ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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初めの一歩①

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*ひなのside





——3週間後





ひな「藤堂先生、ありがとうございました」


藤堂「いい?大学が始まってもぼちぼちやるんだよ。調子が悪い時はちゃんと休むこと。くれぐれも無理はしないように。約束ね」


ひな「はい、わかりました」


藤堂「うん。そしたら、また定期健診で」





夏休みが終わる数日前、わたしはようやく退院できて、入院生活から解放された。










はぁ~、やっと家に帰って来られた!





長い夏休みもあっという間だったな。

なんてセリフを口にするつもりだったのに、毎日毎日病室で過ごして、あまりにも長く感じる夏休みだった。

それでも、夏休みを数日残して退院できたから、まぁ良しとしなきゃだよね。

と、リビングのソファーに座り込み、久しぶりの家の空気を味わうように深呼吸。

すると、一緒に帰ってきた五条先生が、





五条「ひな、晩飯までちょっと横になっとけ。帰ってくるだけでも疲れただろ、休んどいた方がいいぞ」





と言って、キッチンで夕食作りに取り掛かろうとしてる。





ひな「あ、大丈夫です!わたしも手伝います!」





と、ソファーを立つと、





五条「いいから。いきなりぶり返して病院戻りたいのか?」





と言われてしまい、ここは言う通り休んでおこうと、





ひな「はい」





大人しく返事をして寝室に来てみたら、





……え?

あ、あれ??





寝室には、五条先生のキングサイズのベッドにわたしのシングルサイズのベッドがあった。

はずなのに……





わたしのベッド……どこ……?





部屋の真ん中に五条先生のベッドがドーンとあるだけで、わたしのベッドがなくなってる。





えぇ!?なんでっ!!





ということで、わたしはすぐさまキッチンへ。





ひな「ご、五条先生!!」


五条「なんだ、そんなでかい声出して。病み上がりだろ、どうしたんだ?」


ひな「わたしのベッドがない!!」


五条「あぁ……ひなのベッドは入院してる間にゲストルームに移した」





あ、なんだ、そういうことだったのか。

ゲストルームに……って、

えっ?

ゲストルームに移したって……





ひな「どういうことですか!?どうしてゲストルームに持って行っちゃうの!?」


五条「前みたいに、夜中に発作が起きたりするかもしれないだろ。その時すぐ隣にいる方がいいと思って」


ひな「すぐ隣って、ベッドが違うだけで今までもすぐ隣でしたけど……」


五条「真横にいる方がすぐ気付けるし処置も早いだろ?それに…………そろそろ一緒に寝てもいいかなと」





えっ……?

一緒に……、寝る?

五条先生と、一緒に、寝る……?





五条「……ダメだったか?」


ひな「え!?」


五条「同じベッドで一緒に寝るの、嫌だったか?」


ひな「い、いえ!そ、そんなことは!!」





ないんだけど。

五条先生と一緒に寝るのがダメなんて、嫌なんて、そんなわけないんだけど。





五条「そうか、よかった。んじゃ、そういうことで」





これから毎晩、五条先生と一緒に寝るなんて……





ひな「ははは、はいっ……//」





どうしよっ……///!!










***



*五条side





ひなのやつ、動揺し過ぎだろ……。

ベッド退けるのまだ早かったか?





退院して帰ってくるなり、自分のベッドがないことに気づいたひなは大騒ぎ。

元々、ひなのベッドはいずれゲストルームに持っていくつもりだった。

付き合った当初からそのうちにと考えてはいたが、あまりにひなが初心なんで、もう少し大人になってから……とタイミングを計ってた。

ただ、この前夏樹に言われたことが割と図星で、あの後、藤堂先生からも、





『悠仁がひなちゃんと一線を置いてるのは、ひなちゃんを思うのが半分、自分の理性を保つのが半分でしょ。夏樹の言う通り、こっちから引っ張ってあげないと、ひなちゃんはいつまでも女の子のままだよ。悠仁もそろそろ男になっていいんじゃない?』





なんて言われたんで、まずは一緒に寝るところから始めてみるかと、入院してる間にひなのベッドを移動した。

そしたらひなはあの反応。

何を想像したのかしてないのか……

こんな調子で大丈夫か?










