ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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ぶり返す古傷②

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*工藤side





~外科医局~





宇髄「やるな、工藤」


工藤「いえいえ。ゼリーかアイスなら食べるかもって、買って来てくれたのは五条先生です。俺は、ただそれをひなちゃんに」


五条「でも、俺が行っても絶対食べなかったと思うので、工藤先生のおかげです。ありがとうございます」





そう言って、五条先生は謙遜するが、さすが五条先生で。

実は、ひなちゃんの部屋に行く前、





五条「工藤先生!」


工藤「おぅ!五条先生、お疲れ様」


五条「お疲れ様です。今からひなのとこですか?」


工藤「あぁ、ちょうど行くところ。五条先生も来る?」


五条「いえ、俺が行っても無駄なので……でも、ひとつお願いがありまして」


工藤「ん?」


五条「これ、ひなに持って行ってもらえませんか?」





そう言って渡されたのが、ゼリーとアイス。





五条「ひな、今日も何も食べてないって聞いて……。食事だけは取っといてくれないと、食べないのが癖付くと本当に回復できなくなるので……」


工藤「それで、ひなちゃんが食べてくれそうなゼリーとアイスか」


五条「はい。ひなに好きな方選ばせてやってください。まぁ、アイスって言うと思います。ひな、熱上がってくるとアイス欲しがるので」


工藤「ひなちゃん、気が滅入ってるとばかり思ってたけど、身体も普通にしんどいんだな」


五条「恐らく。さすがに熱も続いてますし、ひょっとして、また上がってるんじゃないかと思うんですよね」


工藤「よし、了解。ひなちゃんの具合も含めて、結果はまた報告するな」


五条「すみません。よろしくお願いします」





ということだった。





工藤「それに、やっぱり五条先生の読み通りでした。ひなちゃんの熱、37度9分まで上がってます。心音は聴く限り問題なかったですが」


藤堂「7度9分もあった?高くなってきてるな……」


宇髄「ひなちゃん、熱出てることいい加減気付いてそうか?」


工藤「いえ、それがそうでもないんですよね。口数は少ないですけど、割と機嫌良くしてくれてて。ホルター検査も特に嫌がることなく付けてくれてますし」


藤堂「機嫌が良いのは、工藤先生だからだよ(笑)」


工藤「やめてください。俺もいつひなちゃんのバツ食らうかわからないんで。フラグ立てるの禁止ですよ(笑)」


宇髄「お前はひなちゃんに嫌われるなよ?もう手持ちの駒は、工藤と神崎だけなんだから」


工藤「はい、頑張ります(笑)」










***



*ひなのside





深夜3時。





ひな「……」





真っ暗で静まり返った病室。

音の無い空間で耳に意識を傾けると、決まってモスキート音が聞こえてくる。





キーン……





一度鳴り始めると、この音は耳から離れてくれない。

自分から音を探しに行ったけど、そのうちこの音が気持ち悪くなってきて、布の擦れる音を響かせるように寝返りを打ち、





ひな「スー……ハー……」





深く長く、深呼吸してみる。



心臓の傷を見た。



過去の手術跡と、それに並ぶ、くっきりと真新しい手術跡。

数年前に手術をしてから、胸の傷はずっと見ないままだった。

なんとなく傷を見るのが怖くて、なるべく視界に入れないようにしてたから。

それを、ホルター検査が気になって、見ようとしたのが、パンドラの箱。

この胸に刻まれた2つの傷跡が、脳裏に浮かんで離れない。



それだけならまだよかったのに、何度も殴り蹴られてできた痣、突き倒されてできた切り傷、熱湯をかけられた火傷の跡。

もう消えてなくなったはずの過去の傷まで、なぜか全部蘇ってくる。





あぁ、そっか。

こうやって思い出しちゃうのが嫌で、本能的に傷を見ないようにしてたんだ……。





最初はそう冷静に考えられてもいたけれど、そんな余裕を掻き消すように、どんどんどんどん、つらい日々を思い出し、





ドカッ……ボコッ……





と、殴られる音。





『邪魔だこのクズ!死ね!』





と、罵られる音。





『アンアン……っ!』

『おら、気持ちいいだろ。気持ちいいって言えよ、んぁ?』

『アンアン……気持ちいいっ!』





布団に潜って息を殺す中、夜な夜な聞こえてくるアレの音。

あの頃わからなかった音の正体も今ならわかる。

そんな記憶を思い出しては、今度はそんな音が耳から離れない。





なんでよ、なんで……

関係ないことまで……





心臓の傷なんて見るんじゃなかった。

数時間前の自分に会えるなら、パジャマのボタンに掛ける手を掴んで止めたい。

全部全部、思い出しちゃう。





ひな「……っ、ハァハァ……ゔっ……」





胸が痛い。

息が止まるくらい胸が痛む。





もうやだ……、苦しいよ……。





身体を縮め、頭を抱えるように耳を塞いだ。

すると、これが体内の音なのか、ボォーとかゴォーという音が聞こえてくる。





ひな「ハァハァ……ハァ……ハァ……」





胸の痛みが取れてきて、気も上手く逸れてきた。

少しずつ落ち着きを取り戻したわたしは、そのまま眠りに落ちていった。










***



*五条side





工藤「ここです。ひなちゃん、ここで発作起こしてるんです」





ひなのホルター検査が終わり、検査結果を確認する。





藤堂「発作起きてるの夜中だね。うーん……」





記録した心電図を見てみると、不整脈が見られるのはもちろんのこと。

夜中に一度、発作を起こしているのがわかった。





宇髄「これ、ひなちゃん自分でわかってないのか?胸痛出てるだろ、隠してるのか?」


藤堂「僕も同じこと考えていましたが、そんな様子はなかったんですよね……。いくら黙り込んでいるとは言え、ひなちゃんすぐ顔に出ますので。発作が起きたこと自覚してるなら、ひなちゃんが隠し通せるとは思えません」


工藤「俺も、今日ひなちゃん見てて、そんな印象は受けなかったです。実は、装置外す時に手叩かれたんですけど」


五条「えっ?」


工藤「あ、別に問題ないって話な。ひなちゃんテープかぶれ起こしてて、それが痛痒かったみたい。それで手叩かれたけど、すぐにごめんなさいって言ってきたぞ」


五条「そうですか。すみません……」


宇髄「なら、胸の痛みは出てないのか。まぁ、ひなちゃんが痛くないならいいんだが。でも、何にせよこの結果はすぐ検査だ」


工藤「はい。カテーテル入れて、EPSとアブレーションを同時にと考えてます。前回の様子だと、カテーテルは正直不安もありますが、メスを入れるのも避けたいので。なるべく麻酔でコントロールしてあげて、なんなら全身麻酔でもいいかなと」


藤堂「うん、そうだね。ひなちゃんの負担は最小限になるようにしてあげよう」


工藤「はい。あとは、ひなちゃんの具合がどうかですね」


藤堂「平熱、なかなか戻らないよね。そろそろ解熱剤使おうか……」


宇髄「その方がいいかもしれんな。それと、鉄剤も投与していくか。ひょっとしたら、ストレスより貧血で発熱してるのかもしれん」


藤堂「確かに、その可能性もありますね。食事をしないので数値は下がってるでしょうし。では、そのように工藤先生と進めていきます」


工藤「よろしくお願いします。ひなちゃんへの説明は、今日のうちに俺からしておきます」


藤堂「了解。お願いね」

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