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ひなのウイルス③
しおりを挟む*五条side
コンコンコン——
藤堂「悠仁、入るよー?」
あれから、キッチンは藤堂先生が片付けてくれるというので、俺はお言葉に甘えてゲストルームで休んでた。
五条「藤堂先生ありがとうございました。掃除任せてしまってすみません。……それは?」
そして、キッチンの掃除を済ませて来てくれた藤堂先生の手には、何やら美味しそうなものが。
藤堂「ひなちゃんが作ろうとしてたうどん。代わりに作ってきたよ。風邪引いてようがなんだろうが、悠仁は食欲あるでしょ」
と、サイドテーブルに美味しそうなうどんを置いてくれた。
五条「うまそう……何から何まで、本当ありがとうございます。あ、ひなはもう昼飯食いました?たぶん、朝も食べてないと思うんです」
藤堂「ううん。ひなちゃん、さっき寝ちゃったの」
俺がゲストルームにいる間、ひなはひなでリビングに休ませてた。
そしたら、藤堂先生が片付けて料理してくれてる間に寝落ちしたらしい。
藤堂「ちょっと疲れちゃったんだね。ひなちゃんには後でまた食べさせておくから、悠仁はそれ食べな。どうせお腹ペコペコでしょ(笑)」
五条「腹減ってるのバレてたんですね。んじゃ、遠慮なく……いただきます」
と、実は起きてからめちゃくちゃ腹が減ってた俺は、勢いよくうどんを頬張った。
藤堂「それで、熱は?高いの?」
五条「いや、熱は大したことないですよ。咳が酷いから、子ども達に移すとまずいなって休みもらっただけで。最初37度7分でしたけど、パブリン飲んで今はもう7度ないです」
藤堂「やっぱりね。悠仁がそんな熱出すはずないと思ったんだけど、『五条先生のおでこ触った時、わたしが39度出た時のおでこより熱かった!夏のアスファルトくらい!すごく熱出てるんです!』って、ひなちゃんが必死に説明してきてさ(笑)」
五条「自分が熱ある時のおでこと比べてどうすんだ……熱ある時に自分で触っても熱く感じないに決まってますよ、手も熱いのに。誤診どころじゃないですね」
藤堂「顔も真っ赤だっていうから、それについては、熱のせいじゃないよって。ひなちゃんが一生懸命心配してくれるのが嬉しくて可愛くて、照れてたんだよって言っておいたから」
……!!?
五条「ちょっ、変なことひなに言わないでくださいよ!!」
藤堂「何が変なの、図星でしょ?"俺に夢中になりすぎだ"なんて、格好つけてよく言ったよ。夢中になってるのはどっちなんだか」
……っ///
五条「そんなニヤニヤと俺を見ないでください……」
藤堂「ははっ。まぁ、悠仁が大したことなくてよかった。パブリン飲んだなら薬は必要ないかな?いくつか持ってきたけど……って、そうだ悠仁。救急箱どこやった?ひなちゃんがどこにもないって探し回ってて、俺もいつものところ見たらなかったけど」
五条「あぁ、すみません。救急箱は俺の部屋に移したんです。ほら、ひながまた勝手に市販薬飲むといけないので、隠しておこうと」
藤堂「なるほど、そういうことだったのね。それなら了解」
五条「もしかして……ひなって救急箱探してて火傷しました?」
藤堂「残念ながら、正解だね」
五条「そうだったんですね……」
藤堂「まぁ、傷が残るほどではないと思うから大丈夫。自分を責めるのは禁止だよ。ひなちゃん、さっきもまた悠仁にごめんって言わせたって、ちょっと落ち込んでたんだから」
五条「はい、すみません……。あ、そうだ藤堂先生。これは先に謝らせてください。たぶん、ひなもう1回風邪引くと思います。俺の、移ってるかと……」
藤堂「それなら大丈夫。そうなるかなって、ひなちゃんの薬と点滴も持って来てあるから」
五条「さすがです、ありがとうございます。それなら、病院行かなくて済みそうですね」
藤堂「あ、そのかわり今夜泊まるね。朝には熱出すと思うから」
五条「もちろん。むしろ、お願いします」
***
*ひなのside
——翌日
ひな「ゴホゴホッ……ゴホッ……」
藤堂「ひなちゃん、息吸ってー……」
ひな「スー……」
藤堂「はい、吐いてー……」
ひな「ハー……ゴホゴホッ!」
昨日は藤堂先生が家に泊まってくれた。
とはいえ、五条先生は夜にはすっかり元気になって、
五条「なっ?すぐ治るって言っただろ?俺、最強だから」
って、すっごいドヤ顔で自慢してくるから、
ひな「最強なら、そもそも風邪なんか引きませんよ」
嫌味を言ってやったら、
五条「あのなぁ、俺は毎日風邪引いた子どもを何十人も相手してるんだ。でも、今まで移ったことなんて一度もなかった。それがひなの風邪は移るなんて、"ひなのウイルス"が強烈過ぎなんだよ。ってことで、しばらく気をつけとけよ。ひな、絶対もう1回熱出すぞ?」
ひな「絶対大丈夫です。元はと言えばわたしのウイルスだし、免疫ついてます!というか、勝手に人の名前をウイルスに名付けないでください……」
藤堂「元々ひなちゃんのウイルスでも、残念ながら悠仁の体内でより強力になったウイルスなんだよね」
五条「今度の方がきついぞ。最強の身体で暴れたウイルスが、最弱の身体に入ったんだから」
ひな「さ、最弱って……ひどいっ!わたしはもう弱くないし、それと移ってないですから!」
五条「移ってるに決まってんだろ。咳してる時そばにいたんだから」
なんて話してたけど、今朝、わたしはきっちり風邪を引いて、只今藤堂先生の診察中。
藤堂「うーん……ひなちゃんちょっとつらいね」
ひな「ゴホゴホッ……コクッ……しんどぃ……」
五条「だから言っただろ……」
藤堂「これ以上しんどくなる前に点滴しとこうか」
ひな「フリフリフリ……点滴はしとかない……ゴホゴホッ」
五条「こら、しとかないじゃない。じゃあ病院行くか?せっかく藤堂先生泊まってくれて、点滴も持って来てくれたのに」
あぁ……なるほど。
藤堂先生が昨日泊まってくれたのは、五条先生のためではなくて、わたしのためだったのね。
はぁ……そうですか、そういうことでしたか。
ひな「ゴホゴホッ……病院行きたくないぃ……グスン」
五条「だろ?家にいたいだろ。ほら、そしたらちょっとだけ頑張ろう。点滴頑張ったらアイスあげるから」
アイス……
ひな「パーゲンダッツ……?グスン」
五条「パーゲンダッツあるぞ。しかも、ひなの好きなストロベリー。5個買ってある」
ひな「……早く点滴するぅ……」
五条「は?一瞬で気変わるのかよ……ったく、子どもか」
藤堂「あははっ。ひなちゃんお熱あるからアイス食べたいね。点滴、すぐしてあげるからね」
と、見事アイスに釣られたわたしは、ちゃんと点滴をしてもらって、冷たくて美味しいアイスを、今度はわたしが五条先生にあーんと食べさせてもらった。
***
それから、風邪が治るまでの1週間ほどは、五条先生と藤堂先生が交代で家にいてくれて、なんとかクリスマス前に復活。
そして、迎えたクリスマスイヴには、黒柱と夏樹と傑、みんなうちに集まってパーティーが開催された。
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