【R18】傷付いた侯爵令嬢は王太子に溺愛される

はる乃

文字の大きさ
15 / 59
本編

二人の決断★

しおりを挟む


「マリアンヌ……!」
「あっあっ……♡ふぇりくす、さま……っ」

じゅぶじゅぶと室内に淫靡な水音が響き渡る。
そこは王太子宮の客室ではなく、王太子であるフェリクスの寝室だった。マリアンヌはあの後、あれよあれよという間に客室からフェリクスの部屋の続き部屋へと滞在場所を移されてしまったのだ。

王太子の部屋の続き部屋とは、正しく王太子妃だけが使える部屋。
戸惑うばかりのマリアンヌに、フェリクスはどんな形でも良いから自分の隣に居て欲しいと、続き部屋を使うように言って譲らなかった。

そして、マリアンヌはあれから毎晩フェリクスに愛されてしまっている。それはもう、ここから出て行こうと思っているマリアンヌの考えを見透かしているかのように。

「マリアンヌ、気持ち良い?こんなに濡らして、君の身体は本当に素直だね」
「ああっ♡そこ、ばっかり……っ……やぁ、んん♡」

フェリクスはマリアンヌの秘処を下着越しに手の平全体を使って優しく熱心に、円を描くように撫でていく。花芽や蜜口が擦れて、撫でられているだけなのに気持ちが良い。
フェリクスが手の平を動かす度に、蜜を吸った下着のせいか、じゅぶじゅぶぐじゅぐじゅと淫靡な音が出てしまうのだ。

「……ほら、恥ずかしい音が聞こえるね。愛しいマリアンヌ。もっともっ私に感じて乱れて見せて」
「だ、め……フェリクス様……♡こんな、音……ああんっ♡♡」

フェリクスに足の先から頭のてっぺんまで、全て隈無く愛されて。
毎夜毎夜、孕んでしまう勢いで子種を注がれて、マリアンヌは身も心も満たされてしまっていた。
王族の子を孕む訳にはいかない。
深い快感に溺れながらも、必死に理性をかき集めて、弱々しく抵抗を試みる。

「挿れるよ、マリアンヌ」
「孕ん、じゃう……フェリクスさま、だめ……っ♡……こども、出来ちゃ……」
「マリアンヌと私の子は、さぞかし可愛くて愛らしいだろうね。何人欲しい?……嗚呼、こんなにヒクつかせて。欲しくて堪らなかったんだね、マリアンヌ。今、奥まで挿れてあげるから……っ♡」
「ひっ♡♡あぁああっ♡♡♡」

ズンッ!!と奥まで挿入されて、あまりの気持ち良さに、それだけで達してしまった。ビクンッと背中を仰け反らせて太腿を痙攣させると、フェリクスが苦し気に切ない吐息を漏らす。

「……っ……挿れただけで達してしまうなんて、マリアンヌは本当に……」

フェリクスがペロリと舌舐りするように自身の唇を舐める。彼の空色の瞳には獰猛な熱が宿り、腰を打ち付ける度に艶やかに煌めく銀色の髪が、さらさらとマリアンヌを擽る。

彼の逞しく靭やかな体躯も、甘い声音も、熱の籠った瞳も、全てが愛おしくて堪らない。自分を求めて向けられる情欲さえ、どうしようもなく嬉しくて。

マリアンヌの瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。

「マリアンヌ……?どこか痛かったのかい?」
「違っ……フェリクス様、私……!」
「うん?」

優しくマリアンヌを気遣ってくれるフェリクスに、マリアンヌはぎゅうっと縋るように抱きついた。
そうして、息を呑んだフェリクスに、胸の内に抱えていた想いを吐露する。

「お願いです。……私は、私は貴方に相応しくないのです。だから、だからもう私を……」
「……すまない、マリアンヌ」

フェリクスは謝ってから、マリアンヌをぎゅうっと抱き締め返して、再びゆるゆると腰を動かし始めた。

「やっ……だ、め……♡だめ、なのぉ♡♡」
「……私は、もう君を手離すつもりは無い。知ってるよ。父上に頼んで、私の前から消える準備をしていたのだろう?」
「……っ」

マリアンヌの身体がビクリと強張る。けれど、すぐに最奥をトントンと優しく突かれて、マリアンヌは身体を弓形にしならせた。

「ひうっ♡♡」
「…………王太子妃に、ならなくてもいい。無理して公の場に、出なくてもいい。だから……っ」
「止まっ……!……はな、しを……っ……んっ♡♡~~~っ♡♡♡」

