JKメイドは思いを告げたい。

いなりずっしー

文字の大きさ
11 / 15

プレゼント

しおりを挟む
“カップルで一緒に写真を撮れば、何でもお一つ半額で買えます!”
この宣伝が書かれた看板が立てられていた2階にある、店の看板にメイの視界に留まる。
何か気に入ったものが、あったのかメイはシュウジに体を寄せ無邪気な様子で服の袖を引っ張る。

「シュウジ様!シュウジ様!見てください、カップルだと好きな商品が半額...って、どうしてそんなに距離撮るんですか?もう怒ってないのに...」

顔を膨らませ、また機嫌を損ねてしまうメイさん。一方で、隣の僕は距離をとってメイさんの顔を見れずにいた。別に嫌悪感なんて全くないし、冗談めかして距離をとっているわけではない。
今まで感じなかったこの気持ち。それが邪魔して普段通りの対応ができなくなっていた。

自分でもこのままではいけないと分かっているだけど、どうすればこの気持ちを抑えることができるのか分からなかった。

悩んで考えるが対処法は見つからず僕はとりあえず、距離をとるという応急処置を施すことにしたのだ。

だけど、メイさんは懲りずに距離を詰めてくる。そして、

「どうしたんですか、シュウジ様らしくないですよ?」

「そんなことない...と思う。」

「いいえ、いつもと違います!」

「そんなことはないよ。いつも通りだ。別に恋したわけじゃ...はっ!」

「何を焦ってるんですかもう...はぁ...。ちょっとついてきて下さい。シュウジ様に拒否権はないですよ、さあ、ついてきてください!」

メイさんは僕の腕を強く引っ張り、目の前の店に連れ込まれた。
店内は、僕らと年齢が近いカップルが多くいた。圧倒的場違い感は否めなかったが、僕たちも他者から見ればカップルに見えているのだろうか?

それにしても...ここは何の店なんだ?メイさんに引っ張られて勢いで入ってきたけれど...
店内を見渡し確認すると、赤や青、黄色にピンク。様々な色の商品が置いてある。
「ん?...ん?ん?」
僕が目にしたものは、下着だった。もちろん、男物の下着ではない、可愛い系からセクシー系。全国の男が喜びそうな種類のブラが僕らを取り囲んでいた。

「メ、メイさん!僕先に出てます!店の出たところで待ってるから。
何の店に来たのかを知って、慌てふためく僕を、ため息交じりにこう言う。

「行かせませんよ!シュウジ様にはやってもらいたいことがあるので。」
両手を広げ、外にはいかせないと道をふさいでくる。

「やってもらいたいこと?」

「はい、目をつぶっててもらっても構いません。私がそこまで引っ張るので。」
そう言ってメイはシュウジの腕を引っ張り、店の奥にある撮影セットが置いてある場所へ行きソファーに座らされる。

「では、お願いします!」
メイさんは、そこにいた店員さんに合図を送ると、フラッシュとともに写真撮影を行われた。
唐突すぎて、ピースや笑顔は作れなかった。だけど、店員さんがメイさんに撮れた写真を見せると、満足そうな笑顔で頷いている。
そして、店員さんから何かを受け取ってこちらに向かってきて笑顔で僕に見せびらかす。

「半額券、貰っちゃいました!」

「半額券?なんの?」

「下着のです。」

「誰の?もちろん私のです。ここでしか使えないので。」

どうやら、僕は下着のために利用されたようだ。
まぁ、いつも家事してもらってるし、仕事とはいえ利用しているようなものだ。
だったら、何とも思わない。

「そうだ、シュウジ様。私の下着選んでくださいよ。」

「なんで僕が...。」

「別にいいじゃないですか。さっき、シュウジ様のために飲み物を買に行ったのに、他の女の人と会話して楽しんでたじゃないですか。それに対してのお詫びを所望します!」

腰に手を当て、顔を近づけてくるメイさんに根負けした僕は、半額券を手にして下着を選ぶことにした。


◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇


それにしても下着のプレゼントというのはいかがなものなのか?

ホワイトデーに彼氏から彼女への贈り物で下着をプレゼントすることはあるらしい。
だけど、僕らは恋人ではない。だからと言って、友達というのも何か違う気がする。強いて言うならば、知り合いというのが適切だろう。

そんな深いつながりを持たない関係なのに下着をプレゼントは、どう考えてもおかしい。
しかも、買ったといっても片手に半額券を握り締めて支払うというのは、男としてどうなのだろうか。

下着を半額券を握り締め買った羞恥心、半額券を使わず男らしく全額支払っておけばよかったという後悔。そのほかにも思うところがあるが、今はこの二つが僕の感情の大部分を占めていた。

そんな感情を抱えながら、僕は最後の行き先に向かっていた。

「シュウジ様、やっぱり私もついていきます。荷物を持ちながら、買い物をするのはつらいですよ?」

「確かにそうだな...じゃあさ、メイさんはそこのベンチでこの荷物を見ててくれないか?すぐに用事済ませて戻ってくるから。」

『最後の店』。それは、メイさんへのプレゼントを選ぶ店のことを指す。
日頃の感謝を送るために、衣服店に訪れたのだ。

あくまでサプライズとしてプレゼントを渡したいのだが、買いたいものがあるのかついてこようとしていた。買った物、買ったということを知られればサプライズにはならない。

「メイさん、お願い。ここでいて欲しいんだ。15分、いや10分だけ僕に時間をくれないでしょうか?」
メイさんには一切の事情を話すわけにはいかない。だから僕は内容を話さず、頭を下げる。

「...分かりました」
メイさんは納得いかないような表情で返答するが、ベンチに座り待つことを決めたようだった。

「ありがとう!すぐに戻ってくるから。待ってて。」

今この時間。この一瞬が僕の人生のピークだったのかもしれない。
悲しみ、恐怖、孤独、虚空。
これらの感情と全く縁のない今。
もっと話しておけばよかった、早く気持ちに気づいておけば...
そんな風に何度後悔することになる。
負の感情の連鎖が僕を苦しめることになるとは、今の僕はまったく想像できなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

処理中です...