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医大生、新たな出会い②
しおりを挟む——3週間後
入学式から3週間。
最初の1週間はオリエンテーションや健康診断などがあり、講義は先週から本格的にスタート。
今日は1限から講義があって、わたしは1限が始まる9時20分前くらいにキャンパスへ着いた。
すると、
ピロリン♪
"やべ!寝坊した!!今起きた!!"
講義室へ向かう途中、夏樹くんからLIMEが。
どうやら、入学早々やらかした様子。
ひな「もー、夏樹くんバカだなー……」
なんて思わず呟きながら、
"おはよう!9時半までなら入室できるから、早く準備してダッシュで来て!"
テストはもちろんだけど、1年生の間は出席も重要。
講義開始30分以内なら遅刻で済むけど、それを過ぎると欠席扱いになる。
それは避けるようにと返事を送ったら、
ドンッ!
歩きスマホをしてたせいで誰かとぶつかってしまい、わたしは尻もちをついた。
痛ったぁー……
と思いつつ、現代っ子なわたし。
落としてしまったスマホが割れてないかと秒で拾おうとしたら、
「Sorry!! Are you okay!?」
ぶつかった相手に謝られたので、
ひな「ぁ、Sorry……!!」
……って、ん?
何も考えず慌てて返事したけど、
Sorry……??
と思い顔を上げたら、かっこよくて爽やかな男の人が。
わたしがキョトンとしてると、向こうも一瞬キョトンとしたような顔して、
学生「あ、すみません!怪我してない?」
と、流暢な日本語を話した。
あれ?
今、Sorryって言われたの気のせいだったかな?
まぁ、いいか。
それより、こんな尻もちついて恥ずかしいっ!!
と我に返り、
ひな「だ、大丈夫です!前見てなくてすみませんでした!!」
学生「え?あ、ちょっと!!」
わたしはすぐに立ち上がって、急いで講義室に向かった。
***
はぁ……。
朝から人にぶつかって、しかもその勢いで尻もちつくなんて。
大学生にもなって、ほんとやだ……。
講義開始5分前、今日は後ろの方の席に座り、さっきのことが恥ずかしくて机に突っ伏してたら、
「隣、空いてるかな?」
という声が。
いつもは夏樹くんと並んで座るんだけど、今日は遅れて来るし断る理由もないな……と、
ひな「はい、どうz……」
……っ!?
って顔を上げたら、さっきぶつかった人。
先輩かと思ってたのに、どうやら1年生だったよう。
学生「ありがとう」
と言って、わたしの隣に座った彼は、
学生「さっきはごめんね。怪我なかった?」
ひな「は、はい」
学生「俺、七海傑(ななみすぐる)。傑でいいよ。それで、栗花落さんってもしかしてハーフ?」
ひな「え?」
七海傑……
いきなり自己紹介されたと思ったら、なぜかわたしの名前を知ってるし、わたしがハーフって……
え?どういうこと??
七海「あ、さっきぶつかった時、Sorryって言ってたから。色白くてかわいいし、ハーフかなって。違った?」
ひな「ち、違いますけど……それよりどうしてわたしの名前知っ……」
言いかけたところで教授が入ってきて、講義が始まってしまった。
***
——昼休み
学食で夏樹くんとランチタイム。
履修科目がほとんど同じだから、夏樹くんとは基本一緒に行動してる。
せっかく大学生になったのに、新しい友達作らなくていいのかなと思って、
ひな「夏樹くん、わたしとずっと一緒でいいの?わたしといたら、新しい友達できなくない?」
って聞いたら、
夏樹「んなこと気にすんなよ。無理に作る友達ならいらないし、本当に友達になるやつは、どうしてようが自然と友達になるもんだろ。それより、慣れない大学生活でひなのを1人にする方が心配だわ。今日も手のひら擦りむいてるし、危なっかしい」
最後のところは余計だけど、ちょっとかっこいいこと言ってきた。
まぁ、そうやって言いつつ、先生たちにわたしの"御守り(おもり)"を頼まれてるんだろうけど、夏樹くんがいいと言うならわたしはありがたい。
ところで、さっきの七海傑。
1限が終わると、わたしを見ることも話しかけることもせず、スッと席を立って行っちゃった。
次の2限の講義では離れたところに座ってたし、ぶつかったとはいえ、なぜ隣に座ってきたのか。
それに、わたしの名前も……
どうして知っていたのか、謎のまま。
そんなこんなでお昼ごはんを食べ終わり、そろそろ昼休みも終わる時間。
ひな「夏樹くんごめん。わたし、トイレ寄って行くから先に講義室行ってて」
夏樹「おう。んじゃ、席取っとくな」
ひな「うん、ありがとう」
午後の講義が始まる前にわたしはトイレへ。
