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エピローグ

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 後で聞いた話だけれど、袖で控えていた向井さんが、宗介の腹に一発パンチをおみまいしたそうだ。

「まったく、今ので、本当に胃に穴が開いたわよ」

 そして、近くにいた事務所のスタッフに「テレビの取材、『明日、会見を開きます』と言って、今日はお引き取りいただいて。ほら、急いで」

「ワリいな」
「あなた、悪いって少しも思ってないでしょ」

 そう言うと、向井さんはニヤっと笑ったそうだ。

 
 翌日、事務所で会見が開かれ、その様子がネットで中継された。

 ちょうど昼休憩の時間で、わたしは自席でかたずをのんで見守っていた。

 矢継ぎ早に繰り出される質問に丁寧に答え、最後に宗介は言った。

「これまで公表できなかったのは、ひとえに自分の弱さのせいです。正直、結婚したことでファンが離れるのが怖かったんです」

 彼はカメラから目をそらさず、一言一言かみしめるように言葉を紡いでゆく。

「でも舞台演劇に出会い、そして今回、身に余る賞を頂き、ただ人気に頼るだけのタレントとしてではなく、俳優を生業にしていく覚悟ができました」

 何ひとつ飾ることなく本心を伝える彼の真摯な態度に圧倒されているのか、記者たちも無言で次の言葉を待っている。
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