***



*ひなのside





そして、その夜。





五条「……寝れないか?」


ひな「……」


五条「ベッド、やっぱり別々の方がよかったか?」


ひな「……」


五条「ひーな、起きてるだろ?何も言ってくれないと俺不安になるぞ」





熱が出たり発作が起きたり、これまでにも突発的に五条先生と寝ることはあったけど、こんな冴えた状態で同じベッドに寝るのは初めて。

一足先にベッドへ入ったものの、どうしていいかわからず端の方にいると、





五条「何でそんな端にいるんだ。もっと真ん中で寝たらいいだろ、落ちるぞ」





五条先生はわざわざこっちからベッドに入って来たので、慌てて反対の端まで行こうとしたら、





五条「ストップ。それ以上そっち行くな」





と、腕を掴まれた。

で、何を言われるでもされるでもなく、





五条「ほら、寝るぞ」





そう言って、五条先生は仰向けになり、ベッドの中で手を繋いでくれて……



20分ほど経った今。

緊張して寝付けずにいると、





五条「ひーな、起きてるだろ?何も言ってくれないと俺不安になるぞ」





って、五条先生に寝てないことがバレてしまった。





五条「恥ずかしいなら手握って返事してくれたらいいから。Yesなら1回、Noなら2回。いいか?」





そう言われ、



……ギュッ



と、五条先生の手を握る。





五条「ん、ありがとう。そしたらもう一回聞くぞ。寝れないのか?」





ギュッ……





五条「俺と一緒に寝てるせいか?」





ギ……、ギュッ、ギュッ……





五条「ん?今Yesって言おうとしただろ笑。俺と寝るのは嫌じゃないけど、緊張して寝られないってか?」





ギュッ……





五条「ははっ、そうか。まぁいきなり過ぎたよな。黙って変えて悪かった、びっくりさせたな。でもそんな緊張しなくて大丈夫だから、力まないでリラックスして」





と、今度は五条先生がわたしの手をギュッと。

そして、





五条「……なぁ、ひな。好きな人の隣で寝るって本当幸せだな。俺、ひなとずっとこうして寝たかったんだ。ひなはまだ緊張するかもしれないけど、俺は仕事の疲れも吹っ飛ぶくらい落ち着く。嬉しい」





って。





……そっか。

五条先生、ずっとこうしたかったんだ……。





"恋人らしいことしたいんじゃない?"
"五条先生、ずっと待ってるんだと思う"





五条先生の言葉に夏樹の言葉をふと思い出す。





藤堂先生は気にするなって言ったけど、夏樹が言ったこと合ってるじゃん。

わたしって、五条先生にたくさん我慢させてるんだな。





はぁ……





夜更けに考え事をすれば、ネガティブになるのなんて100%。





ひな「五条先生……」


五条「ん?」


ひな「ごめんなさい……」





そう呟いた声が震えてるのを、五条先生が逃すはずなく、





五条「ひな?」





繋いだ手はそのままに、仰向けだった体をわたしの方へ向けた。





ひな「わたし、恋人失格です……五条先生の彼女だなんて、わたしにそんな資格ないです……」


五条「は?何言ってんだ、ひなは俺の彼女だろ。どうしてそんなこと言うんだよ……」





五条先生のため息混じりな声は、どこか悲しくて、切なくて、苦しそう。





ひな「わたしは何もできないから。手を繋いだりハグしたり、彼女なのにできないんです」


五条「できないもなにも、手なら今繋いでるだろ」





そう言いながら手をギュッとされると、わたしの胸もギュッと……。





ひな「繋いでるんじゃなくて握ってもらってるの。こうして手を繋いでくれるのはいつも五条先生からで、頭を撫でてくれるのも抱きしめてくれるのも全部五条先生。夏樹と傑に言われました、自分から手繋いだことある?って。そんなのないですよね。ないんです……」





と言うと、





五条「ひなはそれじゃ嫌なのか?」


ひな「ぇっ?」


五条「別にどっちからなんて関係ない。俺が繋ぎたいから繋ぐ。ひなのこと抱きしめたいから抱きしめる。それじゃダメか?」





ぎゅっ……





五条先生はわたしをそっと腕の中へ。


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