ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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胸のざわつき②

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ひな「自転車とぶつかった後は、あまりはっきり覚えてないんですけど、ぶつかってこけて……それからすぐに立ったと思います。でも、立ち上がった時にはもう目のま……」





……っ。





ひな「目の前……」





……っ。





話の途中、突然、胸がザワッ……となって、言葉に詰まってしまった。





な、なに今の……。





五条「ひな?」


ひな「えっ?」





どうした?と、五条先生がすかさず反応してくるけど、先生たちにバレるわけにはいかないし、単なる気のせいかもしれない。





ひな「……あ、すみません。えっと、その……」





なんでもないようにして、とりあえず話を続けようとするも、





ひな「その、立った時には目の前にくるっ……、っ……く、車……」





……っ……!?





やっぱり胸がザワッとして、上手く言葉を運べない。





な、なにこれ……。





心臓から鳥肌が立つような、なんとも言えない奇妙な感じ。





気持ち悪い、怖い……。





そう思ったら、無意識のうちに五条先生の手を握りしめてて、





五条「ひなどうした?大丈夫か?」





やっぱりおかしい。見過ごさないぞ……?

と言わんばかりに、五条先生に顔を覗き込まれた。





ひな「……っ、大丈夫です!なんでもないです!」





ま、まずい……。





と思い、慌てて返事をしたら、





警察「立ち上がった時には、車が目の前にいたのかな?」


ひな「は、はい。そうでした!」





警察の人が代わりに答えてくれて、ここはひとまず誤魔化せたけど、





警察「ぶつかった後はどうなったか覚えていますか?」


ひな「ぶつかった後は、ええっと、痛いというか、身体にすごい衝撃……っ、……があって、えっと、えっと……」





事故のことを話そうと思えば思うほど、胸がザワザワ、ゾワゾワ、心臓を掻きむしりたくなるような感覚に襲われて、





五条「ちょっとすみません。ひなしんどいよな?」


ひな「フリフリ……だ、大丈夫」


藤堂「ひなちゃん少し疲れたね。休憩させてもらおうか」


ひな「だっ、大丈夫です。あの、それで、車とぶつかって、よくわかんないけどすごいおt……」





"キィィ"ィ"ーーー!!"





ひな「お、音が……っ」





"ドッシャーーーン!!"





ひな「して……ハァ」


警察「栗花落さん?無理に話さなくて良いですよ」


工藤「すみません。ちょっと今日はもうこの辺で……」


警察「えぇ、もちろんです」


ひな「そのあと……っ」


藤堂「ひなちゃん、もうお話終わりだよ。1回ゆっくり息吸ってみようか」


ひな「どうなっ……ハァハァ、たかな……ハァハァ」


五条「ひな?」


ひな「ハァッ、ハァッ……」


五条「ひな一旦落ち着こう、な?こっち見て?俺の顔見て?」


ひな「ハァハァ……わかんない……」


五条「うん、わかんないな。わかんなくなっちゃったな」


ひな「……ゎかんない……ハァハァ、もうわかんないよ……ごじょうせんせっ……」


五条「よしよしよし。大丈夫だ、大丈夫だぞ」





パニックに陥ったわたしは、五条先生に抱えられベッドへと移された。










ひな「ハァハァ……ハァハァ……」


五条「ひな、ゆーっくり深呼吸だぞ。ゆっくりゆっくり」





背中をさすってもらうけど、呼吸が全然上手くできない。





ひな「ハァハァ、ハァハァ……ケホッ、ケホッ、ゲホゲホ!!」





ついでに喘息の発作が誘発されてしまい、





藤堂「ひなちゃん、お口マスク当てるね」


工藤「腕もごめんな。ちょっとチックンするなー」





藤堂先生にネブライザーの煙を吸わされ、工藤先生に注射を打たれ、





ひな「ゴホゴホゴホッ、グスン……ハァハァ……ゲホッ……ハァハァ……」


五条「大丈夫大丈夫。少ししたら苦しいの治まるからな。泣いたらしんどいから、呼吸だけしっかり頑張るぞ」





と、先生たち3人掛かりで介抱してもらい、ようやく落ち着いた頃には疲れてぐったり。





藤堂「ひなちゃん落ち着いたかな?発作も起きてびっくりしたね。少し胸の音聴かせてね」





藤堂先生に聴診をしてもらい、





五条「緊張したし、久しぶりにたくさん話したから疲れちゃったな。よく頑張ってえらかった。お昼まで少し寝るか」





と言われ、もう1日終わった気分なのに、まだ午前中だった……と思いながら、ここで少し眠りについた。










***



それから、五条先生に起こしてもらってご飯を食べ、本を読んだり、リハビリがてら廊下を歩いたり。

いつもと変わりなく過ごすけど、胸はずっとザワザワしたまま。





五条「ひな?気になることあるなら隠さず言ってごらん。ずっと考え事してるだろ」





五条先生に薄々気づかれてそうだけど、検査や治療になるのはもうごめん。





ひな「何もないです。発作があったので、少し疲れただけです」





と、胸のことは言わなかった。

けれど、





五条「……な!ひな!」


ひな「ハッ、ハァッ……ゲホゲホ……!」


五条「起きろ!息して、息!どうした?怖い夢見たか?」


ひな「ハァハァ、事故の……っ、ゲホゲホッ! ゲッホゲホッ……!!」





夜中に事故の夢を見て、寝ながら発作を起こしたり、日常の音にすごくストレスを感じたり、急に胸がざわついて、不安になったり落ち着かなかったり。

この日を境に、こういったことが毎日繰り返されるようになってしまい、精神科の先生にも診てもらうと、事故によるPTSDだと診断された。


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