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4・ファーストキス未遂
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そりゃ、わたしだって、都築といるのは楽しいけど。
でも、ユキちゃん、ほんとに文句言わないのかな。
自分の彼氏が、たとえ“見た目ほぼ男子”とはいえ、異性の友だちを作ったら面白くないに決まっている。
自分でも不思議なのだが、いい子ぶっている訳じゃなく本心からふたりの仲を裂こうという気持ちはなかった。
というか、ユキちゃんタイプを彼女にしている都築が、こんなガサツで男みたいな女を好きになるはずがないと、信じて疑わなかった。
都築に限らず、自分が男子に好かれるなんてありえないという考えが長年、脳にこびりついていた。
そうやって、人知れず涙ぐましい努力と諦めを重ね、少しずつ都築をただの友達だと思えるようになってきたとき。
あろうことか、当の都築が、また、わたしの恋心に火をつけた。
それは2年生のコンペの日、20歳のクリスマスイブの夜のことだった。
2度目の挑戦ということもあり、わたしたちの作品はグランプリを獲得した。
大方の予想通りとはいえ、勝利の味は格別で、周りからの祝福や称賛も思った以上に心地よかった。
その興奮冷めやらぬまま、仲のいい友人たちと連れ立って居酒屋に繰りだした。
そこで6時間粘った末、とうとう追い出され、とりあえずそこで祝勝会はお開きとなった。
「これからどうする?」
なんとなく連れ立って横を歩いている都築に訊いた。
このまま帰るのは惜しい気がしていた。
都築も同じ気持ちだったらしい。
「もう少し飲みてえな」
「どっか店探す?」
「この時間じゃ、もう開いてねえだろ。そうだ、いいとこあるわ」
「どこ?」
都築はイタズラを思いついた小学生みたいに目をきらめかせた。
「学校。忍び込もうや」
わたしも親指を立てて応じた。
「いいね」
酔っ払って気が大きくなってた。
最高の気分の夜を、バカげたことをして締めくくりたかった。
そこで、酒屋で缶チューハイを買い、学校を目指した。
まず、買ったそばから、ひと缶開ける。
プルトップを開けてぐいぐい飲む。
「あー、勝利の美酒はサイコー」
「こっちにもよこせよ」
「うん」
もう一口飲んでから、都築に渡す。
「げ、もう半分もねーじゃん。その飲みっぷり、お前、もう性転換したほうがいいんじゃね」
「うるさい。どうせ、今だって女だと思ってないくせに」
訳がわからなくなるほど、酔いたかった。
この後ろめたさから逃げるために。
でも飲んでも飲んでも、頭は冴えてゆく一方で。
今晩だけだから。
わたしたちにとって、特別な夜だから。
わたしが、都築を独占することなんて、もう二度とないから許して。
わたしは心の中で、ユキちゃんに詫びていた。
夜もだんだん更けてきて、身体の芯まで凍りつきそうなほど寒くなってきた。
でも、そんなことにはお構いなく、わたしたちふたりは、チューハイを煽りながら、街を闊歩して、野放図で気ままな夜を満喫していた。
でも、ユキちゃん、ほんとに文句言わないのかな。
自分の彼氏が、たとえ“見た目ほぼ男子”とはいえ、異性の友だちを作ったら面白くないに決まっている。
自分でも不思議なのだが、いい子ぶっている訳じゃなく本心からふたりの仲を裂こうという気持ちはなかった。
というか、ユキちゃんタイプを彼女にしている都築が、こんなガサツで男みたいな女を好きになるはずがないと、信じて疑わなかった。
都築に限らず、自分が男子に好かれるなんてありえないという考えが長年、脳にこびりついていた。
そうやって、人知れず涙ぐましい努力と諦めを重ね、少しずつ都築をただの友達だと思えるようになってきたとき。
あろうことか、当の都築が、また、わたしの恋心に火をつけた。
それは2年生のコンペの日、20歳のクリスマスイブの夜のことだった。
2度目の挑戦ということもあり、わたしたちの作品はグランプリを獲得した。
大方の予想通りとはいえ、勝利の味は格別で、周りからの祝福や称賛も思った以上に心地よかった。
その興奮冷めやらぬまま、仲のいい友人たちと連れ立って居酒屋に繰りだした。
そこで6時間粘った末、とうとう追い出され、とりあえずそこで祝勝会はお開きとなった。
「これからどうする?」
なんとなく連れ立って横を歩いている都築に訊いた。
このまま帰るのは惜しい気がしていた。
都築も同じ気持ちだったらしい。
「もう少し飲みてえな」
「どっか店探す?」
「この時間じゃ、もう開いてねえだろ。そうだ、いいとこあるわ」
「どこ?」
都築はイタズラを思いついた小学生みたいに目をきらめかせた。
「学校。忍び込もうや」
わたしも親指を立てて応じた。
「いいね」
酔っ払って気が大きくなってた。
最高の気分の夜を、バカげたことをして締めくくりたかった。
そこで、酒屋で缶チューハイを買い、学校を目指した。
まず、買ったそばから、ひと缶開ける。
プルトップを開けてぐいぐい飲む。
「あー、勝利の美酒はサイコー」
「こっちにもよこせよ」
「うん」
もう一口飲んでから、都築に渡す。
「げ、もう半分もねーじゃん。その飲みっぷり、お前、もう性転換したほうがいいんじゃね」
「うるさい。どうせ、今だって女だと思ってないくせに」
訳がわからなくなるほど、酔いたかった。
この後ろめたさから逃げるために。
でも飲んでも飲んでも、頭は冴えてゆく一方で。
今晩だけだから。
わたしたちにとって、特別な夜だから。
わたしが、都築を独占することなんて、もう二度とないから許して。
わたしは心の中で、ユキちゃんに詫びていた。
夜もだんだん更けてきて、身体の芯まで凍りつきそうなほど寒くなってきた。
でも、そんなことにはお構いなく、わたしたちふたりは、チューハイを煽りながら、街を闊歩して、野放図で気ままな夜を満喫していた。
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