ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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トラウマの火種①

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——数週間後





ブーン……ゴォー……サァー……





ひな「ゲホゲホゲホッ……ゲッホ……ゲホゲホッ!!……ハァハァ……」


藤堂「ひなちゃんあと少しだよ。頑張って」





只今、お昼の吸入タイム。

昼と夜に毎日これをやらされるなんて、わたし本当にかわいそう。

もはや吸入が嫌だから早く退院したいって感じ。





ひな「ハァハァ……ケホッ…………ハァ……ハァ……」


藤堂「ひーなちゃーん?鼻つまんで欲しいの?」





ギクッ……





大人になってきたら、ネブライザーもマスクじゃなくてマウスピースになった。

これを疲れてきたからって口から離すと、藤堂先生に鼻をつまんで押さえられ、逃げられないようにされちゃう。

そうなるともう息ができなくなるから、





ひな「フリフリフリ……!!」





全力で首を振ってマウスピースを咥え直した。











藤堂「はい。ひなちゃんお疲れ様」





吸入終わりは相変わらずどっと疲れる。

なんなら、中学生の頃なんかより疲れがひどくなった気も。





藤堂「ひなちゃんはもう少し吸入上手になるといいんだけどな。吸入ってそんなに苦しくて疲れるものじゃないはずだけど……」





それはどうも、下手で悪かったですね!

まったく、藤堂先生は王子かと思えば鬼になって、また王子になって、鬼になって……。

昔に比べたら鬼になる頻度が高くなった気がするし、お願いだから王子様でいてくれないかな。





なんて思いながら藤堂先生と病室に戻ってきたら、軽く聴診だけしてもらい、





藤堂「胸の音はかなり落ち着いてきたね。発作も減ってるし、楽になってきたんじゃない?」


ひな「はい。そろそろ退院できますか?」


藤堂「うーん、それはまだかな。ひなちゃん、体重2kg落ちたの全然戻らないし」





うぅっ……

ほらまた鬼だ。

すぐ鬼の仮面被っちゃうんだから……。





ひな「頑張って食べてるのに増えないんです……」





と話してると、





コンコンコン——





「「ひなのー!」」





傑と夏樹がやって来た。





ひな「傑!夏樹!2人ともどうしたの!?来るなら言ってよ!」


藤堂「あれ?ひなちゃん聞いてなかったの?」


ひな「藤堂先生知ってたんですか?」


藤堂「今日2人がお見舞い来たいって言うから、いいよってね」


夏樹「は?ひなのにも今朝言っただろ?」


ひな「え?」


七海「LIMEしたよ?ひなの"待ってる"って返事くれてたじゃん」





あ……ほんとだ、そうだった。

さっきの吸入で疲れてすっかり忘れてた。





ひな「ごめん、忘れてた……」


夏樹「大丈夫かよ……まだ相当やばそうだな。また痩せてるしな」


七海「うん、痩せたね……さらに小さくなった」


ひな「もう!2人ともお見舞い来てそんなこと言わないで!」


藤堂「ははっ。みんな仲良いね。そしたら、僕はこれで失礼しようかな。あ、何か飲み物でもいる?2人手ぶらで来たんでしょ」


夏樹「いや、下のカフェでも行こうかなって思って来たんだけど……つってもあれか、ひなのカフェとか行っちゃダメな感じだった?」


ひな「え、行きたい!!藤堂先生、行ってもいいですか?」


藤堂「1、2時間なら行ってきていいよ。しんどくなりそうなら戻っておいで」


ひな「わかりました!!」





と、ベッドから降りて行こうとすると、





藤堂「あ、ひなちゃん待って。カフェ行くんだったら……はい、これ使って」





と、藤堂先生から渡されたのは、黒く輝くクレジットカード。





ひな「え……ブ、ブラッ……これ、藤堂先生のカード……?」


藤堂「うん、そうだよ」





そうだよって……



五条先生も買い物の時はいつもブラックカードで支払いしてるから、ブラックカードがどういう物かはもう知ってる。

それをスッと出して、"はい、千円あげる"みたいな感じで渡してきたけど……



いやいや、えぇっ!?





