ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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傑と悟①

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~学生食堂~



夏樹「ひなの、大丈夫か?」


七海「朝より顔色悪くなってるけど……医務室行く?」





昼休み、夏樹と傑が心配そうに声をかけてくる。





ひな「ううん、平気。大丈夫だよ」





そう言うわたしは、梅雨に入り変な天気が続くせいか、数日前から調子が悪い。

この前の定期健診の時、





藤堂「ヘモグロビン値が少し落ちてて、気道も狭くなってるね。気を張ってた4月が終わって、緊張の緩む5月は新生活の疲れが一気に出るから。少し気をつけておくように」





と、藤堂先生に言われてた。

その時は、調子良いし大丈夫でしょ!って思ってたけど、さすがお医者様。

藤堂先生が言った通り、5月下旬に入って明らかに体調崩してる……。





夏樹「大丈夫じゃないだろ。藤堂先生に連絡して午後から病院行った方がよくないか?」


ひな「大丈夫だから。午後の講義もちゃんと受けないと」


七海「でも、ひなの食欲も落ちてるよ?今週はうどんばっかりで、今日なんか半分しか食べてない」





って、完全に箸を置いたわたしのうどんに視線を落とす傑。





ひな「き、今日は、朝いっぱい食べたから……」


夏樹「大学生にもなってバレバレな嘘つくなよ……」





と、夏樹は少し呆れた感じ。





ひな「……っ、ほんとだから!だいたい、1年なのに講義休めるわけないじゃん。今日は4限で終わりだし、明日は休みだし、座って聞いてるくらいなんともないってば」


七海「ひなの?気持ちはわかるけど、さすがに1回飛ばしたくらいじゃ影響ないよ。講義なら録音しとくしノートも貸すから」


夏樹「見てる感じ、後で絶対酷くなるパターンだと思うぞ?無理せず今のうちに休んだ方がいいと思うけどな……」


ひな「そんなことないもん!本当に大丈夫だから!!」





と、心配する2人をなんとか押し切って、午後の講義を受けた。

……が、わたし以外のみんなが予想した通り、





フラッ……





4限の講義終わり、わたしはその場から動けなくなってしまった。










「「ひなの……?」」





講義が終わってみんな部屋を出て行く中、なかなか席を立とうとしないわたしの顔を、傑と夏樹が両隣から覗き込む。





夏樹「立てないのか?」


ひな「ごめん……大丈夫だから……ちょっと待って……」


七海「目眩してる?」


ひな「少しだけ……すぐ治るから……」





3限はまだ大丈夫だった。

でも4限の途中からは、正直座ってるのもつらかった。

大学の講義は90分。

この長い講義がやっと終わって早く帰りたいのに、身体がゆらゆらと目眩を起こしてて立ち上がれない。



すると傑が、





七海「ひなの、ちょっとごめん」





と言って、わたしの手首を掴んできた。





七海「……頻脈出てる。ひなの貧血じゃない?なったことある?」


夏樹「うん。ひなのは貧血持ち。喘息もある」





わたしが答えるより先に夏樹が答える。





七海「それなら病院行った方がいい。ひなの今から行こう。車で送るから」





……ん?

く、くるま??





夏樹「は?傑車あんの?」


七海「うん。俺いつも車で来てる」





えぇ!?

大学に車で通うって、そんなことある!?

だから、傑は正門までも一緒に帰ったことなかったのか。





夏樹「はぁ!?車で来てるってマジかよ……20才すげーな……」


七海「そう?他にもいるよ、車通学。駐車場に学生ちらほらいるもん」


夏樹「いやいや、いるかもしれないけど少ないだろ。お前何者だよ……」


七海「それより、早くひなの病院連れて行こう。主治医の先生には連絡取れる?」


夏樹「それなら俺が連絡する。連絡先わかるから」


七海「OK。じゃあ、お願い」





と、わたしは2人に支えてもらいながら傑の車に乗って、大学のお隣、ノワール国際病院へ。










病院に着くと、傑は救急外来の入り口に車を止めた。

夏樹が連絡してくれたから、藤堂先生は外で待ってくれてて、車が着くなり後部座席のドアを開けると、





藤堂「ひなちゃん、ちょっとしんどくなっちゃったね。病院来てえらかったよ」





言いながら、ぐったり座るわたしの首元を触って下瞼をめくった。





ひな「藤堂先生……」


藤堂「うん、もう大丈夫。中でちょっと診てみようか」





と、わたしは抱き上げられて、処置室へ。










藤堂「ひなちゃん、少しチクっとするよー」





ベッドに寝かされたら、聴診されて血圧も測られて、さっそく採血も。





ひな「グスン……」


藤堂「ひなちゃん?どうしたの、痛い?」


ひな「フリフリフリ……」




藤堂先生がしてくれる注射が痛いはずない。

採血して貧血の数値を見るんだなと、そして絶対悪くなってると、自分でもうわかってるから、嫌になって涙が出てきちゃう。





藤堂「もう終わるからね、ちょっと待ってね」





言い終わる時には、もう針を抜いて止血してくれた。

そして、空いた片手で耳へと伝う涙をすくってくれる。





藤堂「泣かなくて大丈夫だよ。目眩すぐ落ち着くからね」


ひな「グスン、グスン……藤堂先生……わたし、また貧血が悪くなってるんです……少し前からしんどくて、食欲も無かったんです……ヒック、ヒック」


藤堂「うん、そっかそっか。だけど、大学休みたくなくて頑張っちゃったか」


ひな「コクッ……。でも、頑張ったらこうなっちゃって……数値、どうせ絶対下がってます……まだ大学始まったばっかりなのに……グスン、グスン……こんなんじゃ卒業できないかもしれない……どうしようっ……ヒック、ヒック、グスン、ヒック」


藤堂「ひなちゃんひなちゃん。大丈夫だから一旦深呼吸しようか。ほら、一緒に呼吸整えよう」





大学は甘くない。

ましてや医大生なんて、とんでもなく大変なことは覚悟してた。

だから、大学では体調崩さず頑張ろうって、病院なんて行かないぞって決めてたのに、やっぱりわたしはダメだった。





ひな「グスン……グスン……ヒック、うぅ……グスン」


藤堂「今から卒業できないなんて、そんな心配しなくて大丈夫。大学は講義も90分になるし、専門的な内容で頭も使うし、今までとは全然違うでしょ?慣れてなくて、少し疲れが出ちゃっただけだから」


ひな「でも、倒れるなんてわたしだけです……みんなは寝れば次の日元気なのに、わたしは酷くなるばっかりで。身体が弱すぎるんです……グスン」


藤堂「そんなことないよ。周りの子と比べないで、これまでのひなちゃんと比べてごらん。随分丈夫になってるよ。ほら、今日だって熱も喘息も出てないでしょ、ね?この土日しっかり休めばよくなるから、そんなネガティブにならないで」


ひな「今日、わたし入院ですか……?グスン」


藤堂「ううん。今日は入院させるつもりないよ。点滴終わったら帰っていいからね。ただ、ひなちゃんも言ってくれたように、貧血の数値はまた下がってると思う。だから、ひなちゃんが毎日元気に大学へ通うにはどうしたらいいか、後で検査結果見ながら一緒に考えようか」


ひな「はい……」


藤堂「うん。そしたら、まずは点滴終わるまでここで少し休もうね」





そう言いながら、タオルケットを掛けてくれる藤堂先生は、いつの間にか点滴を入れてくれている。



気づかないうちにしてくれるなんて、さすがだな。

わたしもこんな先生に、なりたいな……。



なんて思いながら、わたしは少しの間、目を閉じた。


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