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【声劇台本】君のためなら
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人は誰のために生き、誰のために闘うのか。
路頭に迷っていた少年が辿る、熱き旅路の物語。
※推定時間は、分かり次第記載いたします。
比率2:1:1
【登場人物】
カイト♂:道端で、上田に拾われた少年。
上田(かみだ)♂:かつては最強の殺し屋と謳われた熟年者。風術の使い手。落ち着いた話し方をする。
※一部、少年と若手の時の上田登場。
ラト・サクライ(不問):日本を良きものにするべく、殺し屋を殺し回る外道革命家。転送術の使い手。皮肉めいた話し方をする。
イズミ♀:冷静沈着な女暗殺者。ラトに忠誠を誓っており、転送術の補助役。
ナガセ♂:荒っぽい実行部隊長。暴力的だが理屈に弱い。ラトに従う理由は「面白いから」。上田と兼ね役。
カイト:♂
上田、ナガセ:♂
ラト:不問
イズミ:♀
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カイト:(M)
あの時のことは、今でもよく覚えている。
体は冷たくて、腹は減って。
でも、涙はもう出なかった。
あの路地の、朝の光の中に――あの人が現れるまでは。
上田:
何してんだ小僧。こんなとこでうずくまってたら、カラスに食われちまうぜ。
カイト:
…うるせぇよ、じいさん。僕のことなんてほっとけよ。
上田:
はは。そりゃあそうだわな。
知らんじいさんに話しかけられたら、少しは警戒するか。
…小僧、腹減ってんだろ。
いいパン屋知ってんだ。あんぱん、あったけぇぞ。
カイト:
…なんで俺に構うんだよ、じいさん
上田:
さぁな。情が湧いちまったからかな。
なんか惹かれんだ、お前さんに。
ほら、こっち来な。飯食わしたる。
カイト:(M)
何故かは分からないけど、僕はついていった。
パンを食べられるという甘い誘惑と共に、変なじいさんに。
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(数日後、上田の家にて。カイトと上田が机で食事をしている。上田が、ちゃぶ台の上に湯呑みをコトッと置く。)
上田:
でな。あのバカはカレーにキウイ入れやがったのよ。「隠し味ですっ」って自慢げに言ってな?隠し味なら隠せよっつー話だよな。へっへっへ。
カイト:(もぐもぐしながら)
はは…なにそれ。最悪じゃん。
上田:
だろう?それがな、そいつの嫁が「美味い美味い」つって言っててな。
はぁ~…。人間の味覚は信用できねぇもんだ。
カイト:
ふっ。でも…美味いよ、これ。
上田:
ははっ。そりゃあ良かった。
(間)
カイト:(M)
最近よく思うことがあるのだが、この人には不可解なことが多い。
手と腕の傷跡、皮膚の厚さ。
ドアから入ってきた時の、気配の無さ。
カイト:
…じいさん、前職って何やってた?
上田:
…聞いて驚くなよ、お前さん。
殺し屋をやっていた。
カイト:
殺し屋…
(間)
カイト:
なぁ、じいさん。僕を鍛えてくれない?
上田:
ん?急にどうした。
カイト:
強くなって、自分の居場所を作りたいんだ。
上田:
強くなってって…なんでそんなに強さにこだわるんだ。
カイト:
…くそ野郎のせいで、両親が殺されたんだ。
殺し屋を処刑するって言って、関係ない二人まで巻き込んでさ。
…そっからずっと、居場所なくして路地裏にいたんだ。
上田:
だからって言っても…。
カイト:
じいさん、頼む!僕に修練を積ませてくれ!
この通りだ!
上田:
…自分の居場所、か。なるほどな。
分かった。俺の流派である「風術」ってやつ、教えてやるよ。
カイト:
ほ、ほんと!?
上田:
ただし。厳しい訓練になるから覚悟しとけ。
カイト:
わ、わかった。僕、頑張る!
