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本編

早朝の鬼ごっこ 終*ジェシーside*

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「何これ。どーゆう事なの?」

私はこの乙女ゲーム、『貴女の13人のナイト達』のヒロイン、ジェシー・バーネット。大きな茶色い瞳と栗色のふわりとした長い髪を結っているピンクのリボンがチャームポイントよ☆
私は所謂転生者ってやつで、この乙女ゲームのシナリオは全部分かってる!攻略対象者達の落とし方もね!まずは地道に好感度を上げていこうと思って、超早起きして昨日出会ったグリードを待ち伏せてみたんだけど……

『おはようございます!あの、グリード様?良ければ私に騎士団の事を教えて下さい!』
『………………自分の仕事場の者に訊け。上の者ならば丁寧に教えてくれるだろう』

あれー?
おかしいな。セリフ選択間違えた??初回は皆こんな感じだったと思うんだけど。

『…………すまないが、そこを退いてくれないか?俺は朝の鍛練に……』
『えっ?!あ!じゃあご一緒させて下さい!!』
『何?』
『二人っきりで鍛練しましょ?』

…………グリードが固まってる。ちょっと今の言い方だと、グリードには刺激が強すぎたかしら?色恋沙汰には疎いキャラだったものね。

『…………もう、いい。別の場所に行く』
『へ?……って、足早っ?!もう居ないし!!忍者?!でも、グリードのお気に入りの場所ならぜーんぶ知ってるんだから!!』

こうして、私とグリードの鬼ごっこが始まったのよ。どうして逃げるのかしら?でも、行く先々で会えばグリードも運命だって気が付くかもしれないよね。ヒロインは諦めない精神が大事♪


そう思ってひたすら追い掛けていたら、途中でオリバーも鬼ごっこに参戦!まとめて好感度を上げるチャンス?!私は自分自身に回復魔法をかけてから、この機を逃すまいと必死に走り続けて二人を探し回った。そして、やっと目撃情報を掴み、第三訓練場の休憩所へやって来たのに。

本当に二人がいるのか確かめる為に、外にある窓から中の様子を窺ってみたら、知らない男の子を、まるで二人が取り合っているみたいな、そんな構図なんだもの。

「何これ。どーゆう事なの?」

と、ここで冒頭が来るわけ。
……確かにここは騎士団だから、BLに走る騎士だっているだろうけどさ。攻略対象者の二人が美少年を取り合うっておかしくない?そこ!そこの美少年、私と代わって!!むしろそこ、元々私の場所だから!!返してよ!!

「もー!中の声、全然聞こえない!!あの美少年は誰なの?!」

そう思って、私は窓から少し離れて、休憩所の近くに新人騎士が居ないか、辺りをキョロキョロと見回した。すると、近くに長身でキャラメルアッシュな髪色の新人騎士と、それなりに整った顔立ちの藍色の髪色をした新人騎士を見つけた。私は二人に近寄って「ちょっと!」と声をかける。

すると、長身の新人騎士の方が、私を見て「げっ」と言った。げって何よ、げって。失礼な。こんな美少女に声をかけてもらえるなんて、一生に一度の幸運よ?超ラッキーなのよ?私は苛々しつつも声をかけた二人に視線を向けて、二人が応えてくれるのを待った。

「ロイ!こいつ、昨日のヤバイ奴じゃねーか?!」
「ああ。多分そうだな、アレク。……新人の治癒師がこんな所で何をしているんだ?」
「いいから、ちょっとこっちに来て!」
「?!」
「ロイ?!」

もうこいつでいいわ!
私はこのロイって奴の腕を引いて、休憩所の窓の前まで連れていった。私達のすぐ後ろに、アレクと呼ばれた新人騎士もついてくる。さっきの失礼な態度は照れ隠しか何かかしら?それにしては乙女心が分かってなさそうよね。

「おい!本当に何なんだ?!」
「ちょっと、そこの窓から中を覗いて見てよ!私のグリードとオリバーに挟まれてる、あの子は誰なの?!」
「は?」
「グリード先輩とオリバー先輩?」

そう言って窓を覗きこんだ二人は、一瞬だけ驚いたような顔をした後、私の質問に答えたのはアレクの方だった。

「あの挟まれてるのは俺達の親友のセルジュだ。オリバー先輩の従兄弟だよ」
「……なんですって?」

オリバーの従兄弟?!
そんな子、ゲームに居た?!でも、従兄弟ならあの美少年な容姿も納得出来る。それにこれって、まさかまさかの隠しキャラなんじゃない?オリバーの従兄弟だなんて、絶対に隠しキャラよ!!そうに違いないわ!!何か気に入らないと思ったけど、隠しキャラなら仕方ないわよね。いずれあの子も、私を好きになる訳だし。

私がそう考えていると、美少年の事をセルジュだと教えてくれたアレクが、にこりと笑みを浮かべながら私との距離を詰めてきた。
ちょっと!私、モブには興味ないんだからね?!……でも、アレクもロイも、よく見ると割りと格好いいかも?暇潰し相手として落としておこうかしら?

「で?」
「な、何よ?……ああ、もしかして教えたご褒美が欲しいの?ほっぺにチューくらいならしてあげてもいいわよ」
「そうじゃねーよ。……セルジュの事を知ってどうする気?セルジュに何かするつもりなら、ただじゃ済まさないよ?」
「?!」
「お前のキスなんていらないよ。ここは騎士達の訓練場だ。男を追い掛けたいなら、ここから出て他所でやれ。……セルジュには近付くな」
「な、何なのよ、あんた……」
「忠告したからな。分かったら、とっとと失せろ」
「……っ!」

私の鬼ごっこは、全く関係無いモブの新人騎士によって強制終了させられた。何なのよ、あいつ!今に見てなさい!その内『ナンバーズ』と『ガーディアンナイト』はみーんな私の騎士になるんだから!!そうなったら、あんな新人騎士の一人や二人、すぐに追い出してやるわ!!
覚えてなさい!!


* * *
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