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本編

剣術の授業③

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「俺はグリード・ルフスだ。宜しく頼む」

グリード・ルフスって、騎士団に入団後、異例の速さで『ガーディアンナイト』になった【エース】じゃないですか……!!

ジレイル先生?!
これ、わざとですよね?!
わざわざ私の対戦相手にグリードを指名するとか、リーゼル先生への嫉妬からですよね?!
大人げなっ!!大人げないよ!!「生意気な一年には世の中の厳しさを教えてやらねば」的なやつですよね?!!

まさかの出来事に、既に戦い終わった側にいるアレクとロイが、私の傍へと走ってきてくれた。

「すげーじゃん、セルジュ!!グリードと戦えるなんて滅多にないチャンスだぜ?!」

あ、心配して来てくれたんじゃないんですね。アレクってそーゆー系?『オラ、ワクワクすっぞ!』的な人だったの??

「セルジュ。グリードは現時点で、この学校一の強者だ。一つ、教えておこう。奴は俺やテオドール先輩よりも速い」

ロイ、一つじゃないから。今君は「学校一の強者」って事と、「ロイやテオドール先輩より速い」って事の二つを私に教えてるから。要らない情報だったけどね。もう既に瞬殺される未来しか見えない。
ロイやテオドール先輩より速いとか、七つの玉を集めちゃう某人気漫画の人達ですか。アレクに引き続き、まさかこの世界でもそーゆう物語があって流行ってるんですか??

「そこ!!無駄話はしないように!終わった者は下がれ!」
「あっ、いけね!すみませーん!!セルジュ、頑張れよ!!」
「セルジュ、心配するな。後で俺がしっかり介抱してやる!!」

ロイ、有り難い申し出だけど何やら嫌な悪寒がするから、介抱はアレクにお願いします。
多分、君が鼻を押さえてるせいかな。なんで今鼻が弱ってるの??
……さて、私もいよいよ覚悟を決めますか。

「セルジュ・プランドルです。宜しくお願いします」
「ああ。……そう心配しなくとも、手加減するから安心しろ」
「え?」
「そのような華奢な身体では、初撃も受け止められるか分からんだろう?」

―――カッチーン。

言ってくれますね。
手加減してくれるんだろうな、とは思ってたし、期待もしてたけど。一切悪気無しな顔で、素で私をミジンコ扱いしましたね???
どうせ私はモブですから。
確かにミジンコですよ。でも、これでも血反吐吐きながら(正確には血は吐いてないけども)特訓特訓で努力を重ねてきたんだからね?

「ジレイル先生」

私は後方に居るジレイル先生に声をかけた。先生は訝しげな表情で私を見ている。

「なんだ?言っておくが、対戦相手の変更願いは無しだぞ」
「この模擬戦、真剣に真面目に最善を・・・尽くしていいんですかね?」
「何だと?当たり前だろう。どれだけ相手が強かろうと、諦めずに最善を尽くして戦え!!」
「…………言質、取りましたから」
「セルジュ・プランドル……??」

再びグリードに向き合うと、私は自身の身体強化を発動させる。
これはお兄様との魔法特訓で発見した事なのだけど、身体強化って、実は各属性の重ね掛けが出来るのだ。身体が生身より硬く、俊敏に動けるようになり、力が増すのが身体強化。普通はそれだけだけど、そこに各属性を意識しながら再び身体強化のイメージをする。風属性なら速さが増し、土属性ならより硬く、という風に。私とお兄様は二人だけの特訓で、その属性特有身体強化をマスターした。複数の属性を重ね掛けする事にも。
そして、全ての属性を重ね掛けするのにも、相当な特訓を要した。私は自分がミジンコだって分かってるから、持ってる属性全部、重ね掛け出来る。
傍目には身体強化の重ね掛けなんて分からないだろうけど、五属性持ちだとバレたらドナドナされちゃうからね。だから私が使えるのは三つまで。

風、土、時を使う。

私が身体強化を発動させた事に気付き、グリードが構えた。ジレイル先生も、まさか私が使えると思ってなかったのだろう。後方から息を呑む音が聞こえた。

「行くぞ」

グリードが地面を蹴った。
そしてグリードの言っていた、華奢な私では受け止められないだろう初撃が繰り出され、私はそれを―――

―――ガキィン!!!

「?!」
「ぐっ……!!」

私は、その初撃を受け止めて見せた。


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