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(工場の空き倉庫にて。靴の音と扇風機の回る音が響く。)
イズミ:
また殺ったのですか、ラト様。五人も…。
しかも今回は、一般人も混ざっていました。
ラト:
彼らは「巻き込まれた」のではない。
「眠っていた」んだ。腐敗の上でね。
ナガセ:
でもよぉ、あいつらカタギだったぞ。
「殺し屋の知り合い」ってだけで殺すんか?流石にやりすぎじゃねぇの?
ラト:
腐敗の根は太いんだよ、ナガセ。
腐った土では、何も育ちやしない。
だから、抜き取るしかないんだよ。根こそぎにね。
イズミ:(手帳を見ながら)
次は……「上田」。例の風術の老人ですね。
名前はいまだに聞きますが、もうすっかり面影ないですね。
ラト:
ああ。彼は最も古い毒だ。もう殺し屋から足を洗っているらしいがね。
彼の存在そのものが、私の革命の邪魔になる。
そろそろ、抜く頃合いだね。
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(上田家、庭先の早朝。鳥の囀(さえず)りが聞こえる中、カイトが竹ぼうきで掃いている。)
カイト:(ぼやくように)
なんで朝から庭の掃除なんだよ。
全然訓練じゃねえじゃん。あのじいさん、ホラ吹きやがって。
上田:
風術の極意は「流れを読むこと」だ。
まずは空気を読む修行からだぞ、カイト。
カイト:
それただの親父ギャグじゃんか、じいさん。
上田:
ぶつぶつ文句を言うんじゃあない。
カイト:
だって事実だもーん。
上田:
お、今の風、東南東。次枯れ葉くるぜ。
カイト:
えっ?
(風がふわっと吹き、落ち葉が流れてくる)
カイト:
…本当にきた。なんだこれ。
上田:
自然の流れを感じろ、カイト。
感覚を研ぎ澄ませて、風の流れを感じんだ。
そうすりゃあ、もっといろんなことがわかるようになるさ。
カイト:
………
(間)
カイト:
じいさん………ほんとに、なんで僕なんかを拾ったの?
上田:
言っただろ?情が湧いたんだよ、お前さんに。
誰にも頼れず、でも目だけは死んでいない。
そんなやつを野放しにすることは、できないさ。
カイト:
………
上田:
所詮俺は落ちぶれた人間さ。
でもな、カイト。昔と比べたら、これでも少しはマシになったんだ。
おかげで、お前さんみたいなやつと巡り会うことができた。嬉しく思うよ、カイト。
カイト:
ありがとう、じいさん。僕も感謝してるよ。
上田:
よぉし、その調子だ。
そのまま風の流れを読みながら、箒(ほうき)を動かせ動かせ!
カイト:
…やっぱただの掃除係させられてるだけじゃない?
上田:
そんなことはない!決してない!
あ!ほら、手が止まってるぞ。動け動け!
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(廃工場跡、革命拠点。壁には地図や写真がびっしりと貼られている。辺りで鉄骨の軋む音が鳴り響いている。)
イズミ:
標的リスト、更新されました。
民間情報からの報告です。上田はまだ活動中とのことです。
ただ…何故かパン屋を営んでいるそうです。
ナガセ:ん~!?あのジジイがパン屋だってぇ?
ハハハ!(手や膝を叩いて笑う)
あの殺し屋じいさん、変なことしてやがんの。
イズミ:
それと、「後継者らしき少年」の存在も確認されました。
名前は、カイト。
(ラトが無言で写真を見つめる)
イズミ:
?
ラト様、如何なさいましたか。
ラト:
(静かに)風術の継承者、か。
上田め、面倒なことしてくれる。
このカイトって子も、放っておけないね。
イズミ:
処分しますか?彼も上田と同じく、「旧世代」の者として。
ラト:
(目を細めて)そうだね。
(間)
ラト:
「君」のために、私はやらねばならない。
ナガセ:
はぁ…まぁた始まったよ。
ラト:
分からないかい?君たちは。
この国は腐っている。裏社会の人間共はその象徴だ。
連綿(れんめん)と続く闇の世界が、この日本という国を腐敗させ切る!