トイレを済ませたら、女子大生らしくリップを塗り直したりなんかもして、
よしっ、OK。
と、トイレを出ると、
あっ……
七海傑とばったり。
七海「栗花落さん、お疲れ様」
わたしと目が合うと、足を止めて爽やかな笑顔で言う彼。
あまりにも自然な振る舞いに、嫌味や下心のないこの笑顔。
今朝出会ったばかりで得体の知れない彼だけど、この笑顔にはどことなく既視感があって、絶対に悪い人ではないと本能的にわかる。
ひな「お、お疲れ様です」
頭をペコッと下げながらとりあえず返事をして、
ひな「あ、あの……七海さん、どうしてわたしの名前知ってるんですか?」
改めて聞いてみた。
すると、
七海「ふふっ。そんなかしこまらなくていいよ。俺、中高とアメリカに居たから堅いのとか苦手でさ。だからほら、朝言った通り"傑"って呼んで?俺もひなのって呼ぶから」
あ、なるほど。
ぶつかった時にSorryって言ったのは、アメリカ帰りだからか。
きっと、咄嗟に英語が出てきちゃったんだろうな。
そっかそっか……って、そこに納得してる場合じゃない。
ひな「あの……それでわたしの名前は……?」
七海「うん?」
ひな「だから、わたしの名前。どうして知ってるんですか?」
七海「あー。ほら、いつも一緒にいる……夏樹くん?に、ひなのって呼ばれてるでしょ?だから、ひなのって名前なんだなと思って」
あ、そっか。
夏樹くんと話してるの聞こえてたからか。
なんだ、そんなことなのね。
と、あっさり納得してたら、
ひな「あ、そろそろ午後の講義始まるよね。俺はトイレ行ってから行くから。また後でね!」
と、彼はトイレに入って行ったので、わたしは講義室へ向かった。
そしてその後は、彼に話しかけられることもなく、ただ講義の時にいるなーって思うくらい。
あの日話しかけてきたのは、単にぶつかったからってだけだったのかな。
と、特に気に留めることもなく過ごしてた。
けれど、数日後。
1日の講義が全部終わって、わたしは大学の図書館にいた。
いつもこうして図書館に来て、課題や勉強をしてから帰ってる。
ちなみに、講義が終われば夏樹くんとは別行動。
というのも、夏樹くんは大学生になってバイトを始めて、ほぼ毎日バイトがあるらしい。
バイトがない日は一緒に勉強することもあるけど、基本的に講義が終わればバイバイして、それぞれの時間を過ごしてる。
ということで、今日も1人勉強をしていると、
「ここ座っていい?」
と、聞こえてきたこの声は……
ひな「七海さん…」
七海「もー、だから傑でいいって。というか、傑って呼んで。はい、言ってみて?」
ひな「え?」
七海「ほら、七海さんじゃなくて?」
ひな「す、すぅ……ぐる?」
七海「うん。よくできました」
よくできましたって……。
そう言ってにっこり微笑んだ傑の顔は、やはりどこか既視感があって、今の"よくできました"も、なんだか聞いたことある気がする。
七海「1人で勉強してたの?」
ひな「はい」
七海「もぉー(笑)はいじゃなくて?」
ひな「う、うん……」
七海「うん、それがいい。ここにはよく来るの?」
ひな「5限がない日は来てて」
七海「夏樹くんは?いつも一緒だけど、一緒じゃないの?」
ひな「夏樹くんはバイトがあるから、講義が終わってからはいつも1人なの」
七海「そっか。じゃあ、俺もバイトしてないし、ここ通おうかな。いい?」
ひな「いいって……図書館は自由に使えるんだから、別にわたしに聞かなくても……」
なんて話した次の日から、傑は本当に毎日図書館へ来るようになって、わたしを見つけては一緒に勉強するように。
で、そうこうしてるうちに仲良くなって、
ひな「え?傑って20才(はたち)だったの?」
七海「うん。アメリカの学校って、9月に始まるからズレるんだよね。だから、俺も一応現役だけど、現役の子たちの一つ上」
ひな「それでか。傑とぶつかった時、わたし先輩だと思ったの。大人っぽかったから」
七海「そう?ひなのは結構小さいよね」
ひな「うん……ちょっと、昔から身体が強くなくて。あ、でも、最近は元気だから大丈夫なんだけどね!」
七海「そっか。たくさん食べて大きくなるんだよ?」
ひな「どうしてそんなお父さんみたいなこと言うの(笑)」
七海「お父さんて、せめてお兄さんにしてよ(笑)」
ひな「あ、そっか(笑)」
なんて、お互いのことも少しずつ話すようになり、
夏樹「おはよー」
ひな「夏樹くん、おはよう」
七海「おはよう、夏樹」
と、夏樹くんとも仲良くなって、日中は3人で過ごすようになった。
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