【R18】傷付いた侯爵令嬢は王太子に溺愛される

はる乃

文字の大きさ
13 / 59
本編

ヒロインは地獄へ落ちる*シュゼットside*

しおりを挟む


「なんで?」

どうして、こんな事になったの?
私はただ、フェリクスを攻略しただけなのよ?
それだって、一番好きなシュナイゼル様が居ないから、フェリクスで我慢してあげたのに。

「私はヒロインなのよ……?」

顔を上げて身動ぎすると、四肢に繋がれている鎖がカシャンと音を立て、地下深くの独房内に小さく響き渡った。

……もう何日もお風呂に入っていない。
身体中が痛いし、服もボロボロ。
一体いつになったら解放されるの?

そう思ったところで、拷問官と、自分に何度も刃を突き立ててきたフェリクスを思い出し、私はぶるりと身を震わせた。

「……全部、あの女のせいよ。あの女が、ちゃんとシナリオ通りに動いてくれないから……っ!」

あの女。
フェリクスの婚約者で、ヒロインを虐めて断罪される、悪役令嬢のマリアンヌ。
最初から、あの女はフェリクスや他の攻略対象者達とも仲が良くて目障りだった。いくら彼等に、あの女に近付かないでと言っても、『彼女とは友人だし、殿下の婚約者だからね』なんて言って、どいつもこいつも聞く耳を持たなかった。仕方ないから、あの女の事は放置して、コツコツとイベントの回収をして好感度を稼いでいたけど。

好感度を上げる選択肢の言葉を口にしても、みんなポカンとした顔しちゃって、最初の頃は本当に好感度が上がっているのか分からなかった。
でも、イベントの日になると、攻略対象者達は必ずその場所に居た。だから私も、めげずにイベントを回収し続けた。そして――――

『フェリクス様、大好きです。私と結婚して、幸せになりましょう?』

最後のイベントを回収した後、そう言った私に、フェリクスは答えてくれた。
画面に映っていた、ゲームの中のフェリクスそのままに。

『勿論だよ、シュゼット・・・・・。君を愛している。私と結婚してくれ』

最初は何故だか頭を押さえて、凄く体調が悪そうだった。でも、すぐに治ったみたいで、私を受け入れてくれたのに。

「私は、何を間違えたの?」

私に蕩けるような笑みを浮かべて甘やかしてくれたのに、会う機会が減っていくと、次第に表情が冷たくなっていった。
身体を許した時も、彼は喜んでいた筈なのに、何故か中出しもしなかった。彼のアレには、癒しと更なる快楽を与える効果があるって、ファンディスクについていたオマケの設定資料に書いてあったのに。
『中に沢山出してね』って言ったのに、フェリクスは一瞬だけ、ぼうっと呆けたかと思ったら、まるで私の話なんて聞いてなかったかのように、避妊具のゴムらしきものをつけていた。

『婚約もまだだし、ちゃんと避妊しておかなきゃね』なんて言って。

なんで??

フェリクスとはそれ一回きりだった。それから数ヵ月経って、いい加減王太子妃にして欲しいと次げたら、突然拘束されて、こんな所に押し込められて。
鎖で繋がれ、回復魔法つきの拷問が始まった。

魅了の魔法?
私はただ、イベント通りに攻略していただけよ。
マリアンヌも、フェリクスも、他の攻略対象者達も、最初からゲームと違ったけど、ゲーム通りにイベントは起こり、最後にはフェリクスを攻略出来た。

という事は、やっぱり私はヒロインで、世界は、神様は、私を望んでるって事よ。

「そうよ、神様が望んだのよ。私は選ばれたヒロインで、私が望むように幸せになれって……!」

「……貴様のソレは、神の望みなどではない。“呪い”だ」

私の肩が、ビクリと跳ねた。
この声は……

「フェリクス……?」

顔を上げると、そこにはまるで人が変わってしまったかのように、酷く血色の良いフェリクスが居た。その背後には、いつもの黒いマントに、すっぽりとフードを目深に被った拷問官も居る。

また、拷問が始まってしまうの?

「嫌っ……!もう止めてよ!!私は悪い事なんてしてないわ!!それに、話す事なんてもう何も無いわよっ!!」
「その通りだ」

――――え?

私は耳を疑った。
まさか、やっと分かってくれたの?
やっと解放してくれるの?

男爵家がどうなってるか分からないけど、どこだって、こんなところで拷問を受け続けるよりマシよ。

フェリクスは、あの日のように蕩けるような笑みを浮かべてくれていた。
嗚呼、やっと終われるのね。
やっと――――……

「フェリ……」
「もう貴様に訊く事は何も無い。此処での拷問は終了した。後は、処分・・だけだ」

しょぶん?

しょぶんってなあに?
しょぶんってどういうこと?
私は解放されるんでしょ?

私はヒロインなのよ?
この世界の中心よ?

しょぶんって――――


「……シュゼット。貴様は言ったな?マリアンヌは、悲惨な最期を迎えるのが運命だと」
「まり……あんぬ?」

あの女が何だって言うのよ。

「覚えてないか?まぁいい。その悲惨な最期とやらは、貴様にくれてやろう」

は?
何を言って……






「存分に味わうといい」







…………私はそのまま、魔法封じの枷をつけられたまま、拷問官に連れ出された。
どこだか分からない所で、美少女だと称賛されていた顔を、信じられないような醜い顔に変えられて。

拷問官の男は、いつか私と関係を持った、フェリクスの護衛騎士の一人だった。
フェリクスに相応しい女かどうか見極める為に、国王の命令でわざと私を誘い、関係を持ったのだと言われた。


何よソレ。



そうして、私は地下深くの独房よりも酷い所へ投げ込まれた。

地獄のような場所に。


否。





――――地獄に。





* * *
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日

クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。 いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった…… 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新が不定期ですが、よろしくお願いします。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...