ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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誕生日の温泉旅行①

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*ひなのside





ひな「五条先生、あれ何ですか?」


五条「温泉饅頭だ。うまいぞ、食うか?」


ひな「……ううん」


五条「ん?いらないのか??」


ひな「夜ごはん食べれなくなるといけないから……」


五条「夕飯までまだ時間あるから、1個くらい大丈夫だぞ?」


ひな「でも……」


五条「ひな。今日は何の日だった?」


ひな「今日は……」










2月29日。

4年に一度だけ訪れる、わたしの本当の誕生日。



4歳、8歳、12歳、16歳……



生まれて5回目の閏日を迎えた今日、わたしは20歳になった。



閏日生まれのわたしにとって、閏年に迎える誕生日はいつもより特別な気持ち。

そして、20歳という節目を迎える今年の誕生日は特別中の特別。

そんな大切な誕生日の今日、五条先生が温泉旅行に連れて来てくれた。










今朝は早くに家を出て、ゆっくりドライブをしながら5時間ほど。

到着したのは、山の中にある温泉街。

先に今日泊まる宿へ車を駐めて、荷物を預け、プレチェックインも済ませると、





五条「ひな」


ひな「はい」


五条「ん」


ひな「うん?」


五条「ん」


ひな「……うん??」


五条「いや、だから俺の顔を見つめるんじゃなくて……もう、ほら手」


ひな「あっ……// はいっ……//」





って、五条先生が差し出してくれた手をしっかり繋ぎ、温泉街をぶらぶら散策。



山や川に囲まれるノスタルジックな街並みの中には、お土産屋さんや食べ物屋さんがたくさんあって、昼は閉まってるけど射的屋さんなんかもある。

趣ある景色が広がる中、観光客の賑わう声も聞こえてくる、そんな街の中を五条先生とのんびり歩いていると、四角い蒸篭から湯気が立ち上がるお店を見つけた。

お店の前では数組のお客さんが何か美味しそうなものを食べていて、気になって五条先生に聞いてみたら温泉饅頭だって。










五条「ひな。今日は何の日だった?」


ひな「今日は……」


五条「今日はひなの誕生日。だから、今日と明日はひながやりたいことなんでもしていいんだぞ。……って、今朝言っただろ。温泉饅頭、食べたいんじゃないのか?本当にいらないのか?」


ひな「……本当は、食べてみたい。けど、お腹膨れちゃうのは嫌なの。五条先生のことだから、今夜のご飯は豪華なの用意してくれてるんでしょ?せっかくのご馳走、ちゃんと食べれなくなっちゃうかも」


