ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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王子か鬼か②

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ひな「おはようございます!」





とにかく、こういう時こそまずは元気に挨拶。

すると、





藤堂「ひなちゃん、いつからしんどかった?昨日よりしんどいでしょ?」


ひな「……え?」





どうして来た瞬間バレた……の……?

藤堂先生、あなたはどうして今わたしのおでこに手を……?





藤堂「これ熱上がってるよね。祥子ちゃん何度だった?」


祥子「36度9分でした。ただ、血圧測る時に腕がかなり熱くて、私の感覚では38度はあるように思います」





嘘、祥子さんにもバレてたの……?





藤堂「うんー?ひなちゃん、もう1回熱測ろうか」





と言って、藤堂先生直々に体温計を挟まれた。

でも、挟むまでで押さえてはこなかったから、わたしはこっそりまた浮かしてみたら……





藤堂「……ひ~な~ちゃん?何してるの……?」





ギクッ……





藤堂先生の柔らかくない、優しくない、鋭くて冷たい声が……





ひな「な、何も……たた、体温を測って……」





と言うと、脇から体温計をサッと抜き取られ、電源を入れ直してもう一度脇に挟まれた。

そして、今度はわたしの脇をしっかり上から押さえられる。





ピピッ……





そして体温計が鳴って、もちろん藤堂先生にサッと取られ、





藤堂「38度4分。これ、自分でも熱上がってるのわかってたよね。どうして体温計浮かしてたの?」





って。



藤堂先生、完全に、すっごく、怒ってる……

どうしよう、本当に怖い。





ひな「あ、あの……ごめんなさぃ……」


藤堂「ひなちゃんさ、もう大学生だよね。大学生になってまでこんなことするの?」


ひな「すみませんでした……」


藤堂「どうして隠そうとした?」





優しさの塊な藤堂先生が本気で怒るのは、これで何回目だろうか……。

もうやだよ、ほんとやだ……。





ひな「その……熱が上がってるって……昨日よりしんどいってことがバレれば、勉強も退院もさせてもらえないと思ったからです……」


藤堂「はぁ……。ひなちゃんね、もうそのバレるバレないはいい加減やめようか」


ひな「はぃ……」


藤堂「もうずーっと、毎日のように言い続けてきたよね?具合が悪くなれば、いつもと違うなおかしいなと思った時は、自分からすぐ言いなさいって。日本語だと意味わからない?」


ひな「わ、わかります……」


藤堂「だったらどうして隠すかな。それに、昨日も身体休めず勉強してたんでしょ。何のために入院してると思ってるの」





と、枕の下に隠してたノートをスッと取られた。





ひな「ぁ……!か、返して……!!」





手を伸ばしてみるけど、ひょいっとノートを上に上げられてしまう。





ひな「ちょっと!!何するのやめてよ!!大事なノートなんだから取らないでっ!!」


藤堂「ひなちゃん!!」





ビクッ!!





藤堂先生に取り上げられたノートを取り返そうと、今度は藤堂先生の白衣を掴んで手を伸ばしたら、思いっきり雷を落とされた。





藤堂「もうテスト受けるのやめな。今日から1週間部屋から出さない」


ひな「ぇ……」





そう言いながら、テキパキと聴診だけして、





藤堂「祥子ちゃん。点滴は昨日と同じもので、枕冷たいのに変えてあげて。それと、8度5分超えるようなら頓服飲ませてくれる?」


祥子「はい、わかりました」


藤堂「お願いね」





指示を出して部屋を出ようとするので、





ひな「と、藤堂先生……?」





慌てて背中に声をかけるけど、藤堂先生は振り向くことなく部屋を出て行ってしまった。










それから、祥子さんに点滴を入れてもらって1人になると、わたしは泣きながら寝てしまっていたようで、




ピロリン♪




LIMEの通知音で目が覚めた。





 "ひなの何時に退院する?明日大学来る?"





LIMEを送ってきたのは夏樹くん。

前期の講義はもう終わってるけど、大学には毎日行って夏樹と傑と勉強してた。

だから、昨日は1日入院になったことをグループLIMEで2人に伝えてあった。





"ごめん"
"今日退院できなくなったから明日も行けない"

既読2





すぐに既読が2になるってことは、夏樹と傑は今一緒なんだろう。

わたしも2人と一緒に勉強したかった……。





 "大丈夫か?喘息酷いの?"



"熱が上がっちゃって" 既読2

"藤堂先生に監禁された" 既読2

"テスト、受けれないと思う"





ぽんぽんぽんと返事を打って、最後は既読が付く前にLIMEを閉じた。



……はぁ。



口から吐いたため息が、今朝より熱い。

まだ2時間ほどしか経ってないけど、祥子さんが敷いてくれた氷枕もすっかり温くなってる。





ひな「ハァ……ハァ……ケホケホ……ハァハァ……ケホケホッ」





咳も出るし、身体もしんどい……。





ひな「ケホケホケホ……ハァハァ、ケホケホッ……ハァハァ、ハァハァ」





頑張っても頑張っても、わたしはいつもこうなんだ……。










***



*藤堂side





~食堂~



12時前、今日は少し早めの昼休憩。





藤堂「いただきます」





ひなちゃんから取り上げたノートを見ながら、1人食事をしていると、





神崎「藤堂先生~!」





神崎先生と悠仁が。





五条「お疲れ様です。ここ座っても?」


藤堂「もちろん。どうぞ」





悠仁は隣に、神崎先生は向かいに座る。





神崎「あれ。藤堂先生、元気ないですか?」





もう(笑)

