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エピローグ
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「俳優はさまざまな人間を演じるのが仕事です。そのためには榊原宗介自身の内面の豊かさが大切だと、私はそう思います。妻に出会ったことで、それまで知らなかった心の揺れを数多く経験しました。喜びもあり、焦燥もあり、苦しみもありました。そうやって俳優としての一番大切な核を育ててくれたのは、彼女だと思っています」
彼はまっすぐカメラを見つめた。
「その大切な人を、存在しない者のように扱うことが、どうしても耐えられなくなったんです。そして世間の皆様を欺いていることにも耐えられなくなりました」
そして、言った。
「これから一層、努力を重ねていく所存です。自分勝手なお願いですが、どうか、これからもあたたかく見守っていただければありがたく思います」
そうして深々と頭を下げた。
会社にいることも忘れて、わたしは涙を流していた。
人前ではけっして泣かない女だったのに。
涙を流すことは、感情を垂れ流しているように思えて、恥ずかしかった。
でも、そんな凝り固まった信念はどこかに消えてなくなっていた。
とても素直に、心のままに泣いていた。
もう、画面がぼやけていた。
涙が止まらない。
会社にいることも忘れていた。
化粧も崩れているはず。
でも、そんなことはまったく気にならなかった。
亮介さんがわたしの席にやってきて、ポンと肩を叩いた。
「兄貴、今までで一番カッコ良かった」
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、わたしは彼を見上げ、笑顔を向けた。
〈The End〉
*お読みいただきありがとうございましたm(_ _"m)
彼はまっすぐカメラを見つめた。
「その大切な人を、存在しない者のように扱うことが、どうしても耐えられなくなったんです。そして世間の皆様を欺いていることにも耐えられなくなりました」
そして、言った。
「これから一層、努力を重ねていく所存です。自分勝手なお願いですが、どうか、これからもあたたかく見守っていただければありがたく思います」
そうして深々と頭を下げた。
会社にいることも忘れて、わたしは涙を流していた。
人前ではけっして泣かない女だったのに。
涙を流すことは、感情を垂れ流しているように思えて、恥ずかしかった。
でも、そんな凝り固まった信念はどこかに消えてなくなっていた。
とても素直に、心のままに泣いていた。
もう、画面がぼやけていた。
涙が止まらない。
会社にいることも忘れていた。
化粧も崩れているはず。
でも、そんなことはまったく気にならなかった。
亮介さんがわたしの席にやってきて、ポンと肩を叩いた。
「兄貴、今までで一番カッコ良かった」
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、わたしは彼を見上げ、笑顔を向けた。
〈The End〉
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