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本編
舞踏会当日①
「国王陛下、王妃陛下!王太子フェリクス殿下、王太子妃マリアンヌ殿下、ご入場!」
マルティス王国王宮、舞踏会の会場では、自国の外交を担当している貴族達の他、親交を深めている各国の王族達が集まっていた。
だが、特に親交を深めていない例外国の皇族もこの場に参加していた。
海の向こうにある強大な軍事国家の主、帝国の皇帝シュナイゼルだ。
背後には従者ユーリの姿もある。二人共、隣には女性のパートナーを連れており、ユーリの隣にいる女性は顔をベールでスッポリと隠している。
フェリクスとマリアンヌは各国の王族達から順番に挨拶を受け、シュナイゼル達は最後だった。
今回舞踏会を開いたのは王太子妃となったマリアンヌのお披露目が主な理由であったが、他国の者達が注目しているのはマルティス王国と帝国の繋りについてだ。
あの帝国と手を組んだとなれば、今後の対応も変わってくる。各国の王族達は、マルティス王国の王族と帝国の皇帝が一体どんな話をするのか、静かにその様子を窺っていた。
「そなたが帝国の皇帝、シュナイゼル殿か」
「ええ。私がシュナイゼルです、マルティスの国王。本日の舞踏会に我が国も招待していただき、感謝しています」
「……ゆるりと過ごされよ」
「そうさせていただく。さて、それじゃあフェリクス王太子殿下と麗しのマリアンヌ王太子妃にもご挨拶を……」
国王との挨拶を終えて、シュナイゼルがフェリクスとマリアンヌの方へ視線を移すと、次の瞬間、シュナイゼルは瞠目して固まってしまった。
「……マリアンヌ……」
思わず、小さく呟くようにその名を呼んでしまう程、マリアンヌがあまりに美しかったからだ。
そんなシュナイゼルに気付き、フェリクスがマリアンヌを守るように一歩前に出て牽制する。
フェリクスからしてみれば、予想通りの反応だった。フェリクスも、今日のマリアンヌを初めて見た時、シュナイゼルと同じ反応をしてしまったからだ。
……………………
…………
『マリアンヌ様。フェリクス様がお待ちです』
『今行くわ』
そう言って扉を開けると、部屋の外で待っていたフェリクスは美しく着飾ったマリアンヌを見て暫く固まってしまった。
ふわりとした真っ白なドレスは、あまりにもマリアンヌに似合っていた。そのドレスに合うと思って贈ったダイヤモンドの宝石がついた装飾品も、光を反射して虹色に煌めき、まるでマリアンヌの為だけに造られたかのようで。
『フェリクス様?』
『……っ。すまない……!』
『いえ。……どうかなさいましたか?』
『いや、マリアンヌがあまりにも、その……』
マリアンヌが眩しすぎて、見惚れていたフェリクスが焦りながら気持ちを伝えようとした時。
『お二人とも、お急ぎ下さい。国王陛下と王妃陛下がお待ちです』
侍女の言葉にハッとして、フェリクスは出かかっていた自身の言葉を飲み込んだ。マリアンヌが胸を高鳴らせながら期待していた事にも気付かないまま、フェリクスは『行こう』と言って、マリアンヌに腕を差し出した。
『……はい。フェリクス様』
……………………
…………
(今日のマリアンヌはあまりに美しく愛らし過ぎるからな。……マリアンヌには、決して近付かせない)
フェリクスがそう固く決心しながらシュナイゼルに鋭い眼差しを向けると、シュナイゼルもハッと我に返って、その整いすぎた美しい顔に妖艶な笑みを浮かべる。
あまりに凄まじい色香を感じて、思わずマリアンヌの頬に僅かな赤みが差す。
恐らく周囲の人間には気付かれていない。気付いたとしても、相手はあの帝国の皇帝だ。緊張してしまってもおかしくはないと、そう思われるだろう。現に、マリアンヌは姿勢よく背筋を伸ばしたまま、表情には全く焦りや不安の色を見せていないからだ。しかし。
(……マリアンヌ?)
フェリクスはその僅かな変化に気付いてしまった。
そうしてそれはシュナイゼルも同じで、嬉しそうに喜色を含んだ笑みを一瞬だけ見せてから、数歩距離を詰める。
「お姫様、お手を」
「…………」
片膝をついてマリアンヌに右手を差し出すシュナイゼル。
全てを呑み込んでしまうかのような艶やかな漆黒の髪と、血のように色鮮やかな真紅の瞳が、あの日を思い出させる。
そして、今は互いに挨拶をする場。周囲には他国の者達の目もある。
マリアンヌは一度フェリクスに視線を送ってから、シュナイゼルに右手を差し出した。
「……着飾ったお姫様は、この会場にいる誰よりも美しいな」
そう言って、シュナイゼルはマリアンヌの手を取り、ちゅっと手の甲へキスをした。
* * *
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