――――いなくならないで、マリアンヌ。

フェリクスは全て気付いていた。
だからこそ、マリアンヌを繋ぎ止めておく為に、毎夜深く深く愛した。
いっそ、子を孕めばいいとさえ思った。マリアンヌとの子が欲しいのは本当であるし、そんな理由が無くてもフェリクスは毎夜マリアンヌを欲しただろうけれど。
……マリアンヌが消える準備をしていると知った時、心臓が抉られてしまうかのように痛んだ。

彼女が居なくなってしまったら、消えてしまったら、耐えられない。

フェリクスが己の子種を達したばかりのマリアンヌの中へドクドクと吐き出すと、マリアンヌはお腹の奥に強烈な快感を感じて続けざまに嬌声を上げて達してしまった。
とろとろに身体を蕩けさせて、恍惚とした表情のマリアンヌに、フェリクスはちゅっと触れるだけのキスをする。そして――――

フェリクスはマリアンヌに、ある事実を告げた。

「……マリアンヌ。知っているかもしれないが、隣国のヴァルリア王国が数年前から怪しい動きをしている」
「ヴァルリア……王国……」

確かに、在学中にもその噂は耳にしていた。
マリアンヌは眠気に誘われていた己を律して、フェリクスの話に集中する。

「恐らく、年内には戦争になるだろう。私はそこで陣頭指揮を執る。……マリアンヌに、待っていて欲しい。そして戻ってきたら」

マリアンヌのお腹の奥が、まるで気持ちと連動するようにキュンと疼いた。

「今度こそ、君を私だけの花嫁に。」

フェリクスが戦争に赴けば、いつでも逃げ出せる。
けれど、このまま何もせずに、消えたくない。
彼はその命を賭して、国の為に、民の為に戦おうとしている。
そして、その先にマリアンヌを望んでいるのだ。

マリアンヌは、己の意思を固めた。
これが、神に課せられた罰であるとするならば、命を賭すのは自分も一緒だと。

「……待ちません」

マリアンヌの返事に、フェリクスは一瞬、その端正な顔を絶望に染めた。しかし、次いで発せられたマリアンヌの言葉に、息を吹き返して瞠目する。

「私も、行きます。行かせて下さいませ」
「……マリアンヌ……?」
「非力な女の身である私に、剣を持つ事は出来ないけれど。雑用でも、負傷者の手当てでも、何でも致します。ですから、どうか」

魅了の魔法をかけられ、愛する者を裏切ってしまった王太子。
穢れた身となり、愛する人との未来を捻じ曲げた元凶である少女に、罰が下る事を望んだ元侯爵令嬢。

全てを元通りには出来ないけれど。

「……それが、君の望みなのかい?マリアンヌ」
「足手まといにならぬよう、どんな事であっても学びます。私も、フェリクス様の為に、民の為に、出来る事がしたいのです」

フェリクスは、マリアンヌを眩しそうに見つめ、瞳を細めた。

「……君は本当に、王太子妃になるべくして生まれたような女性だね」
「穢れた身でありながら、王太子妃になど、恐れ多いです」
「何度でも言うよ、マリアンヌ。君は穢れてなんかいない。『王族に嫁ぐ令嬢は処女でなければいけない』なんて古いしきたりなんか、気にする事はない。それに、君は最初、綺麗にして欲しいと言っただろう?」

胸に降り積もるフェリクスの言葉。
マリアンヌはフェリクスの胸に顔を埋めた。込み上げて、瞳からポロポロと零れ落ちていく透明な涙が、少しずつ少しずつマリアンヌを慰めていく。

辛かった過去の日々は消えない。
今でも心の中に残る傷は、じくじくと痛むけれど。

フェリクスが居てくれる今は、もう一人じゃないから、寂しくない。
フェリクスに愛される夜は、独りで泣く事もなく、朝までずっと幸福感で満たされている。
朝までずっと、フェリクスがその腕に抱いていてくれるから。

「私が抱く事で、マリアンヌが綺麗になったと思ってくれるなら、何度でも私が綺麗にしてあげるよ」
「フェリクス……さま……」
「もっともっと愛させて、マリアンヌ。いくら愛しても、愛し足りない。愛してるよ、マリアンヌ」
「私、も……」
「……言って、マリアンヌ。君の口から聞きたい。何度でも」
「愛して、います。フェリクス様。貴方を……愛しています」

そうして、二人は再び愛を確かめ合った。
来るべき日が来ても、二人の想いが、もう二度と、決して離れないように。


* * *
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日

クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。 いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった…… 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新が不定期ですが、よろしくお願いします。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...