ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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突沸①

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*五条side





ひな「いやぁっ!!」


藤堂「ひなちゃん、落ち着いて。ちょっとチックンするだけだよ。怖くないよ」


ひな「嫌っ……やだ、離してっ……!ゲホゲホッ!!」


五条「ほら、ひな。暴れたら苦しいぞ。すぐ終わるから、な?」


藤堂「工藤先生いけそう?」


工藤「はい、大丈夫です。今から入れるので、ひなちゃんお願いします。ひなちゃーん、お手手ギュッと握っててな!ちょっとヒヤッとするぞー!」


ひな「ビクッ……!! い"っ……!ゲホゲホッ……ゲホ!」


工藤「ごめんごめん、びっくりしたな。お手手、もう楽にしていいぞ~!」


藤堂「ひなちゃん、ゆーっくり呼吸してみようか」


ひな「嫌っ……痛い……ゲホゲホッ! 離して……っ!」


五条「痛いのはもう済んでるぞ。ほら、大丈夫大丈夫。危ないから動かない」


ひな「ゲホゲホッ……ヒック、ヒック……うぅ、ゲホゲホッ!」


工藤「ひなちゃん、もう終わるからな。あと少しだけ我慢だぞー…………はいっ!おしまい!えらかった!!」










***



~小児科医局~





五条「はぁ、疲れた……」





医局に戻り、机に突っ伏す。





神崎「ありゃりゃ。五条先生、大丈夫?ひなちゃん、これまた大変だったのね~」





それはもう、本当に……。





ひなの鉄剤を3人掛かりでやっと打った。

数日前、当直で時間があったんで、





ひな、発作起こしてないかな……。

手術の説明受けて、怖くて泣いてるんじゃ……。





と、様子を見に行くと、案の定、発作を起こしていた。

しかも、どうやら昔のことがフラッシュバックするようで、それ以降、診察も処置も大暴れ。

さっきもやむなく、藤堂先生とひなを押さえつけ、工藤先生に注射を打ってもらった。





神崎「ひなちゃん、ちょっと本当にまずいよね。沸点、かなり迫ってない?」


五条「沸点はすでに超えている気がします。今は過熱状態じゃないかと……」


神崎「げっ、それなおさらやばいじゃん……」


五条「そうなんです。だから、なんとかしたいんですけど、どうしようもなくて。何をするにも力尽くで、刺激を与えてしまっている状態なので」


神崎「俺が行ってもダメなんだろうね。だから、宇髄先生も俺を使おうとしないのか」


五条「だと思います。子ども騙しみたいなこと効かないですからね。はぁ……」


神崎「まぁまぁ。もうなるようにしかならないなら、そんなため息つかないで。ひなちゃんが爆発した後のことを考えとこう!」


五条「その爆発するのが嫌なんですよ……。それに、爆発した後も今回は長いですよ、絶対……」


神崎「もう、またそんなことを~。最終的にひなちゃんを救ってあげられるのは、五条先生しかいないんだからね?」


五条「そんなことないですよ……」


神崎「そんなことしかないでしょ。あっ!そういえば、あれってもう出来たの?」


五条「あれ?」


神崎「うん、あれだよ。事故の時、藤堂先生が拾ってくれてたさ」


五条「……あぁ、あれですか。もう届いてますよ。本当は、それもクリスマスに渡してあげたかったんですけどね……」


神崎「クリスマスならまだいけるじゃん!10日以上ある!」


五条「10日で状況が良くなってるとは……」


神崎「大丈夫大丈夫!今日明日辺りで、ひなちゃんがドカーンとなれば、クリスマスには笑顔戻ってるよ!」


五条「なっ……!もう、神崎先生!!今そういうこと言わないでくださいよ!本当にドカーンとなったらどうすんですか!!」


神崎「ははっ。ごめんごめん。でもさ、ひなちゃんが爆発するのは避けられないじゃん?俺ね、それ明日だと思う」


五条「き、急にマジな顔して言わないでください……当たりそうで怖いです」


神崎「ははっ。ただの勘だけどね!」


五条「いや、だから……神崎先生の勘って、結構当たるじゃないですかっ!」


神崎「え~、そんなことないよ~!」


五条「そんなことありますから……!」





と言っていた、翌日……










***



*ひなのside



今日も注射された。

正確に言うと、わたしが抵抗に抵抗を重ね暴れた結果、喘息の発作が起きてしまい。

仕切り直そうということになったから、まだしてはいないんだけど。





藤堂「ごめんね、嫌だね。嫌だけど頑張ろう」

宇髄「すぐ終わるからな。ちょっとだけ我慢だ」

工藤「先生痛くしないから!お手手グーで握れるかな?」

五条「ひーな、暴れるな。大丈夫だからじっとして」





……はぁ。



やめてってたくさん言ったのに、誰も押さえつける手を離してはくれなかった。

何度も何度も、嫌だと叫び、離してと叫び、先生たちに負けない力でジタバタして、それでも離してくれなくて。





ひな「やだっ……!ゲホッゲホッ……お願いだから……ゲホゲホッ、ほんとに……やめっ……ゲホッ、て……っ、ゲホゲホゲホッ!! ハァハァ……ゲホゲホッ……ゲッホゲホッ!!」





