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本編
心地好すぎる魔力
しおりを挟むあったか~~~い。
湯船に浸かってるみたい。
めちゃくちゃ気持ちいい。何これ、温泉?私、もしかして温泉にいるの?温泉でウトウトしてるとか贅沢だなあ。しかもこの温泉、しがみつけるんですけど。ぎゅってしがみつく程、気持ちいい。
……いやいや、ちょっと待って。
どこの世界に『しがみつける温泉』があるの?明らかにおかしい。
あ、そうか。これって夢?現実ではふかふかお布団の中とか?こんな気持ちいいお布団、お家にあったかな?
『…………だけ俺の魔力を持っていけ。お前になら、いくらでも…………』
―――え?
誰?この声、お兄様じゃない。でも、前にも聞いた声。お兄様の声は凄く甘くて安心出来る声だけど、この声も落ち着くんだよね。えーと……
確かゲームでも凄く人気があった―――……
「ロゼ」
「……グリード……?」
私がぼんやりと目を開けると、目の前にグリードが居た。これは一体……?いつかの保健室の夢?
そうだ。あの時も確か、凄く温かくて気持ちよくて……
いつだったか、ユベール先生が言ってた。魔力は馴染むと気持ちがいいって。
グリードって、確か四属性持ちだった筈。五属性持ちは滅多にいないから、四属性持ちのグリードが一番私に近いのかな?
私がまだ夢か現実か分かっていない頭でそう考えていると、グリードが私をじっと見つめながら、「……もっと欲しいか?」と訊いてくる。
もっとって、何の話?でも、何故だか私は自然にコクリと頷いていた。
頷いた私を見て、グリードが嬉しそうに瞳を細める。まるでヒロインを見ている時みたいな、熱の籠った瞳に、私は思わずドキッとしてしまった。
「……あの時と同じだな」
「え?」
「保健室で魔力回復した時も、もっと欲しいと言っていた。俺とお前の魔力はとても近くて馴染みやすい。だから……」
「……っ?!」
身体の中に流れてくる魔力量が、さっきよりも増えていく。
あまりの心地好さに、私はグリードにしがみつきながら、恍惚としてしまう。
ああ、やっぱりこれは夢なんだ。
まるで湯船に浸かりながら、美味しいお酒で気持ちよく酔ってしまったような感覚。こんなの、現実的に有り得ない。だって今世の私はまだ子供だから、お酒飲めないもの。前世では、甘くてサッパリした安物の、白のワインが好きだった。また飲みたいなあ……
「だ、め。……気持ちよくて……」
頭がぼーっとして何も考えられない。ふわふわ気持ちよくて、温かくて幸せ。悪い事なんて、全部全部…………蓋をして…………
……………………
…………
「……魔力の同調が上手くいったようだ。おやすみ、ロゼ。良い夢を見るといい」
「グリード。……どうしてお前がここに居る?」
「オリバー、何故怒っているんだ?殺気を抑えろ。じきに隊長達もここへ来るぞ」
「……そんな事はどうでもいい。いつまでロゼを抱いているつもりなんだ?早くロゼを返せ」
「断る。……まだ魔力回復中なのでな」
「なんだと?魔力回復なら、とっくに終わっていると思っていたのだが?」
「最低限の分はな。だが、ロゼはもっと欲しいと言っていた。そして俺は、ロゼにならいくらでも魔力をくれてやると決めている」
「……グリードッ……!!」
* * *
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