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初めの一歩②
しおりを挟むひな「五条先生……」
五条「夏樹と傑に何言われたか知らないけど、俺は何も不満に思ってないぞ。俺が抱きしめると、ひなは照れながら嬉しそうにしてくれる。手を握っても、頭を撫でてもそう。ひながそうやって俺を受け入れてくれるだけで、俺はいつも嬉しいんだから」
ひな「でも、わたしたち恋人なのに、これじゃあ恋人じゃないみたい……。恋人っていうのは、その……」
五条「キスやハグするだけが恋人じゃないだろ?」
ひな「ぇっ……?」
五条「はぁ……あいつらに何吹き込まれたんだ……。今のが図星って、あんな発情期の猿みたいな男どもの話鵜呑みにするなよ……」
ひな「で、でも……」
五条「でもじゃない」
ひな「でも……っ、夏樹たちが言ったこと合ってるの。わたし触れられないんです。五条先生は恋人なのに、なぜか自分からは触れられなくて……今日だってせっかく一緒に寝るっていうのに離れようとしちゃうし……五条先生のこと本当に好きなのに……グスン」
溢れた涙を誤魔化すように五条先生の胸へ顔を埋めると、
五条「ひな……」
五条先生は、わたしをもう一つ深く抱きしめた。
五条「ひなは俺が初恋なんだ。人に対して臆病な時期もあった。だから触れたくても触れられないなんて、そんなこと気にしなくていい。何も焦らなくていいんだぞ」
ひな「でも……グスン」
五条「それに恋愛なんて人それぞれだろ。普通はどうとか、そんなもん最初からない。ひなと俺と、2人のペースで前に進めばいいんだ。ほら、今日から毎晩同じベッドになっただろ?こうして少しずつ、ひなの言う恋人らしいこと出来るようにしていこう。な?今日はその初めの一歩」
ぽんぽん……
ひな「……でも、本当にそれでいいの……?五条先生はわたしに合わせて我慢してるんじゃ……」
五条「も~、ひな(笑)さっきからでもでもって、そのでもは何回言えば気が済むんだ。夏樹や傑に言われたことはすぐ信じるくせに、俺の言うとこはそんなに信用ないのか?(笑)」
ひな「ち、違う……そうじゃないけど……」
五条「そんな不安にも心配にもならなくて大丈夫。俺は我慢してるんじゃなくて、ひなを大事にしてるだけ。ひなのことは本当に大事にしたい、大好きだから」
ぎゅっ……
ひな「五条先生……///」
五条「……ん。よし、もう大丈夫だな。そしたら寝るぞ。おやすみ、ひな」
ひな「お、おやすみなさい……///」
こうして、わたしの長い長い、長かった夏は、五条先生の腕の中で幕を閉じた。
***
そして、大学では後期の授業がスタートし、
夏樹「やべっ!教科書忘れた!」
七海「は?」
ひな「また~?」
夏樹「ごめん!ひなの見せて!!」
ひな「いいけどこれで何回目?さすがに忘れ過ぎ!」
七海「夏樹さ……そうやってひなのに見せてもらいたくて忘れてる?」
夏樹「んなわけねーだろ!五条先生に殺されるわっ!!そういう冗談はマジやめろって……」
わたしは相変わらずな2人と、
七海「夏樹、今日バイトは?」
夏樹「ない!」
七海「お、じゃあカフェ行く?」
ひな「行きたい!!」
夏樹「んじゃ、隣町のカフェにしようぜ。傑、車乗っけて」
七海「はいはい(笑)」
毎日楽しく大学生活を送ってる。
時々調子が悪い時は、
ひな「夏樹、傑……」
夏樹「うん?」
七海「どした?」
ひな「ごめん、今日は残りの講義休もうかな。ちょっとしんどくなっちゃって……」
夏樹「うん、そうしな。講義録音しとくな」
七海「1人で家帰れそう?」
ひな「うん、大丈夫。ありがとう」
って、無理せず講義を休んだり、
ひな「五条先生……」
五条「ん?……どうした、しんどいのか?」
ひな「大学、今日は休もうかな……って……」
五条「よく言ったな、それでいいんだぞ。どうする?藤堂先生に診てもらっとくか?」
ひな「……コクッ」
五条「よし、そしたら一緒に行こう」
と、五条先生にも自己申告し、
藤堂「うん、ひなちゃん大丈夫だよ。季節の変わり目で少し疲れが出てるけど心配はないからね。お薬5日分だけ出しとくから、それ飲んでゆっくり休んで」
ひな「点滴はしなくていいですか?」
藤堂「食欲はどう?」
ひな「少し落ちてますけど食べれてます。今朝は五条先生が雑炊を作ってくれて、お茶碗一杯分食べました」
藤堂「うん、それなら大丈夫。点滴はしなくていいよ」
ひな「よかった……」
藤堂「ひなちゃんがしっかり自己管理してくれてるから、具合が悪くなっても軽くて済むの。僕も最近は安心してるし、この調子でね」
ひな「はい……!」
大きく体調を崩すこともなく、順風満帆な日々を送ってる。
それに……
***
*五条side
ひな「五条せーんせっ!」
ぎゅっ……
……っ!!?
風呂上がり、キッチンで水を飲んでたら背後からひなが抱きついてきた。
五条「ちょっ!!ひな……っ//」
ひな「へへっ。びっくりした?」
振り返ると、俺にしがみつくひなは上目遣いでいたずらな笑顔を見せる。
少し前まではこんなことできないなんて言ってたのに、今ではすっかりひなから抱きついてくるようになった。
キッカケはある大雨の日——
その日は夜中に雷がゴロゴロ鳴っていて、ひなは終始ビビりっぱなし。
ピカッ!!
ひな「ビクッ!!」
ゴロゴロゴロ!!
ひな「……っ!!」
五条「ひな、そんなビビらなくても大丈夫だ。別に落ちたってひなの上には落ちて来ないから」
と言っても、ひなは昔と変わらず小さく震えながら俺にしがみついて離れない。
五条「何がそんなに怖いんだ。雷にここまでビビる子なんか小児にもいないぞ?ってか、ひな潜り過ぎ。もうちょっと顔出さないと喘息出る」
と、ひなの顔が俺の胸から腹の方へどんどん下がって行くので、布団をめくって一旦ひなの体を引き離すと、
ひな「やだっ……!離れないで、怖い……グスン」
と、泣きながらまた抱きついてきた。
五条「もう、わかったから。よしよし、大丈夫大丈夫。ったく、こういう時は抱きついてきてくれるんだな(笑)」
ひな「え?グスン」
五条「ひな今思いっきり俺に抱きついてるぞ?ハグできないって、めちゃくちゃしてきてるけど(笑)」
ひな「……ハッ!!//」
——ということがあって以来、ひなの中で何かがスッと解けたようで、今ではこうしてよく抱きついてきてくれる。
でも、おかげで俺は……
五条「こらひなっ……!水飲んでる時にいきなり抱きついてきたら危ないだろ?ったくもう……」
ひな「ぎゅーしたい気分だったの。……ダメ?」
と、首を傾げられ、
やばい……可愛すぎる……
毎度拷問でも受けてるのかと思うほど、必死で理性と戦う羽目に。
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