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番外編その1 木澤彰吾、禁煙を決意する
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しおりを挟むグシャっと箱を潰す音がした。
目覚めの一服を吸おうと、サイドテーブルに手を伸ばしたときだった。
追い打ちをかけるように、寝ぼけた頭に無情な声が響いた。
「だめです」
そして、ぴしゃりと手を叩かれる。
「昨日、約束したばっかりなのに」
「……最後の1本だ」
「もう、そんなこと言っていたら、いつまで経ってもできないですよ。禁煙なんて」
花梨は窓際に行き、さっとカーテンを引いた。
「さ、起きてください。もうそろそろお昼なんで」
俺の彼女はなかなか手強い。
もちろん、そんなところも、たまらなく俺好みなんだが。
それにしても、俺が禁煙なんて……
あんな約束するんじゃなかった。
部下の辻本花梨と付き合いだして半年。
今は半同棲状態で、週末はかならずふたりで過ごす。
だが、日が経てば経つほど、週末だけでは物足りなくなってきた。
四六時中、花梨をそばに置きたい。
まあ、会社でも一緒なんだが。
だが、逆にそばにいるのに1日中触れられないというのは、どうも精神衛生上、よろしくない。
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