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本編

お兄様のお部屋では寝れません

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リアムがお兄様のお部屋を去った後。私はお兄様を生まれて初めて拒絶してしまった。だって、私が騎士団へ入団する為に死に物狂いで頑張ってきたのは、憧れや好奇心なんかじゃないから。私の事を、そんな浅はかな女だと思っていたなんてショックで、私はお兄様を拒絶してしまった。けれど…………

私の事を知りたいと、お願いしてくるお兄様に、結局私は絆されてしまった。私の前世の事や、この世界が乙女ゲームの世界なのだと、お兄様には話したくないと思っていたのに。……だから、話すにしても少し時間が欲しいと思った。包み隠さず全部話すか、予知夢的な感じで知った事にして、戦争の事だけ話すか……
この期に及んで、って気もするけど、これは重要な事だよ。悪役令息の話までしてしまったら、ヒロインの事まで…………

「ロゼ……」
「分かりました。でも、まだ少しだけ待って下さい。……お願いします、お兄様」
「……分かった。約束だよ、ロゼ。私の願いを聞いてくれてありがとう。……もうこんな時間か。すまない、ロゼ。食堂はもう閉まってしまったかもしれない。お腹は空いているかい?」
「いえ、大丈夫です。もう暗いですし、私は星屑…………星屑寮に戻って休みます」

危ない危ない。
今ナチュナルに星屑荘って言いそうになっちゃった。

「そうか。……ああ、でも……」
「お兄様?」
「……星屑寮へは帰したくない。女人禁制と言っているだけあって、本当に男しかいないから。ロゼが他の男と同じ部屋で眠るなんて耐えられない。……今夜は私の部屋で寝てくれないか?」

いやいやいや。
さっき、布越しにキ……………………
ごほん。あんな事をした後なのに、一緒の部屋で眠るなんて無理に決まってるじゃないですか!!
お兄様は本当に私の性別分かっているの?さっきのアレは、いくら話を聞いて欲しかったにしても、一体どーゆうつもりで……

私がそう考えていると、何故だかこういった事はすぐに察する事が出来るようで、お兄様が「大丈夫だよ、ロゼ」と言った。……紳士だからだろうか?

「私は隣の部屋で眠るから」
「隣の部屋?」
「ああ、隣はテオドールの部屋なんだ。ノアとテオドールも、私と同時期にナンバーズへ昇格したんだよ」
「ああ……」

成程。
あの二人もお兄様と同じで、ゲーム通りに昇格したんですね。ゲームではお兄様がNo.9、テオドールがNo.8だった筈だから、ナンバーズの寮は番号順なのかな??

「…………お兄様?」

ふと気付くと、お兄様が不思議そうな顔をして私を見ていた。
なんだろう?私の顔に何かついているのかな??

「ノアとテオドールが昇格した事を知っていたのかい?」
「え?」
「全然驚いていなかっただろう?私の事は手紙で知らせていたが、二人の事は特に何も書かなかったのに。いつ知ったんだい?」
「?!」

しまった!!
考え事ばかりしていて、そこまで気が回らなかった!!
えーとえーと…………

「お、お二人共、お兄様と並ぶ程の実力者ですから、驚くと言うより、むしろ納得してしまって……!」

苦しいかな~
この言い訳苦しいかな~??

しかし、お兄様は「なんだ、そういう事か」と素直に受け止めてくれた。良かった。お兄様が昔と変わらず素直で良かった!

「ご友人二人が同じ寮なら、お兄様も寂しくありませんね」
「……それはどうかな。私はロゼと会えなくて寂しかったよ」
「!」

お兄様の灰色の瞳に見つめられて、思わずドキッとしてしまう。目が合う事は何度もあるのに、どうして急にドキドキしてしまうんだろう?

何故だか恥ずかしい気持ちになって、私はお兄様から目を逸らして俯いた。そして、さっきお兄様が言っていた私の今夜の寝床について、『やっぱり駄目です』と答えた。

「入ったばかりの新人騎士が『ナンバーズ』の部屋で寝るなんて、誰かにバレたらそれこそ問題になると思います。入団して早々に妬まれたりするのは嫌ですし」
「ロゼに文句を言う奴は私が……」
「だ、駄目です、お兄様!それは絶対に駄目です!!」

普段はめちゃくちゃ真面目なお兄様が、急に職権乱用?!

「と、とにかく私は星屑寮の自分の部屋で寝ますから!」
「ロゼ?!」

私はそう言い放ち、お兄様の部屋から飛び出した。別に飛び出す必要はなかったかもしれないけど、お兄様の部屋に長く留まれば留まるほど、星屑寮へ戻ることが難しくなってしまう気がして。
私はうろ覚えながら、何とか来た道を辿って星屑寮へと帰り着く事が出来た。

ちなみに、何故お兄様に追い付かれなかったのかと言うと、最初から足だけ属性特有身体強化を使用していたから。まさかお兄様も、私がガチで全力疾走するとは思っていなかったのだろう。

しかし、お兄様を振り切る程の全力疾走なんて、正直言って魔力が持たない。何度も言っているけど、私の魔力は平均並みなのだ。

「魔力が無限にあれば良かったのに……」

そうして私は、こっそりと自分の部屋に入り、二段ベッドの上で泥のように眠りについたのだった。


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