ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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"傑"と"夏樹"

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そうして、1週間ほど経ったある日。





夏樹「ひなの、この後図書館行く?」


ひな「うん、行くよ」


夏樹「俺、今日バイトないんだ。一緒に行っていい?」





講義終わり、今日はバイトがないというので、夏樹くんも一緒に図書館へ。

傑は別の講義を受けててまだみたいだから、





"先に図書館いるよ。今日は夏樹くんも一緒。"





LIMEをしたら、10分ほどで来てみんなで勉強を始めた。










***



*七海side





ひな「ちょっと、わたしトイレ行ってくる」


「「いってらっしゃい」」





勉強を始めて1時間ほど、ひなのがトイレに行くと席を立った。

で、その隙に俺は……





七海「ねぇ、いつまでそうしてるつもり……?」





と、夏樹に言った。





夏樹「は?」


七海「俺のこと気に食わないのはわかるんだけどさ、そろそろやめない?」


夏樹「お前さ……本人に向かってそんなストレートに言うか、普通……」


七海「今ひなのいないから、男同士ちゃんと話したいんだけど。ひなのは俺たちの微妙な空気に気づいてるよ。言われなくたって夏樹もわかってるだろうけど。ひなのに気遣わせるの嫌だから、もうやめにしよう。思うことあるならはっきり言って」





ひなのを介して、俺と夏樹が出会ってから1週間。



『夏樹くんと傑も仲良くなって、3人で友達になろう!』



と、ひなのが俺たちをくっつけてくれて、最近では1日の大半を3人で過ごしてるけど、正直、夏樹と俺は出会ってからずっとギスギスしてる。

ひなのもそのことを感じてるようで、毎日俺たちの間に入り、この空気を取っ払おうと、俺と夏樹に仲良くなってもらおうと、健気に試行錯誤してるのも見て取れる。



で、そんな状況をそろそろ終わらせたいし、こうなってる理由もなんとなく見当がつくから、俺は夏樹に問いかけた。





夏樹「じゃあ言うけど、お前、ひなのとなんでそんな仲良くしてんの……?出会ったばっかで馴れ馴れし過ぎだろ」





やっぱりな。

夏樹がひなのを大事にしてるのは見てればわかる。

恐らく人見知りだろうひなのが、夏樹には心を開いてるのもよくわかる。

そこへ、突然現れた俺がスッとひなのの懐に入り込んだんだから、夏樹からしたらどこの馬の骨かも……って話だろう。

が、それはそれだ。





七海「ダメだった?」


夏樹「は?」


七海「俺は夏樹が心配してるようなこと……ひなのをどうこうするつもりはない。縁あって出会って、良い子だなと思ったから、あくまで1人の人間として付き合いたいだけだけど、俺とひなのが仲良くなるのダメだった?」


夏樹「そうとは言ってねーだろ……」





だろうね。

夏樹はひなのに新しい友達ができることを否定するようなやつじゃない。

本心では、俺とひなのが仲良くしてて嬉しいはずだし、夏樹だって3人だとより楽しいって思ってるはず。

ただ、俺とひなのの距離の近さに嫉妬してるんだろう。





七海「じゃあ、夏樹は何が気に食わないの?夏樹の中で引っかかってるそれは、夏樹自身の問題なんじゃないの?」


夏樹「……っ、それは……」










***



*夏樹side



傑のやつ、さっきから絶妙に、じわじわと核心に迫ってくるな……。



傑の言う通り、別にひなのと仲良くなるのはいい。

新しい友達が出来て、ひなのの毎日が楽しくなるなら、むしろうれしい。

でも、傑とひなの、たった1、2週間でめちゃくちゃ仲良くなるし、2人とも俺より賢くて話のレベルも合ってそうで、たまに英語で話したりもしてて、俺なんかより気が合うんだろうなって思うと、なんか悔しくて。

それに何より、



"傑"って……



ひなのに呼び捨てしてもらえるなんて、ずるいわ……。



って、考えてたら、





七海「あのさ、夏樹。今だけ先輩風吹かすけど……別に俺を敵対視したい訳じゃないだろ。ひなのは俺たちのこと比べたりなんかしてないのも、比べることじゃないってこともわかってるだろ。だったら、ひなのに気遣わすような態度取るな。嫉妬すんなバカ」





……っ!!





やっぱり、傑は俺の思ってること見抜いてたか。



アメリカ帰りのハタチ、イケメン……

精神年齢は恐らくアラサー……



傑は一体何者なんだ……





夏樹「そっちは核心ついてくんなバカ!」





って、言い返すと、





ひな「あ、あの……2人とも喧嘩しないで……」





どこから聞いてたのか、ひなのがトイレから戻って突っ立ってた。










***



*ひなのside





七海「……すんなバカ」

夏樹「……いてくんなバカ!」





……え?





