悪役令嬢は王太子の溺愛に気付いていない

はる乃

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本編

尊すぎる最推し*ディアナside*

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「尊いっ……!」
「……え??」

リーンハルト殿下が、あっという間に脅迫状の実行犯であるベランジェ卿と、その取巻き達を鮮やかに倒してしまった。

(やっぱりリーンハルト殿下はリーンハルト殿下なのね……!)

尊すぎる。
まるで映画のワンシーンを見ているかのようだった。

しかも、やはりどうしたって彼が自分の最推しである、あのリーンハルト殿下なのだと再認識してしまった。
3次元であっても、断然推せる!!
私の嫁!!
今ならいくらでも貢げるお金があるのに、この想いを一体どこにぶつければいいの?!

「ディアナ?」

少しだけくせっ毛な金髪がふわりと揺れて、輝く金色の瞳に覗き込まれ、私はハッと我に返った。
「あ、あの、お怪我は御座いませんか?」と躊躇いつつも、慌てて問い掛けてみる。
もしかしたら手足に怪我をされてしまったかもしれないのに、こんなに浮かれてしまうなんて……!

私の人でなしっ!!

私が内心で己の愚かさを呪っていると、リーンハルト殿下は私の質問に驚いた様子で、目を丸くした。
しかし、それはほんの一瞬で、すぐにまた様子が変わっていく。

「り、リーンハルト殿下……?」

殿下の金色の瞳が更にキラキラと輝きを増し、その端正な顔には蕩けるような微笑みが浮かんでいる。
あまりの神々しさに直視出来ず、たじろいで私が一歩引くと、リーンハルト殿下が嬉しそうにこう言った。

「僕を心配してくれるの?」

え??

「は、はい。勿論です」
「ディアナが僕の心配をしてくれるなんて、夢のようだ!本当に、凄く嬉しいよ……!」

いや、大袈裟過ぎるでしょ。
本当に心底喜んでいるように見えるリーンハルト殿下に、私は動揺し困惑した。
私ってそんなに冷たい女だと思われていたの??

確かに、今まで散々殿下を避けてきたから、冷たい女だと思われていてもおかしくはないけれど。

「さて。身の程知らず共は成敗したし、そろそろ…………ああ、そうだ。きみ
「ひっ?!は、はいいい!!」
「流石に僕が誰なのか、もう分かっているよね?」

白目を剥いて倒れているベランジェ卿や取り巻きABの二人から離れた位置で腰を抜かす取り巻きCに、リーンハルト殿下は口角を上げてにこりと微笑んだ。

やだ。
ちょっぴり黒い感じが堪らない。

地面に座り込んでいた取り巻きCは、リーンハルト殿下に声を掛けられた後、即座に体勢を変えて土下座の勢いで頭を垂れ、額を地面に擦り付けている。

「わ、分かっています。本当に申し訳ありませんでした、リーンハルト殿下……!」
「うん。分かればもういいよ。でも……」
「?!」

微笑んではいるけれど、彼を見るリーンハルト殿下の瞳は全く笑っておらず、まるで『今すぐに息の根を止めてやる』と死刑宣告されているかのような錯覚を覚える。
それ程までに、リーンハルト殿下の瞳は冷えきっていた。

「次は容赦しない。……ベランジェ卿が目覚めたら、そう伝えておくように。」
「は、はぃ……っ!必ず伝えます!」
「宜しくね。行こう、ディアナ」
「……はい、リーンハルト殿下」

促されるがままにその場から離れた私だったけれど、後になってリーンハルト殿下がごく自然な動作で私の腰を抱いている事に気付いてしまった。

取り巻きCに対するあの冷たい瞳のリーンハルト殿下に、私が前世で愛しすぎていた某声優様のお声の魅力があまりに凄まじく、腰を抱かれていた事に全く気付いていなかった……!!

どうしよう?
どうすればいいの?

チラリと隣にいるリーンハルト殿下を見上げると、未だに蕩けてしまいそうな笑みを浮かべているし……!
時期的に、リーンハルト殿下は既にヒロインと仲を深めている筈なのに、一体どうして??

というか、いつになったら離してくれるの??
まさか、馬車乗り場までずっとこのまま?

ムリムリムリ!
無理だから!!
心臓持たな…………

「ディアナ。心配だから、今日は家まで送らせて欲しい」

?!

「り、リーンハルト殿下がそこまでなさらなくても……」
「何故だい?僕はディアナの婚約者だ。ベランジェ卿の事や、資材室に閉じ込められた事があったばかりなのだし、不安に思うのは当然だろう?」
「そ、それは……!ですが……」

馬車の中で二人きりになるのだけは避けたい。
私の表情筋もそろそろ限界なのだ……!

しかし、神は時として無情である。
リーンハルト殿下の輝く微笑みを前にして、断る事など出来る筈もない。

「で、では………………宜しく、お願い致します…………!」



嗚呼っ!!
神様…………!!!



* * *
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