもがひなを持って帰ろうとするだろうな。
そんなこと考えるだけで気が狂いそうだが。
はぁ……ったくひなは、こんなんでよく平気って言ったな……。
五条「もちろんです……ひなは酒飲むの禁止に……」
って言ってると、
ひな「ハァハァ……ケホッ」
五条「ひな?」
ひな「ハァハァ……ごじょぅせん……ケホケホッ」
今度はひなの呼吸が乱れ出した。
宇髄「やっぱりか。藤堂、ステートあるか?」
藤堂「持って来てます」
宇髄「神崎、脈測ってやれ」
神崎「はい」
みんなもバタバタと動き出す。
すると、
ひな「ハァハァ……、……ク……する……」
五条「ん?ひな気持ち悪いか?吐く?なんて言った?」
ひな「……バクする……ハァハァ……しんぞぅ……が、ハァハァ……バクバク……」
心臓がバクバクする……?
ひなが自分から心臓のことを口にするのは今日が初めて。
聴診する藤堂先生も、脈を測る神崎先生も、宇髄先生も工藤先生も、ひなの言葉に顔をしかめた。
工藤「心臓……?」
藤堂「……うん。雑音は確かにあります。喘息も出てますけど、心雑音も」
ステートを耳から外しながら藤堂先生が言う。
神崎「今、脈かなり早いです。乱れますね……」
工藤「すみません。俺もちょっと聴診します」
と、今度は工藤先生も聴診する。
ひな「ケホッ……ハァハァ……病院、行く……?」
藤堂先生にも工藤先生にも聴診されて、話も耳に入ってるのか、今にも閉じてしまいそうな目を必死に開けて、ひなは不安そうに聞いてくる。
五条「今日は行かないから大丈夫だぞ。ひな、眠かったらもう目閉じな。アルコールが回ってるんだ。このまま寝てもいいから」
と、頭を撫でてたら、素直に目を閉じて眠りについてくれた。
宇髄「ひなちゃん寝たか?」
五条「もう寝てると思います」
宇髄「工藤、どうだ……?」
工藤「近いうちに検査して、いよいよ手術も考えた方がいいと思います。恐らく進行してるかと」
ひなが寝たことを確認して始まった心臓の話。
自覚症状もないし、今は可哀想だと様子見してた心臓もここへきてとうとう気になり出した。
藤堂「今は飲酒の影響もありますが、それでもはっきりと雑音が聞こえるようになってます。先月の健診時は、ここまでではなかったのですが……」
五条「心臓がバクバクするって、ひなが心臓のこと口にしたの初めてです」
と話してると、
夏樹「なぁ、ひなの大丈夫か?」
ダイニングにいた夏樹がこっちへ来た。
工藤「大丈夫だ。夏樹は心配しなくていい」
夏樹「心配はしていいだろ……クラスメイトなんだし。大丈夫、もう下心とかないから。本当にひなののこと心配なだけ」
もう随分前、夏樹とひなが高1になった頃の話だが、夏樹はひなに本気で気があったらしく、
夏樹「俺さ、ひなののこと割とマジで好きだったんだけど……学校でたまに五条先生の話するとさ、ほら、ひなのわかりやすいから、本当に五条先生が好きなんだなって……敵わないなって思い知らされるんだ。だから、俺はひなののこと五条先生に託す」
なんて一丁前なこと言ってきた。
五条「お前に託されなくても、ひなは俺が守るし幸せにするが」
と言うと、
夏樹「ずりぃな、そんな大人の余裕見せつけんなよ。まぁでも、俺じゃひなののこと守れるわけないよな。五条先生や黒柱が付いてる限り、俺がどれだけ勉強して、体も鍛えて強くなったところで、敵わないのはわかってんだ」
だと。
バカな夏樹も根っからのバカではない。
なんならひなより聞き分けはいい。
高校生になって自分なりに物事考えて、男らしさも見えた夏樹に、
五条「なぁ、夏樹。学校にいる間は、お前にひなのこと頼めるか?具合悪くてもすぐ隠して無理するんだが、俺も気づけないことあるから。ひなのこと、気をつけて見ててやってくれ」
と、ひなのことを頼んだのはこの時だ。
夏樹「わかった。ひなのになんかあればこっそり伝えるよ。あ、だから五条先生のLIME教えて」
と、LIME交換したのもこの時。
それから本当に夏樹はひなのこと気にかけてくれてて、密告もしてくれる。
夏樹がEからB、そしてAクラスまで成績を上げられたのも、9割は本当に医者を目指すためだが、残りの1割はひなのため。
学校にいる間くらいなるべくひなのそばにって思いで、必死に勉強を頑張ったことが見ててわかるから、なんとも憎めない。
ひなを心配そうに見る夏樹の顔を見ると、ふと、そんなことも思い出した。
宇髄「……なぁ、夏樹。そういえば今日来てすぐに、ひなちゃん最近よく息切らすとか言ってなかったか?2人で言い合いしながら」
夏樹「あぁ、言ったよ。教室移動で階段上がるのしんどそうにしてる。踊り場でハァハァ言って、休憩しながらじゃないと一気に上りきれてない。だから、授業もよく遅刻しかけてた」
藤堂「ひなちゃんそれ健診の時言ってくれてないな……」
夏樹「うわ、ひなのまた言ってなかったのか。先生に言えよっつったんだけどな。チクると後でうるさいから信じたのに、密告しとけばよかった」
五条「そういう時のひなの言葉は信じなくていいぞ……」
夏樹「ひなの、恋人にまでそんなこと言われてんじゃん(笑)って、それはそうと、ひなの心臓も悪いの……?」
工藤「あぁ。生まれつき心臓に穴があいてるんだ。これ自体はそんなに珍しい病気じゃないけどな」
夏樹「マジかよ……それ、ひなの知ってんの?」
五条「心臓が良くないことは伝えてあるけど、穴があいてることはまだ知らない。言うと何か症状が出た時に怖がって隠すから、わざと言ってなかったんだ」
夏樹「そうか。んじゃ、俺も黙っとく」
五条「ま、結局隠してたみたいだが……」
膝の上で眠るひなに視線を落とすと、未だ真っ赤な顔してスヤスヤと。
藤堂「さて、どう進めていきましょうか」
神崎「手術、するなら早い方がいいですよね。今ちょうど夏休みですし」
宇髄「そうだな。経過にもよるが、2、3週間で退院はできるだろう。となると、もう8月になるからまずはすぐに検査するか。藤堂、次の定期健診すぐだったな?」
藤堂「はい。明後日です」
宇髄「工藤、その日心臓も一緒に診てやれるか?」
工藤「もちろんです」
藤堂「心カテはどうします?工藤先生の都合が良ければ、定期健診終わりにそのまま入院させて次の日にでも」
工藤「そうですね、そうしましょう」
31
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる