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プレゼント
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“カップルで一緒に写真を撮れば、何でもお一つ半額で買えます!”
この宣伝が書かれた看板が立てられていた2階にある、店の看板にメイの視界に留まる。
何か気に入ったものが、あったのかメイはシュウジに体を寄せ無邪気な様子で服の袖を引っ張る。
「シュウジ様!シュウジ様!見てください、カップルだと好きな商品が半額...って、どうしてそんなに距離撮るんですか?もう怒ってないのに...」
顔を膨らませ、また機嫌を損ねてしまうメイさん。一方で、隣の僕は距離をとってメイさんの顔を見れずにいた。別に嫌悪感なんて全くないし、冗談めかして距離をとっているわけではない。
今まで感じなかったこの気持ち。それが邪魔して普段通りの対応ができなくなっていた。
自分でもこのままではいけないと分かっているだけど、どうすればこの気持ちを抑えることができるのか分からなかった。
悩んで考えるが対処法は見つからず僕はとりあえず、距離をとるという応急処置を施すことにしたのだ。
だけど、メイさんは懲りずに距離を詰めてくる。そして、
「どうしたんですか、シュウジ様らしくないですよ?」
「そんなことない...と思う。」
「いいえ、いつもと違います!」
「そんなことはないよ。いつも通りだ。別に恋したわけじゃ...はっ!」
「何を焦ってるんですかもう...はぁ...。ちょっとついてきて下さい。シュウジ様に拒否権はないですよ、さあ、ついてきてください!」
メイさんは僕の腕を強く引っ張り、目の前の店に連れ込まれた。
店内は、僕らと年齢が近いカップルが多くいた。圧倒的場違い感は否めなかったが、僕たちも他者から見ればカップルに見えているのだろうか?
それにしても...ここは何の店なんだ?メイさんに引っ張られて勢いで入ってきたけれど...
店内を見渡し確認すると、赤や青、黄色にピンク。様々な色の商品が置いてある。
「ん?...ん?ん?」
僕が目にしたものは、下着だった。もちろん、男物の下着ではない、可愛い系からセクシー系。全国の男が喜びそうな種類のブラが僕らを取り囲んでいた。
「メ、メイさん!僕先に出てます!店の出たところで待ってるから。
何の店に来たのかを知って、慌てふためく僕を、ため息交じりにこう言う。
「行かせませんよ!シュウジ様にはやってもらいたいことがあるので。」
両手を広げ、外にはいかせないと道をふさいでくる。
「やってもらいたいこと?」
「はい、目をつぶっててもらっても構いません。私がそこまで引っ張るので。」
そう言ってメイはシュウジの腕を引っ張り、店の奥にある撮影セットが置いてある場所へ行きソファーに座らされる。
「では、お願いします!」
メイさんは、そこにいた店員さんに合図を送ると、フラッシュとともに写真撮影を行われた。
唐突すぎて、ピースや笑顔は作れなかった。だけど、店員さんがメイさんに撮れた写真を見せると、満足そうな笑顔で頷いている。
そして、店員さんから何かを受け取ってこちらに向かってきて笑顔で僕に見せびらかす。
「半額券、貰っちゃいました!」
「半額券?なんの?」
「下着のです。」
「誰の?もちろん私のです。ここでしか使えないので。」
どうやら、僕は下着のために利用されたようだ。
まぁ、いつも家事してもらってるし、仕事とはいえ利用しているようなものだ。
だったら、何とも思わない。
「そうだ、シュウジ様。私の下着選んでくださいよ。」
「なんで僕が...。」
「別にいいじゃないですか。さっき、シュウジ様のために飲み物を買に行ったのに、他の女の人と会話して楽しんでたじゃないですか。それに対してのお詫びを所望します!」
腰に手を当て、顔を近づけてくるメイさんに根負けした僕は、半額券を手にして下着を選ぶことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
それにしても下着のプレゼントというのはいかがなものなのか?
