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決行日②
しおりを挟むガチャッ——
藤堂「あ、悠仁おかえり。サンタさん今年も無事に……って、どうかした?」
五条「……」
藤堂「悠仁?」
五条「……しました」
藤堂「え?」
五条「……してしまいました」
藤堂「は?」
五条「……しちゃったんです」
藤堂「しちゃったって、何を?」
五条「……ひなに…………キス……を…………」
「「えぇっ!!?」」
一拍、二拍と間があって、先生たちが一斉に驚きの声を上げた。
で、俺はこの上なく大きなため息をついた。
五条「ひなの寝顔がかわいくて……かわいいなって見てただけなんです。プレゼント置いても気付かずスヤスヤ眠ってるのが愛おしくて……気づいたらおでこにキスしてしまいました。はぁぁ……どうしよう……」
ため息をつくたびにソファーへ身を沈めながら、事の顛末をみんなに話す。
神崎「えっとー……寝てる彼女にこっそりキスするって、至極当然のことだと思うんだけど」
工藤「だよな。何をそんなに項垂れてるんだ?」
五条「だって、ひなはまだキスの味を知らないんですよ?ひなの大事なファーストキスなのに、今までずっと堪えてたのに。はぁ……こんなに飲むんじゃなかった……ひな病み上がりだし抑えてたつもりなんですけど、完全に酔ってました……」
藤堂「いや、今日そんな飲んでないし酔ってないから。お酒のせいにはしないの」
神崎「そうそう。五条先生が本気で酔ってたらキスどころか襲ってるよ(笑)」
藤堂「それにファーストキスって言ってもおでこでしょ?唇奪ってないなら大丈夫。だから、聖なる夜にそんな負のオーラ出さないで(笑)」
五条「ひなにとっては、おでこでもこれが初めてのキスなんです。それを寝てる間に勝手に奪うなんて……」
工藤「五条先生、そんなロマンチストだっけ。ひなちゃんの純度が高すぎて感化されたか」
五条「はぁ……俺せっかく決めてたのに……ひなの初めてのキスは、今度の誕……」
「「ん?」」
あっ……
神崎「決めてたって?」
しまった……、まずい……。
五条「いえ、なんでもありません……」
宇髄「なに、ひなちゃんといつキスするか決めてたのか?」
最悪だ、墓穴掘った……。
五条「いや、そんなことはないですよ……あっ、俺そろそろ寝ようかな……」
藤堂「こらこらこら」
工藤「はいはい、逃さなさないよー!」
こんなにわかりやすくソファーを立って意味があるのか。
100%ないとわかっていたけど、120%なかった。
工藤先生に肩を組まれて、敢え無く元の位置にカムバック。
藤堂「ねぇ、悠仁~?ひなちゃんとキス、しようと思ってたんだ~?」
神崎「えっ!いつするの?いつするつもりだって!?」
猫なで声でにまにま目を細める藤堂先生と、しっぽを振る犬のように前のめりで目を輝かせてくる神崎先生。
もう完全に楽しまれてる……
五条「……言いません」
工藤「言いませんってことは、決めてはいたんだな!」
……っ。
五条「工藤先生、ずるいですそれは……」
宇髄「で、いつなんだ?キスの決行日は」
五条「け、決行日って……」
あぁ、これはもうどうしようもない。
ここから上手く逃げ出す方法が一切見当たらない。
クリスマスにリビングの真ん中で、どうして俺はこんなことに……
はぁ……
と、ため息をついたら、
藤堂「ひなちゃんの誕生日でしょ。ひなちゃんの20才の誕生日に、キス、するつもりなんだね」
と、藤堂先生が。
五条「俺、墓穴掘りましたね……」
藤堂「まぁ、悠仁に旅行の相談された時から、そんなことも考えてるんだろうなって思ってたけどね」
神崎「誕生日、ひなちゃんと旅行行くの?」
五条「そのつもりで考えてます」
藤堂「1泊だけどね。温泉旅行に連れて行ってあげるんだって」
神崎「わぉ、エッチ」
工藤「神崎先生(笑)」
宇髄「そうか。ひなちゃんもついに20才になるんだな。20才の誕生日がキスの決行日とは、ひなちゃんが成人するまで我慢したわけか」
五条「はい……誕生日にしてあげられたら、ファーストキスがちゃんと良い思い出になるかなと。あ、でも、その場の雰囲気やひなの様子次第と言いますか……必ずではないです。だから、ひなには絶対に言わないでくださいね。そもそも、温泉旅行もサプライズにしたいので」
宇髄「言われなくてもひなちゃんには言わないから安心しろ。ちなみに、キスした後は処女も奪うつもりか?」
五条「いえ、それはさすがに無理です。ひなの準備が何も追いついてないので。それは本当にまだ……」
宇髄「そうだな。でも、ひなちゃん自慰すること知らないだろ?だから、sexは早めに出来るようになればと思ってるんだ。ここからは医者として話すが、ひなちゃんのお腹、生理がきちんとあってもやっぱり少しずつ溜まってる。前にも言ったが、月一の生理だけじゃそのうち治療が必要になるぞ。俺が言いたいこと、わかるな?」
それはもちろん、わかってる。
生理周期が安定して、溜まる一方だった分泌液が月に一度は経血と出るようになったおかげで、お腹は今のところ落ち着いている。
とはいえ、どうしても僅かに残る分が積み重なって溜まってしまうので、いずれまた治療が必要になってくる。
けれど、ひなにとってあの治療は心身ともに負担が大きい。心も身体も大人になるにつれなおさらそうだ。
だから、俺とひなが恋人同士の夜を過ごせるようになれば、そこで粘液が排出されて、お腹も綺麗な状態が保てるんだけど……という話。
このことは、夏の旅行でひなが倒れて診てもらった時に言われてた。
今溜まってる量から逆算すると、1年後、次の夏までは持たないだろうってことだったから、このままだと半年くらいでひなは治療が必要になると思う。
俺も治療は避けてあげたいが、かと言って、ひなとの営みを無碍に粗末にするわけにはいかなくて……
五条「そのことも重々承知してます。でも、ひなの初めてはそれこそ大切にしてあげたくて……。過去のこともありますし、sexが嫌いになるなんてことには絶対にしたくないので、今はまだ、最後まではとても……」
宇髄「あぁ、それでいい。慎重になるのもわかるから、決して焦れということではない。ただ、あんまり大事にして遅くなるのもよくないからな。上手く舵を取ってやれよ」
五条「はい……まぁ、遅かれ早かれ、最終的には溺れるほどsex好きにさせるので大丈夫です。ひなが女になった暁には、嫌と言うほどかわいがってやろうかと」
宇髄「五条、お前なぁ……(笑)」
神崎「やっぱりドSだな~。もう根っからのドS」
藤堂「ひなちゃんはひなちゃんでドMだからいいんだけど、仲良くしすぎてひなちゃんの身体を傷めることはないように。そんなことがあったら、主治医として怒るからね?(笑)」
五条「当ったり前ですよ。どんなに理性がぶっ飛ぼうと、ひなを傷つけるようにはしません。あ、そうだ。もうこんな話のついでなので、先生方に少しご相談したいことがあるんですけど……」
工藤「俺らに相談って?」
宇髄「何だ。もう今日は朝まで聞いてやるから、なんでも聞け」
そう言って、ワインをゴクリと喉に流し込む宇髄先生。
五条「ありがとうございます。その……実は、俺…………」
時刻は深夜3時。
この後俺たちは、プレゼントを抱えたひなが起きてくるまで、とんでもなくオトナな会話を終夜(よもすがら)繰り広げた。
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