トイレから戻ると、傑と夏樹くんが揉めてるみたいだった。

傑と出会ってから、夏樹くんは少し寂しそうな顔するようになって、傑ともあまり話したくなさそうで。

わたしは、傑と夏樹くんも友達になって、3人でキャンパスライフを送れたらって思ったんだけど、でもそれは、傑とも夏樹くんとも仲良くしたいっていう、単なるわたしのわがままかなって、気にはなってた。

それでも、





3人一緒がいいな。

せっかくだから、2人に仲良くなって欲しいな。





って、思ってたんだけど……





ひな「あ、あの……2人とも喧嘩しないで……ごめんね、わたしが夏樹くんとも傑とも一緒にいたくて、無理矢理2人をお友達にしようとして。人それぞれだもん、誰とでも仲良くできる訳じゃないし、友達くらい自分で選びたいよね。ごめんね、わたしのせいで……」





と言うと、





「「喧嘩じゃないし、ひなのは何も悪くない」」





ハモる2人。





ひな「え?」


七海「ごめん、ひなの。嫌なとこ見せて。でも、喧嘩してるわけではないから。むしろ、夏樹と仲良くなろうとしてたの。……な?」


夏樹「あ、あぁ……」





喧嘩じゃないって、どういうこと……?

2人ともそれなりに剣幕な顔してバカって言ってた気がするけど、





ひな「喧嘩してたんじゃない、の……??」










それから傑は、夏樹くんとギクシャクしてた理由を話してくれて、どうやら、新参者の傑とわたしがめちゃくちゃ仲良くしているのを、古参の夏樹くんが嫉妬してたみたい。

で、1番拗ねてたのは、傑は呼び捨てなのに夏樹くんは呼び捨てじゃないってことらしく……





ひな「え!そんなことで2人ともギスギスしてたの!?」





と、思わず言ってしまった。





夏樹「そんなことって、名前の呼び方大事だろ!じゃあひなのは、五条先生に"栗花落さん"とか"ひなのちゃん"って呼ばれてもいいのか?俺のことは夏樹って呼ぶのに、ひなのちゃんって呼ばれたらどう思う?藤堂先生にも栗花落さんって呼ばれたらどう思うんだよ」


ひな「……なんか、嫌ではないけど……夏樹くんだけ名前で呼んでもらっていいなって思う。距離が遠いというか、寂しいなって……」


夏樹「だろ?そういうことだよ。夏樹くんって呼ぼうが夏樹って呼ぼうが、俺に対する気持ちが変わるわけじゃないだろうけど、呼ばれる方は親しみ持ってくれてるなとか思うぞ。傑みたいに、同じ立場の人が隣にいて、呼び方が違うと余計にな」





なるほど、そういうことか。

確かに、わたしも前に外来の看護師さんから"栗花落さん"って呼ばれて、ちょっと寂しいなって思ったことあったな。

その時、先生たちがいつも"ひなちゃん"って呼んでくれるの、うれしいって思ったっけ。





ひな「夏樹くん、今のすごくよく分かった。だから、これからは夏樹くんのこと、"夏樹"って呼ぶ。ずっと一緒にいたのに、気づかなくてごめんね」


夏樹「だから、ひなのが謝ることではないって。俺のわがままだし、なんか女々しくてごめん。あと、傑ともひなのの前でずっと微妙な空気出してて悪かった。2人ともごめんな」





と、一件落着したところで、





七海「ところで、1つ聞いていい?五条先生って誰?」





と、傑が。





ひな「あ、五条先生はわたs……」


夏樹「ひなのの婚約者」


ひな「……」





えぇっ!?





七海「あ、そうなんだ!」


夏樹「うん。ノワールの小児科医で、昔ひなのの主治医してた人。それでひなのが恋に落ちた」


七海「そっかそっか。夏樹は彼氏じゃないって思ってたけど、ひなの婚約者いたんだね!」





って、待って待って待って、違うよ!!





ひな「ちょっと!夏樹くn……じゃなくて、夏樹!!傑も!!婚約者って……まだそこまでいってないよ!」


七海「まだってことは、そのうち婚約者になるんだ?」





……っ、しまった。



違うって言いたいけど、違うくもない。

いや、今はまだ違うで正解なんだろうけど、いつかは五条先生と結婚したいし、するんだよね?

だから違うとは、違うなんて、言えない……。





ひな「ま、まだそうなるかどうかは……」


夏樹「そうなるだろ。五条先生がひなのを離すわけないもん。ひなのにぞっこんだし、ひなのも五条先生なしで今さら生きていけないだろ」


七海「へぇ~、ひなの愛されてる!五条先生、俺も会ってみたい」


夏樹「それはそのうち会えると思うぞ。ここにいれば、研修とかで病院に行く機会いっぱいあるし。まぁ、嫌でも会えるよ」


七海「確かにそうだね。じゃあ、その時に会うの楽しみにしてよーっと」


ひな「もう!!ちょっと!!!」





と言っていたら、意外とその時はすぐに……。


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