息が苦しくなって、懇願してようやく離してくれて、





神崎「ひなちゃん、息吸って吐くよ~。大丈夫、大丈夫。すぐ楽になるからね。もう怖くないよ~」





いつの間にか来た神崎先生にマスクを付けられ、楽になった……と、眠りに落ちて起きたのが今。





ひな「……」





真っ白な、柄のある天井。

いつもの病室なら無地なのに、天井にまで柄があるなんて、さすがはVIPの泊まる特別室。

部屋を見渡せばだだっ広く、大きなベッドがぽつんと感じる。



思い返せば、昔、わたしに与えられていたスペースはこのベッドより狭かった。

病院でも家でも、身を沈めるものは全部ふかふか。

使う物はどれも綺麗で清潔で、素敵なお洋服を着せてもらい、お腹が空いていなくとも、美味しい食事を与えられる。





こんな生活、いつから当たり前になったんだっけ……。





ゴミのように扱われ、自分の存在すら不確かだった。

蹴られたり殴られたり、苦痛のない日なんてなかった。

ノワールに来て、あの人がいなくなって、そんな日々から解放された、今が幸せ。



なはず、なのに……。



ベッドの上、頭の中で、今と昔を行き来する。

すると次第に、



もうずっと、大っ嫌いな病院に閉じ込められてる。

毎日苦しくなるし、痛いことばかりだし、嫌なことばかりだし、今だって、いつ先生たちが来るんだろうって、怖くて仕方ないし。



あの人はいなくなった。

けど、その代わりに……先生たちがわたしのこと……。



今と昔が交差して混じり合う。










マスクを外し、ふらふらと起き上がるわたし。

指にはめられた機械も外し、





ブチッ……





点滴の針を引っこ抜くと、ベッドを降りて、ふらふらしながら数メートル。

特別室の外へと、ドアに手を掛け……





コンコンコン——





っ……!?





ガラガラ——


藤堂「おっと、びっくりした……!ひなちゃん?」





藤堂先生、宇髄先生、工藤先生、神崎先生、そして、





五条「ひな……?」





五条先生。



ドアが開くとイケメン5人。

ドラマのワンシーンでも見ているのかと、錯覚を起こす光景が。





五条「何してんだ……?」





けれど、残念ながらこれは現実。

背中に冷や汗が伝い、すくむ足を一歩後ろに下げる。





ひな「こ、来ないで……」





あまりにか細く震える声は、先生たちに聞こえたのだろうか。





五条「どこ行く気だった……?」





"逃げようと思ってた"



頭に流れる心の声。

目の前に見えるは、一歩前へ、わたしの腕を掴もうとする五条先生。



与えられた時間はコンマ1秒。

こんな時は、身体が先に動くもの。

わたしは振り返り、部屋の中に走った。

そして、





五条「ひなっ!」
黒柱「「ひなちゃんっ!」」


ひな「来ないで!!」





追いかけて来る先生たちに、ソファーのクッションを投げつける。





五条「こらっ!!」


ひな「やだぁっ!!」





ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……



ソファーにあるクッションを全部投げつけたら、テーブルに飾られた花瓶を手に取り、



ガッチャーン!!



それも、先生たちへ投げつける。





五条「ひなぁ!!」


工藤「……っと!危ない」


宇髄「ひなちゃん、ちょっと落ち着こうか」





わたしの力が弱いせいか、当たりどころが良かったのか、物が良いのか、幸いにも花瓶は割れず。

水と花が飛び散った床の上を、先生たちが迫って来る。





ひな「やだっ、やだってば……!!」





考えもせずに動くとこうなる。

いくら広い部屋とはいえ、この空間で逃げ切るのはたぶんもう無理。

それはわかるから、せめてもの抵抗を……。



ベッドの方へ移動すると、

点滴スタンド、枕、読みかけの本、ノート、ペン、ペッドボトル、テレビのリモコン……

何を投げても誰にも命中しないけど、投げられる物を全部投げて、





ひな「来ないでよ!!」





最後にスマホを投げつけると、





五条「ひなぁっ!!」





目の前にいた五条先生のお腹に命中した。

と、同時に、いつの間にか背後にいた神崎先生に捕まった。


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