悪役令嬢は王太子の溺愛に気付いていない

はる乃

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本編

ディアナの決意*ディアナside*

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「もう、僕から逃げないで。ディアナ」

逃げないで。
そう口にしたリーンハルト殿下の表情に、私は言葉を詰まらせた。
彼はいずれ、ヒロインと結ばれる。
私はリーンハルト殿下にとって、結ばれない初恋の人。ううん、ゲームのシナリオと違って、私はずっと殿下を避け続けてきたから、初恋の人ですらない。
……その筈なのに。

どうしてそんなに、苦しそうな顔をしているの?

「リーンハルト……殿下……?」

私はリーンハルト殿下を真っ直ぐに見つめて、名前を呼んだ。
ただそれだけ。たったそれだけなのに。

「……やっと、僕を見てくれたね」

本当に嬉しそうに、リーンハルト殿下はその端正な顔を綻ばせた。

そうして、私は理解した。
分かっていたつもりだったけれど、私は、本当は何も分かっていなかった。

“もう男なんてウンザリ”。
“3次元の男なんて、皆一緒よ”。
“もう傷付くのはまっぴらごめんだわ”。

傷付きたく無かった。
傷付くのが怖かった。
だけど、それらは全部、私が私の事しか考えていなかったという事で。

脅迫状でリーンハルト殿下が傷付く事を阻止したかった。
ちゃんちゃら可笑しい話だわ。
私自身が、ずっとずっとリーンハルト殿下を傷付けてきたのに。

理由さえ分からないまま、婚約者に避けられ続けたら、誰だって傷付く筈だ。

彼はいずれヒロインと結ばれるから。
どうせフラれて傷付くのは私だから。
むしろ、これだけ避け続ければ、殿下から不興を買って無理矢理にでも婚約破棄してくれるだろう。そうすれば、私は問題有りな令嬢として結婚出来なくなり、一生独身でいられるかもしれない。

――――なんて身勝手な考え方。
私、実はめちゃくちゃ最低じゃない?

(でも……)

理屈じゃなかった。
男の人が怖いのは事実だし、前世を思い出した当初は、執事のレインにだって怖くて近付けなくて、慣れるまで何年も掛かった。

けど、だからと言って、リーンハルト殿下を一方的に傷付けていい訳じゃない。
ヒロインとの事も気になるけれど、今は…………

「ディアナ?」

リーンハルト殿下を、彼を、これ以上傷付けたくないから。


「……リーンハルト殿下の仰る通り、私は男性が苦手で……ううん、男性が怖くて。ずっと逃げておりました」
「!」
「殿下の事も、避けておりました。婚約者の身でありながら、これまで沢山傷付けてしまい、大変申し訳ありません。……心から、謝罪致します」
「……っ。ディアナ、僕は君に謝って欲しい訳じゃないんだ。ただ、これから少しずつでも……」
「これからは、避けません」

私の言葉に、リーンハルト殿下は目を見開いて固まった。

でも、私はもう決めた。
身勝手に身勝手を重ねるような所業かもしれないけれど。
幸いにも、私はまだこの世界で一度も男性に傷つけられた事が無い。
半年後、もしもリーンハルト殿下がシナリオ通りにヒロインを選んで、私との婚約破棄を望んだとしても、それならそれで受け入れよう。
元々、そのつもりだったのだから。

「男性が怖いと思う気持ちを消す事は難しいですが、これからは出来る限りリーンハルト殿下と向き合っていきたいと思います」
「ディアナ……」
「ですから、どうか……」

好きになるのが怖かった。
好きなって、傷付くのが怖かった。
だけど、覚悟を決めよう。

「これまでの私の非礼を、お許し下さいませ。」

傷付いたって構わない。
その相手が、他でもないリーンハルト殿下なのだから。

「……非礼だなんて……」

そうして私は、ハッと気付いて青褪めた。

「あっ。……いえ、許していただくなど、厚かましいですよね。私ったら、また身勝手な事を……!本当に申し訳ありません……!」

何で許して欲しいだなんて言ってしまったのだろう?
あああああ!!
私ってどれだけ身勝手で自分本位なの?!マジで最低過ぎるでしょ!!

「え?いや、あの、ディアナ?」
「お怒り、ですよね?あの、では、ええっと……」
「お、落ち着いて、ディアナ。僕は別に怒ってなんか……」
「罰をお受け致します。私に出来る事であれば、何でも・・・致しますので……!」
「えええっ?!」


……あれ?
何でかリーンハルト殿下が石みたいに固まっちゃったんだけど。

なんで??


* * *
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