神崎先生はすぐそうやって。





藤堂「うんー?わかる?(笑)」


神崎「わかりますよ!ひなちゃんと何かあったでしょ~」


藤堂「ははっ。正解」





と言ったところで、宇髄先生と工藤先生も見えて、2人は神崎先生の隣に座った。

タイミングよく黒柱が揃ったところで、ひなちゃんの話。





藤堂「ひなちゃん、今朝熱が上がっちゃって。1日入院させたら今日の昼には帰してあげようと思ってたのに、身体休めずこっそり勉強してたみたいで」





と、ひなちゃんが枕に隠してたノートを先生たちに見せた。





工藤「うわ。ひなちゃんのこのノート、教科書やその辺の参考書以上にわかりやすいじゃないですか。めちゃくちゃよく勉強してますね」


藤堂「でしょ?俺もそれ見てびっくりしたんだよ。本当に賢くて頑張り屋さんなんだよね」


宇髄「でも、身体のことは疎かなんだな」


藤堂「おっしゃる通りです。大学に入ってずっと気をつけてくれてましたが、試験前になると勉強で頭がいっぱいなのか、またいつものひなちゃんです。熱が上がってるのを隠してまだ勉強しようとするから、今朝はかなり叱ってしまいました……」


五条「すみません……相変わらず手のかかる子で……」


藤堂「俺は別にいいんだけどね。もはや手のかかる方がひなちゃんは可愛いくらいだし(笑)でも、このままだと苦労するのはあの子だから。自分の身体に向き合うことを覚えないと……」





と、話していると、



プルルップルルッ……



祥子ちゃんから呼び出しが。





藤堂「祥子ちゃん、どうした?」


祥子「藤堂先生、ひなちゃんが熱と発作で意識朦朧としてます!」


藤堂「吸入は?」


祥子「出来そうにありません」


藤堂「意識、まだあるにはあるんだね?」


祥子「はい。呼び掛けにはなんとか反応しています」


藤堂「わかった。すぐ行くから、そのまま声かけ続けて」


五条「……藤堂先生?ひなですか?」


藤堂「うん。また熱上がって発作起こしてるって。すみません、行ってきます!」





と、下膳をみんなに任せ、俺は急いでひなちゃんの部屋へ。










藤堂「ひなちゃーん?ひなちゃん、わかる?しんどいね、深呼吸できるかな」





祥子ちゃんに変わって背中をさすりながら手首を掴むと、ひなちゃんの身体がかなり熱い。





藤堂「祥子ちゃん体温は?」


祥子「39度6分です。食事を運んで来たらこの状態だったので、発作が起きてから10分以上経ってるかもしれません……」


藤堂「了解。祥子ちゃん点滴用意して。酸素もお願い。あと、解熱剤も」


祥子「わかりました」


藤堂「ひなちゃんしんどいね。先生の声わかる?ごめんね、ちょっともしもしするよー」





ぐったりしながら微かに目を開くひなちゃんは、かろうじて意識があるくらいで会話は出来そうにない。





ひな「ケホケホケホ……ハァ、ゲホゲホゲホッ……ハァハァ……」


祥子「藤堂先生、準備できました」


藤堂「ありがとう。酸素こっちもらう。祥子ちゃん点滴入れて」


祥子「はい」


藤堂「ひなちゃんマスク付けるからね、身体にしっかり酸素送ってあげようね。ゆっくり呼吸するよー」





と、処置を進めていると、





五条「藤堂先生!」





食事を終えたのか、悠仁がやって来た。





藤堂「五条先生、ちょうど良かった。今からこれ……手伝って」





と、タイミング良く来てくれた悠仁にすかさず解熱剤を見せる。

すると、悠仁はひとつ頷いて、





五条「ひな~、わかるか?」





ひなちゃんの手を優しく握り、ひなちゃんも悠仁の声に必死で目を開き反応する。





五条「意識保っててえらいな~。お熱高くて苦しいの、早く治そうな。そしたら、ゆっくり深呼吸してごらん……」





と言いながら、ひなちゃんの体勢を自然と変えるのは、さすが悠仁。

そして、





五条「吸って~、吐いて~……そうそう、ひな上手。しっかり酸素吸えてるから、このままゆっくり深呼吸続けるぞー……」





ひなちゃんの背中をさする悠仁から目で合図をもらい、サッとパンツをずらして座薬を入れた。





ひな「ハァハ……ッ……ぁゔ!……ゲホッ、ゲホゲホゲホッ……ハァハァッ……ハァハァ、ハァハァ……ゔぅ……!」





これは後でひなちゃんに嫌われるな~……。



なんて柄にもなく気にしつつ、





藤堂「ひなちゃーん。ごめんね、びっくりしたね」


五条「よしよし、大丈夫だぞ~。ちょっと気持ち悪かったな、よく頑張った!ひなえらいな~」





悠仁があやしてくれてる間、座薬が出ないようお尻の穴をしっかりと押さえた。

そしてその後、ひなちゃんの身体を仰向けに戻したら、悠仁がずっとひなちゃんの頭を撫でててくれて、残りの処置をしている間にひなちゃんは落ち着いて眠りについてくれた。


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