ホワイトデーに彼氏から彼女への贈り物で下着をプレゼントすることはあるらしい。
だけど、僕らは恋人ではない。だからと言って、友達というのも何か違う気がする。強いて言うならば、知り合いというのが適切だろう。
そんな深いつながりを持たない関係なのに下着をプレゼントは、どう考えてもおかしい。
しかも、買ったといっても片手に半額券を握り締めて支払うというのは、男としてどうなのだろうか。
下着を半額券を握り締め買った羞恥心、半額券を使わず男らしく全額支払っておけばよかったという後悔。そのほかにも思うところがあるが、今はこの二つが僕の感情の大部分を占めていた。
そんな感情を抱えながら、僕は最後の行き先に向かっていた。
「シュウジ様、やっぱり私もついていきます。荷物を持ちながら、買い物をするのはつらいですよ?」
「確かにそうだな...じゃあさ、メイさんはそこのベンチでこの荷物を見ててくれないか?すぐに用事済ませて戻ってくるから。」
『最後の店』。それは、メイさんへのプレゼントを選ぶ店のことを指す。
日頃の感謝を送るために、衣服店に訪れたのだ。
あくまでサプライズとしてプレゼントを渡したいのだが、買いたいものがあるのかついてこようとしていた。買った物、買ったということを知られればサプライズにはならない。
「メイさん、お願い。ここでいて欲しいんだ。15分、いや10分だけ僕に時間をくれないでしょうか?」
メイさんには一切の事情を話すわけにはいかない。だから僕は内容を話さず、頭を下げる。
「...分かりました」
メイさんは納得いかないような表情で返答するが、ベンチに座り待つことを決めたようだった。
「ありがとう!すぐに戻ってくるから。待ってて。」
今この時間。この一瞬が僕の人生のピークだったのかもしれない。
悲しみ、恐怖、孤独、虚空。
これらの感情と全く縁のない今。
もっと話しておけばよかった、早く気持ちに気づいておけば...
そんな風に何度後悔することになる。
負の感情の連鎖が僕を苦しめることになるとは、今の僕はまったく想像できなかった。
この宣伝が書かれた看板が立てられていた2階にある、店の看板にメイの視界に留まる。
何か気に入ったものが、あったのかメイはシュウジに体を寄せ無邪気な様子で服の袖を引っ張る。
「シュウジ様!シュウジ様!見てください、カップルだと好きな商品が半額...って、どうしてそんなに距離撮るんですか?もう怒ってないのに...」
顔を膨らませ、また機嫌を損ねてしまうメイさん。一方で、隣の僕は距離をとってメイさんの顔を見れずにいた。別に嫌悪感なんて全くないし、冗談めかして距離をとっているわけではない。
今まで感じなかったこの気持ち。それが邪魔して普段通りの対応ができなくなっていた。
自分でもこのままではいけないと分かっているだけど、どうすればこの気持ちを抑えることができるのか分からなかった。
悩んで考えるが対処法は見つからず僕はとりあえず、距離をとるという応急処置を施すことにしたのだ。
だけど、メイさんは懲りずに距離を詰めてくる。そして、
「どうしたんですか、シュウジ様らしくないですよ?」
「そんなことない...と思う。」
「いいえ、いつもと違います!」
「そんなことはないよ。いつも通りだ。別に恋したわけじゃ...はっ!」
「何を焦ってるんですかもう...はぁ...。ちょっとついてきて下さい。シュウジ様に拒否権はないですよ、さあ、ついてきてください!」
メイさんは僕の腕を強く引っ張り、目の前の店に連れ込まれた。
店内は、僕らと年齢が近いカップルが多くいた。圧倒的場違い感は否めなかったが、僕たちも他者から見ればカップルに見えているのだろうか?
それにしても...ここは何の店なんだ?メイさんに引っ張られて勢いで入ってきたけれど...