五条「今日の晩飯はお楽しみだけど……よし。そしたら温泉饅頭は俺と半分にしよう。な」





ぽんぽん……





ということで、五条先生が温泉饅頭を1つ買ってくれて、





ひな「ん~!おまんじゅう美味しい!」


五条「だろ?出来たてなんか店に来なきゃ食えないんだから。1個食べてもよかったのに」


ひな「ううん。五条先生とこうして半分こするのうれしいからいいの」


五条「ん、そうか。……ほら、最後のひと口。あーん」


ひな「あーん。モグモグ……//」





って、2人で仲良くお饅頭を分け合った。










温泉饅頭を食べた後は、またぶらぶら散策。

神社をお参りしたり、お茶屋さんで試飲が美味しかった茶葉を買ってもらったり。

喘息があるから買えなかったけど、お香屋さんで好きな香りを見つけてみたり。

立ち並ぶお店を順に見てまわり、続いて立ち寄ったのは雑貨屋さん。



このお店には和柄の小物がたくさん売っていて、





このヘアアクセサリーいいな~。

こっちのハンカチもかわいい~。





と見ていると、ちりめん生地の小さながま口ポーチに目がとまった。





わぁ。このポーチ、かわいいなぁ。

リップ入れたり、薬入れるのにもちょうど良さそう。





と、さっそく使い道をイメージしていると、いつの間にか手に取ったポーチをじーっと見つめてしまっていて、





五条「それ、かわいいな。欲しいか?」





って、後ろから五条先生に声をかけられた。





ひな「えっ、あ、いえっ!」





五条先生がいることを忘れて見入っていたわたしは、少し慌てたようにポーチを元の位置に置く。





五条「気に入ったなら買ってやるぞ」


ひな「いいです、いいです。これは、大丈夫です」


五条「なんで。気に入った顔して見てたのに」


ひな「ポーチなら他にも持ってるので!あ、あっちも見てみましょう!」





と、五条先生の手を引いて、とりあえずその場から離れた。










そして、お店を出ると、





五条「なぁ、あれ本当によかったのか?ひなポーチよく使ってるだろ」





って、なぜか少し寂しそうな声の五条先生。





さっきのポーチ、わたしも本当はすごく欲しかったんだけど……





ひな「ダメになるまでは、今あるもの使います」





と言うと、





五条「……そうか。あ、ひなトイレ大丈夫か?そこの観光案内所のトイレ綺麗だから行っとこう。俺も行きたいから」





と、ここで一旦トイレ休憩。





ふぅ~。





女子トイレはいつでもどこでも並びがち。

観光地のトイレは特に多い。

そこまでトイレに行きたかったわけじゃないけど、いざ出始めるとなかなか止まらないおしっこに、





五条先生がトイレ行こうって言ってくれてよかった。

漏れそうなのに、恥ずかしくて行きたいって言えない……って、なるところだった。





と、胸を撫で下ろす。



そして、用を足し終わって、





五条先生、待たせちゃってるな……。





と思いつつも、せっかくのデートだからとリップを塗り直していると、





「ねぇねぇ! さっきの人みた? めっちゃかっこよかったんだけど!!」

「え、わかる!! 外にいた超イケメンだよね。背が高くて黒のダウン着てたさ」

「そうそう!! なんかすっごい綺麗な目だった。出た時まだいたら声かけちゃう??」





って、後ろからキャピキャピした声が。





背が高くて超イケメンで、黒のダウンに綺麗な目って……

絶対、五条先生のことだ。





何気なく耳にしたその会話が、わたしの胸をムズムズさせてくる。





五条先生っ……。





わたしは急いで外に出ると、待っていた五条先生の胸に、





ぎゅっ……!!





飛び込んだ。





五条「おっと……!おい、ひな走るな。したいことしろとは言ったけど走るのはダメだ。急にどうした?」


ひな「……」


五条「ひな?」


ひな「わたしの五条先生だもん……」





そう言って、五条先生の背中に回す手をギュッと握る。





五条「なぁ、ひなどうした。なんかあったか?」





体を離して顔を覗き込もうとする五条先生にまたギュッとして、





ひな「トイレで女の子たちがかっこいいって。五条先生のことだよ。後で声かけてみる?って言ってた……」


五条「は?なに、それで不安になって慌てて出てきたのか?」


ひな「コクッ……」





と頷いて、ぎゅっと抱きついたまま五条先生を見上げると、





五条「そんな顔しなくても、俺はひなしか見てないから。ひなもそうだろ?そんなことで不安にならなくて大丈夫だ」





ぽんぽん……





ってしてくれた五条先生の顔が、わたしだけに見せてくれる優しい笑顔で、胸のムズムズがスーッと消えてなくなった。

すると五条先生が、





五条「次、足湯行くか」


ひな「足湯?」


五条「ひな待ってる間見てたんだよ。ほら、ここに足湯ある」





と言って、観光マップを指差す。





ひな「行ってみたい!」


五条「ん、じゃあ行こう」





ということで、今度は足湯でひと休み。





五条「寒くないか?」


ひな「うん、あったかいよ」





足があったかいのはもちろんだけど、五条先生が腰に手を回してくっついてくれてるから、寒くなんてちっともない。





五条「たくさん歩いたな。ちょっと疲れただろ、大丈夫か?」


ひな「全然大丈夫です」


五条「今日も明日も旅行はまだまだ続くから、しんどくなりそうなら言うんだぞ」


ひな「はい」


五条「今14時半だな。15時になったらチェックインできるから、ここでゆっくりしてから行こう」





ということで、足湯でひと息つく間、五条先生の体に頭をこてんと預けた。










そして、足湯の後はいよいよお宿へ。

五条先生に鍵を開けてもらって部屋に入ると、





ひな「わぁ……すごい!!」





少し離れになったこの部屋は、ベッドも畳もある和洋室になっていて、露天風呂がついている。





ひな「五条先生、見て!外にお風呂ついてるよ!!」





大興奮なわたしはトコトコトコ……っと、さっそく部屋中をルームツアー。





「わぁ、中のお風呂も広いね!」

「このアメニティーいいやつだ!」

「クローゼット開けたら勝手に電気ついた!!」





と、いちいちコメントしてまわり、





ひな「ふぅ……!」





まるで一仕事終えたかのように、ソファーへぽすんと腰を下ろすと、





五条「ははっ。そんな動き回って疲れただろ。部屋、気に入ってくれたか?」


ひな「はい!とても!!こんな素敵なところにお泊まりできてうれしいです!」


五条「よかった。ひなが喜んでくれて俺もうれしい。夕飯まで少しゆっくりしよう」





五条先生もわたしの横に腰を下ろした。

と思ったら、





五条「ひな、これ」





突然、小さな紙袋を渡された。


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