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第5章 隠れ家温泉宿での一夜

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「宗介さんは何時ごろに?」
「郁美とそう変わらなかったよ。道が空いていてよかった」

「ねえ、お部屋見てもいい?」
 弾んだ声でわたしが言うと、宗介さんは「いいよ」と、わたしを抱きしめていた腕をほどいた。

 わたしはショルダーバッグをスーツケースの横に置くと、部屋を巡りはじめた。
 
 まず寝室。

 障子から漏れる光が優しい、8畳ほどのスペース。

 背の低いクイーンサイズのベッドが置かれていて、寝具には清潔な白のカバーリング。
 見るからに寝心地が良さそう。

 リビングは、角の二面が掃き出し窓になっていて、一方の窓の前には座り心地の良い2人掛けのローソファーが置  かれていて、そこから庭を眺められる。

 敷地の先は雑木林が続いていた。

 もうひとつの窓は仲居さんが言っていたサンルームとの仕切りになっていて、窓外はレンガ色のタイル床で、そこにガーデン用のテーブルと椅子が置かれている。

 ウエルカム・スイーツは、季節感たっぷりの岐阜、中津川の銘菓、栗きんとん。
 茶葉は玉露で、最適な温度のお湯がポットに。
 明るくて広々とした洗面台には、高級ホテル並みにブルガリのアメニティがずらり。

 とにかく、どこをとっても一流の名に恥じない完璧な心配り。
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