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第1章 表通りのビューティーサロンと裏通りの本屋
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「じゃあね、また来るよ」
「あの」
帰ろうとする彼に、わたしはずっと疑問に思っていたことを尋ねた。
「何?」
「なんでいつも、わざわざうちに本の注文してくれるんですか? ネットのほうが断然早いのに」
わたしの言葉が終わらないうちに、彼はレジカウンターに1歩、近づいてきた。
そして、年代もので傷がつきまくっている木製カウンターの上に片肘をついて顎を乗せ、わたしをじっと見つめてきた。
わ、なになに?
「理由、聞きたい?」
「は、はい」
返事をすると、彼はなぜか、かすれた甘い声で囁きかけてきた。
「俺、優ちゃんに会いに来てるんだけど」
砂の一粒分さえも考えていなかったことを臆面もなく言われ、わたしはしばし絶句した。
だから、困るんだって!
こうやって、いつも思ってもいないことを口にして、わたしをからかって遊ぶんだから、この人は。
「またまた。そんな心にもないこと」
「そんなこと、ないって」
彼は目を逸らさずにいう。
もう、まともに目なんか見られない。
「そんなこと……あるはずないし」
赤面して俯くわたしを見て、彼は嬉しそうに目を細めた。
「ははっ、優ちゃんはやっぱり可愛いな。顔、真っ赤だよ」
ほら! やっぱり。
また、からかわれた。
わたしはふくれっ面をした。
「もう、玲伊さん、ふざけすぎです」
「ごめん、ごめん。でもそういう顔、させてみたかったんだよ。昔の優ちゃんみたいだ。最近、怖い顔でにらまれてばっかりだったから」
「昔の?」
「ああ、ここで浩太郎と三人で遊んでいたころのね」
玲伊さんは分厚い本の入っている袋をひょいっと持ち上げた。
「俺、本当にこの店が好きなんだよ。それがここで本を注文する理由かな。できるだけ長く店を続けてほしいから。俺ひとりの売り上げじゃ、そう助けにもならないだろうけど」
そう言って微笑む彼につられて、わたしも頬を少し緩めた。
「玲伊さんがうちの店が好きって言ってたって、おばあちゃんに伝えておきますね。きっと大喜びしますよ、さすが玲伊ちゃん、いいこと言うって」
玲伊さんは、嬉しそうな顔で、軽く頷いた。
「じゃあな」
と行きかけて、「あ、そうだ」とふたたび足を止めた。
「あの」
帰ろうとする彼に、わたしはずっと疑問に思っていたことを尋ねた。
「何?」
「なんでいつも、わざわざうちに本の注文してくれるんですか? ネットのほうが断然早いのに」
わたしの言葉が終わらないうちに、彼はレジカウンターに1歩、近づいてきた。
そして、年代もので傷がつきまくっている木製カウンターの上に片肘をついて顎を乗せ、わたしをじっと見つめてきた。
わ、なになに?
「理由、聞きたい?」
「は、はい」
返事をすると、彼はなぜか、かすれた甘い声で囁きかけてきた。
「俺、優ちゃんに会いに来てるんだけど」
砂の一粒分さえも考えていなかったことを臆面もなく言われ、わたしはしばし絶句した。
だから、困るんだって!
こうやって、いつも思ってもいないことを口にして、わたしをからかって遊ぶんだから、この人は。
「またまた。そんな心にもないこと」
「そんなこと、ないって」
彼は目を逸らさずにいう。
もう、まともに目なんか見られない。
「そんなこと……あるはずないし」
赤面して俯くわたしを見て、彼は嬉しそうに目を細めた。
「ははっ、優ちゃんはやっぱり可愛いな。顔、真っ赤だよ」
ほら! やっぱり。
また、からかわれた。
わたしはふくれっ面をした。
「もう、玲伊さん、ふざけすぎです」
「ごめん、ごめん。でもそういう顔、させてみたかったんだよ。昔の優ちゃんみたいだ。最近、怖い顔でにらまれてばっかりだったから」
「昔の?」
「ああ、ここで浩太郎と三人で遊んでいたころのね」
玲伊さんは分厚い本の入っている袋をひょいっと持ち上げた。
「俺、本当にこの店が好きなんだよ。それがここで本を注文する理由かな。できるだけ長く店を続けてほしいから。俺ひとりの売り上げじゃ、そう助けにもならないだろうけど」
そう言って微笑む彼につられて、わたしも頬を少し緩めた。
「玲伊さんがうちの店が好きって言ってたって、おばあちゃんに伝えておきますね。きっと大喜びしますよ、さすが玲伊ちゃん、いいこと言うって」
玲伊さんは、嬉しそうな顔で、軽く頷いた。
「じゃあな」
と行きかけて、「あ、そうだ」とふたたび足を止めた。
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