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本編
二人の決断★
しおりを挟む「マリアンヌ……!」
「あっあっ……♡ふぇりくす、さま……っ」
じゅぶじゅぶと室内に淫靡な水音が響き渡る。
そこは王太子宮の客室ではなく、王太子であるフェリクスの寝室だった。マリアンヌはあの後、あれよあれよという間に客室からフェリクスの部屋の続き部屋へと滞在場所を移されてしまったのだ。
王太子の部屋の続き部屋とは、正しく王太子妃だけが使える部屋。
戸惑うばかりのマリアンヌに、フェリクスはどんな形でも良いから自分の隣に居て欲しいと、続き部屋を使うように言って譲らなかった。
そして、マリアンヌはあれから毎晩フェリクスに愛されてしまっている。それはもう、ここから出て行こうと思っているマリアンヌの考えを見透かしているかのように。
「マリアンヌ、気持ち良い?こんなに濡らして、君の身体は本当に素直だね」
「ああっ♡そこ、ばっかり……っ……やぁ、んん♡」
フェリクスはマリアンヌの秘処を下着越しに手の平全体を使って優しく熱心に、円を描くように撫でていく。花芽や蜜口が擦れて、撫でられているだけなのに気持ちが良い。
フェリクスが手の平を動かす度に、蜜を吸った下着のせいか、じゅぶじゅぶぐじゅぐじゅと淫靡な音が出てしまうのだ。
「……ほら、恥ずかしい音が聞こえるね。愛しいマリアンヌ。もっともっ私に感じて乱れて見せて」
「だ、め……フェリクス様……♡こんな、音……ああんっ♡♡」
フェリクスに足の先から頭のてっぺんまで、全て隈無く愛されて。
毎夜毎夜、孕んでしまう勢いで子種を注がれて、マリアンヌは身も心も満たされてしまっていた。
王族の子を孕む訳にはいかない。
深い快感に溺れながらも、必死に理性をかき集めて、弱々しく抵抗を試みる。
「挿れるよ、マリアンヌ」
「孕ん、じゃう……フェリクスさま、だめ……っ♡……こども、出来ちゃ……」
「マリアンヌと私の子は、さぞかし可愛くて愛らしいだろうね。何人欲しい?……嗚呼、こんなにヒクつかせて。欲しくて堪らなかったんだね、マリアンヌ。今、奥まで挿れてあげるから……っ♡」
「ひっ♡♡あぁああっ♡♡♡」
ズンッ!!と奥まで挿入されて、あまりの気持ち良さに、それだけで達してしまった。ビクンッと背中を仰け反らせて太腿を痙攣させると、フェリクスが苦し気に切ない吐息を漏らす。
「……っ……挿れただけで達してしまうなんて、マリアンヌは本当に……」
フェリクスがペロリと舌舐りするように自身の唇を舐める。彼の空色の瞳には獰猛な熱が宿り、腰を打ち付ける度に艶やかに煌めく銀色の髪が、さらさらとマリアンヌを擽る。
彼の逞しく靭やかな体躯も、甘い声音も、熱の籠った瞳も、全てが愛おしくて堪らない。自分を求めて向けられる情欲さえ、どうしようもなく嬉しくて。
マリアンヌの瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。
「マリアンヌ……?どこか痛かったのかい?」
「違っ……フェリクス様、私……!」
「うん?」
優しくマリアンヌを気遣ってくれるフェリクスに、マリアンヌはぎゅうっと縋るように抱きついた。
そうして、息を呑んだフェリクスに、胸の内に抱えていた想いを吐露する。
「お願いです。……私は、私は貴方に相応しくないのです。だから、だからもう私を……」
「……すまない、マリアンヌ」
フェリクスは謝ってから、マリアンヌをぎゅうっと抱き締め返して、再びゆるゆると腰を動かし始めた。
「やっ……だ、め……♡だめ、なのぉ♡♡」
「……私は、もう君を手離すつもりは無い。知ってるよ。父上に頼んで、私の前から消える準備をしていたのだろう?」
「……っ」
マリアンヌの身体がビクリと強張る。けれど、すぐに最奥をトントンと優しく突かれて、マリアンヌは身体を弓形にしならせた。
「ひうっ♡♡」
「…………王太子妃に、ならなくてもいい。無理して公の場に、出なくてもいい。だから……っ」
「止まっ……!……はな、しを……っ……んっ♡♡~~~っ♡♡♡」
――――いなくならないで、マリアンヌ。
フェリクスは全て気付いていた。