ひな「も、申し訳ないです……!わたし、五条先生にもらってるお小遣いありますし!」


藤堂「いいのいいの。せっかくだからね。3人ともそれで好きなもの買って、ゆっくり話しておいで」


七海「やったー!さっすが悟くん!ありがとう!」





いや、傑!少しくらい遠慮しなよ!

……って、ん……?

傑、藤堂先生のこと悟くんって言った?

そういえば、2人って今日初めて会うはずなのに、全然違和感なく馴染んでる……。





藤堂「いいえ。ひなちゃんまだ疲れやすいから、無理だけさせるなよ。もし人多かったら、買うだけ買って病室戻って来な」





え?

藤堂先生の話し方、突然変わった……。





七海「Got it!! ひなの、行こう!」


ひな「え?あ、う、うん!藤堂先生、ありがとうございます……!」





と、わたしたち3人は3階に入るカフェへ。










カフェにはそこそこ人がいるけど、混んでるというほどでもない。

各々好きな飲み物を買い、端の方のテーブルに着いた。





ひな「なんか、久しぶりだね!2人とも来てくれてありがとう」





最後に3人で会ったのがテスト前で、カフェでお茶なんてするのは数ヶ月ぶり。

病室からも出てなかったし、こうして2人と会って話せるのがうれしい。





夏樹「ひなの、身体どう?大丈夫なのか?」


ひな「良くはなってきてるの。ただ、退院はまだ無理だって。喘息治して体重増やさなきゃ。貧血もあるし」


七海「夏休み中には退院できそう?」


ひな「できるように頑張る。でもきっとギリギリになるよ。ごめんね、3人で夏休み遊ぼうって言ってたのに、ずっと入院で……」


夏樹「気にすんな。また来年はいっぱい遊ぼう。な?」


ひな「うん、ありがとう。あ、そういえば夏樹、再再試いけたの?」


夏樹「なんとか……」


七海「ひなのは入院しながら再試1つだったのにね。再試2つも落とすって(笑)」


夏樹「なんだよ、2人が頭良過ぎんだよ!」


ひな「わたしは良くないよ。傑は再試ひとつもなくてすごい!」


七海「成績悪いと悟くんにぶっ飛ばされそうだから、それなりに頑張った(笑)」





と、まずはお互いの近況報告から始まり、





ひな「えぇ!?藤堂先生って傑の叔父さんなの!?」


夏樹「今頃かよ。藤堂先生から聞いてなかったのか?」


ひな「聞いてないよ!苗字も違うし全然気づかなかった!」


七海「母親が悟くんと姉弟だからね。結婚して苗字変わったけど、旧姓は藤堂だよ」


ひな「そっか、通りでいろいろと……そういうことだったんだね……納得した!」


七海「納得したってなに(笑)」





と、傑と藤堂先生のびっくりな関係も知り、





「「はぁ!?嘘だろ!!?」」


ひな「しーっ!!ちょっと……!2人とも声大きい……っ!!」





今度は何の話かというと……





七海「ひなの、本当に1回もないの……?キスしたこと」


ひな「あああ、あるわけないじゃん……っ!ななな、ないよ、ない!キ、キキっ、キス……/// したことなんて……っ!!!」


夏樹「いや、落ち着け。どんだけ顔真っ赤にしてんだ、ガキかよ」


七海「キスだよ?キス。ひなの、キスって何かわかる?」


ひな「そのくらいわかるってば……っ!!」





どういう流れだったか、傑はアメリカに彼女がいるって話から恋バナになって、夏樹もバイト先で彼女ができたなんて言うもんだから、必然と次はわたしの番。

そしたら、なぜかこんなことに……。


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