店内を見渡し確認すると、赤や青、黄色にピンク。様々な色の商品が置いてある。
「ん?...ん?ん?」
僕が目にしたものは、下着だった。もちろん、男物の下着ではない、可愛い系からセクシー系。全国の男が喜びそうな種類のブラが僕らを取り囲んでいた。
「メ、メイさん!僕先に出てます!店の出たところで待ってるから。
何の店に来たのかを知って、慌てふためく僕を、ため息交じりにこう言う。
「行かせませんよ!シュウジ様にはやってもらいたいことがあるので。」
両手を広げ、外にはいかせないと道をふさいでくる。
「やってもらいたいこと?」
「はい、目をつぶっててもらっても構いません。私がそこまで引っ張るので。」
そう言ってメイはシュウジの腕を引っ張り、店の奥にある撮影セットが置いてある場所へ行きソファーに座らされる。
「では、お願いします!」
メイさんは、そこにいた店員さんに合図を送ると、フラッシュとともに写真撮影を行われた。
唐突すぎて、ピースや笑顔は作れなかった。だけど、店員さんがメイさんに撮れた写真を見せると、満足そうな笑顔で頷いている。
そして、店員さんから何かを受け取ってこちらに向かってきて笑顔で僕に見せびらかす。
「半額券、貰っちゃいました!」
「半額券?なんの?」
「下着のです。」
「誰の?もちろん私のです。ここでしか使えないので。」
どうやら、僕は下着のために利用されたようだ。
まぁ、いつも家事してもらってるし、仕事とはいえ利用しているようなものだ。
だったら、何とも思わない。
「そうだ、シュウジ様。私の下着選んでくださいよ。」
「なんで僕が...。」
「別にいいじゃないですか。さっき、シュウジ様のために飲み物を買に行ったのに、他の女の人と会話して楽しんでたじゃないですか。それに対してのお詫びを所望します!」
腰に手を当て、顔を近づけてくるメイさんに根負けした僕は、半額券を手にして下着を選ぶことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
それにしても下着のプレゼントというのはいかがなものなのか?
ホワイトデーに彼氏から彼女への贈り物で下着をプレゼントすることはあるらしい。
だけど、僕らは恋人ではない。だからと言って、友達というのも何か違う気がする。強いて言うならば、知り合いというのが適切だろう。
そんな深いつながりを持たない関係なのに下着をプレゼントは、どう考えてもおかしい。
しかも、買ったといっても片手に半額券を握り締めて支払うというのは、男としてどうなのだろうか。
下着を半額券を握り締め買った羞恥心、半額券を使わず男らしく全額支払っておけばよかったという後悔。そのほかにも思うところがあるが、今はこの二つが僕の感情の大部分を占めていた。
そんな感情を抱えながら、僕は最後の行き先に向かっていた。
「シュウジ様、やっぱり私もついていきます。荷物を持ちながら、買い物をするのはつらいですよ?」
「確かにそうだな...じゃあさ、メイさんはそこのベンチでこの荷物を見ててくれないか?すぐに用事済ませて戻ってくるから。」
『最後の店』。それは、メイさんへのプレゼントを選ぶ店のことを指す。
日頃の感謝を送るために、衣服店に訪れたのだ。
あくまでサプライズとしてプレゼントを渡したいのだが、買いたいものがあるのかついてこようとしていた。買った物、買ったということを知られればサプライズにはならない。
「メイさん、お願い。ここでいて欲しいんだ。15分、いや10分だけ僕に時間をくれないでしょうか?」
メイさんには一切の事情を話すわけにはいかない。だから僕は内容を話さず、頭を下げる。
「...分かりました」
メイさんは納得いかないような表情で返答するが、ベンチに座り待つことを決めたようだった。
「ありがとう!すぐに戻ってくるから。待ってて。」
今この時間。この一瞬が僕の人生のピークだったのかもしれない。
悲しみ、恐怖、孤独、虚空。
これらの感情と全く縁のない今。
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