だからこそ、マリアンヌを繋ぎ止めておく為に、毎夜深く深く愛した。
いっそ、子を孕めばいいとさえ思った。マリアンヌとの子が欲しいのは本当であるし、そんな理由が無くてもフェリクスは毎夜マリアンヌを欲しただろうけれど。
……マリアンヌが消える準備をしていると知った時、心臓が抉られてしまうかのように痛んだ。
彼女が居なくなってしまったら、消えてしまったら、耐えられない。
フェリクスが己の子種を達したばかりのマリアンヌの中へドクドクと吐き出すと、マリアンヌはお腹の奥に強烈な快感を感じて続けざまに嬌声を上げて達してしまった。
とろとろに身体を蕩けさせて、恍惚とした表情のマリアンヌに、フェリクスはちゅっと触れるだけのキスをする。そして――――
フェリクスはマリアンヌに、ある事実を告げた。
「……マリアンヌ。知っているかもしれないが、隣国のヴァルリア王国が数年前から怪しい動きをしている」
「ヴァルリア……王国……」
確かに、在学中にもその噂は耳にしていた。
マリアンヌは眠気に誘われていた己を律して、フェリクスの話に集中する。
「恐らく、年内には戦争になるだろう。私はそこで陣頭指揮を執る。……マリアンヌに、待っていて欲しい。そして戻ってきたら」
マリアンヌのお腹の奥が、まるで気持ちと連動するようにキュンと疼いた。
「今度こそ、君を私だけの花嫁に。」
フェリクスが戦争に赴けば、いつでも逃げ出せる。
けれど、このまま何もせずに、消えたくない。
彼はその命を賭して、国の為に、民の為に戦おうとしている。
そして、その先にマリアンヌを望んでいるのだ。
マリアンヌは、己の意思を固めた。
これが、神に課せられた罰であるとするならば、命を賭すのは自分も一緒だと。
「……待ちません」
マリアンヌの返事に、フェリクスは一瞬、その端正な顔を絶望に染めた。しかし、次いで発せられたマリアンヌの言葉に、息を吹き返して瞠目する。
「私も、行きます。行かせて下さいませ」
「……マリアンヌ……?」
「非力な女の身である私に、剣を持つ事は出来ないけれど。雑用でも、負傷者の手当てでも、何でも致します。ですから、どうか」
魅了の魔法をかけられ、愛する者を裏切ってしまった王太子。
穢れた身となり、愛する人との未来を捻じ曲げた元凶である少女に、罰が下る事を望んだ元侯爵令嬢。
全てを元通りには出来ないけれど。
「……それが、君の望みなのかい?マリアンヌ」
「足手まといにならぬよう、どんな事であっても学びます。私も、フェリクス様の為に、民の為に、出来る事がしたいのです」
フェリクスは、マリアンヌを眩しそうに見つめ、瞳を細めた。
「……君は本当に、王太子妃になるべくして生まれたような女性だね」
「穢れた身でありながら、王太子妃になど、恐れ多いです」
「何度でも言うよ、マリアンヌ。君は穢れてなんかいない。『王族に嫁ぐ令嬢は処女でなければいけない』なんて古いしきたりなんか、気にする事はない。それに、君は最初、綺麗にして欲しいと言っただろう?」
胸に降り積もるフェリクスの言葉。
マリアンヌはフェリクスの胸に顔を埋めた。込み上げて、瞳からポロポロと零れ落ちていく透明な涙が、少しずつ少しずつマリアンヌを慰めていく。
辛かった過去の日々は消えない。
今でも心の中に残る傷は、じくじくと痛むけれど。
フェリクスが居てくれる今は、もう一人じゃないから、寂しくない。
フェリクスに愛される夜は、独りで泣く事もなく、朝までずっと幸福感で満たされている。
朝までずっと、フェリクスがその腕に抱いていてくれるから。
「私が抱く事で、マリアンヌが綺麗になったと思ってくれるなら、何度でも私が綺麗にしてあげるよ」
「フェリクス……さま……」
「もっともっと愛させて、マリアンヌ。いくら愛しても、愛し足りない。愛してるよ、マリアンヌ」
「私、も……」
「……言って、マリアンヌ。君の口から聞きたい。何度でも」
「愛して、います。フェリクス様。貴方を……愛しています」
そうして、二人は再び愛を確かめ合った。
来るべき日が来ても、二人の想いが、もう二度と、決して離れないように。
* * *
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