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最終羽 羽ばたく悠の翼
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声の方へ顔を向けると通りの中央に中年女性二人に自分と同年代の女性が四角い箱を両手に立っており、通行人へ盛んに何かを呼びかけていた。その内容から開発途上国へのボランティア募金とわかった。
悠は財布を取り出し、参考書資金や今月使う費用を差し引いたお金を募金箱に入れた。一年前とは違い、今の自分にとってお金は必要なものだった。
同年代と思われる女性の「ありがとうございます」と言う声に軽く手を上げると悠はアパートへ帰る為、白い息を吐きながらバス亭へ向かった。
以前住んでいたマンションは半年以上前に引き払った。カラスに教われて死んだスナックの常連の物件で、その常連が死んだ以上愛人である琴音が出て行くのは当然の成り行きだった。
引っ越したアパートはマンションに比べくたびれた様相で琴音は何度もそれについて謝ったが悠は全然気にならなかった。
後で悠は気づいたが、琴音は自分を大学に入れる資金の積立てを睨んでこのくたびれたアパートを選んだのだ。
悠は学校やアパートで勉強を続ける傍ら、バイトで得た収入で琴音に食事をご馳走したりした。これが悠の、未来へ向けた生き方だった。
そして過去への生き方は祐樹の、兄へ向けたものであった。
世界中のカラスと対話できる者達が立ち上げたインターネット上にあるサイトの会員になり、カラスたちの思いを世に伝える活動に参加した。ときには自分と兄のこと、ムエゼのこと、そして浄化計画の話しを一般の人々が訪れた集会で語ったりした。
今もカラスは人を襲撃し、それに対するカラスの浄化計画も続行中のようだった。
バス亭の列に並ぶ悠の携帯電話が鳴った。
コートのポケットからそれを取り出し、確認すると琴音からだったので悠は通話ボタンを押した。
二人で行うクリスマスパーティー用に調理していた照焼きチキンが焼き焦げチキンになってしまったので出来合いのチキンを買ってきて欲しい、という内容だった。
白い溜息を吐き、携帯電話をしまいながら再び商店街へ歩き出した悠の頭上を、甲高く澄んだ声をあげ、カラスの群れが飛んで行った。
<終>
悠は財布を取り出し、参考書資金や今月使う費用を差し引いたお金を募金箱に入れた。一年前とは違い、今の自分にとってお金は必要なものだった。
同年代と思われる女性の「ありがとうございます」と言う声に軽く手を上げると悠はアパートへ帰る為、白い息を吐きながらバス亭へ向かった。
以前住んでいたマンションは半年以上前に引き払った。カラスに教われて死んだスナックの常連の物件で、その常連が死んだ以上愛人である琴音が出て行くのは当然の成り行きだった。
引っ越したアパートはマンションに比べくたびれた様相で琴音は何度もそれについて謝ったが悠は全然気にならなかった。
後で悠は気づいたが、琴音は自分を大学に入れる資金の積立てを睨んでこのくたびれたアパートを選んだのだ。
悠は学校やアパートで勉強を続ける傍ら、バイトで得た収入で琴音に食事をご馳走したりした。これが悠の、未来へ向けた生き方だった。
そして過去への生き方は祐樹の、兄へ向けたものであった。
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今もカラスは人を襲撃し、それに対するカラスの浄化計画も続行中のようだった。
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コートのポケットからそれを取り出し、確認すると琴音からだったので悠は通話ボタンを押した。
二人で行うクリスマスパーティー用に調理していた照焼きチキンが焼き焦げチキンになってしまったので出来合いのチキンを買ってきて欲しい、という内容だった。
白い溜息を吐き、携帯電話をしまいながら再び商店街へ歩き出した悠の頭上を、甲高く澄んだ声をあげ、カラスの群れが飛んで行った。
<終>
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