ラト:
(笑みを浮かべて)ならばその根ごと、塗り替えなければ。
イズミ:
あの、ラトさん。
その「君」っていうのは、誰なんです?
ラト:
(壁の地図を見つめたまま)日本だよ。
この国が、もう一度澄んだ風を取り戻すために。
そのためならば、私は手段を選ばない。
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(夜、上田家にて。縁側に座るカイトと上田。いろんな虫の音が聞こえる。)
上田:
(湯呑みを手に)なぁ、カイト。風ってのはな、いつもどこかに吹いてんだ。
カイト:
うん?
上田:
でも、どこに吹いてるなんて誰も分かりはしない。
追いかけようとすると逃げるし、止まってるように見えても流れてる。
人の心も、人生も、多分似たようなもんだ。
カイト:
へぇ。上田のじいさんって、意外といいこと言えるんだ
上田:
んん~?なんだぁ?「意外といいこと」って。
舐めとんのかお前さん。
カイト:
え~?別にぃ~?舐めてませんよぉ。
上田:
嘘つけい。
(上田とカイトが、顔を見合わせてながら笑い合う)
上田:
んじゃ、もう夜遅いし、そろそろ寝るかねぇ。
カイト:
了解~。
(上田が立ち上がり、寝床へと歩き出す)
上田:
また明日な、カイト。あんまり夜遅くまで起きんなよ~。
カイト:
はぁーい!
(夜風がふっと吹き、風鈴が揺れる)
カイト:(M)
じっと外で、夜風の匂いを感じる。
上田のじいさんと一緒に暮らし始めてしばらくが経った。僕の中で、今までになかった気持ちが、芽生えはじめようとしていた。
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(裏山にて。)
カイト:(M)
朝五時。
眠い目を擦りながら、俺はじいさんの後ろを歩いていた。
背中は小さいけど、どこか風の中心にいるようだった。
上田:
カイト。お前さんには風術のなんたるやを、今までいっぱい教えてきたな。
そこでだ。今日はお前さんに、風術の「必殺技」ってやつを教える!
それが、旋風だ。
カイト:
んぇ?ひっさつわざ?
上田:
そうだ。風術の終着点みたいなもんだ。
カイト:
…僕そんなとこまで来れちゃってたの?
上田:
おん。来れちゃったな。
カイト:
うへぇ…
上田:
旋風ってのはな、俺流の発勁(はっけい)だな。ふつうの発勁に風の力が乗るんだ。
カイト:
へぇ、発勁!めちゃくちゃ強そう!
上田:
ただな、カイト。終着点っていうだけあってな、中々身につかないんだなこれが。
カイト:
そ、そうなんだ。
上田:
うし。そんならば、やっていこうか。
まず、掌底を突き出して、手の周りに「旋」を感じろ。
カイト:(構えながら)
う、うん。旋を感じる…
上田:
風が巻くとき流れは収束して、
はあっ!
(掌底が放たれ、衝撃で前方の木が何本か折れる)
こういう風に放たれる。
カイト:
わあ…すげぇ!なんだこれ!
上田のじいさんすげえ!
上田:
腕で旋を巻いて、腰、丹田(たんでん)、足に力を集めろ。風の「芯」ってやつを作るんだ。
カイト:
わ、わかった!
カイト:
…風よ、集え。
(数秒間の沈黙)
(バシュンッ!ーー風圧が爆発する)
カイト:
うわっ!
カイト:(息を切らして)
ぐっ…っ、くそ、制御が……
上田:(駆け寄り)
おい馬鹿!無理するな!身体の流れと合ってない!
風を引っ張るな。自分が風になれ!
(カイト、しばらく呆然とした後、もう一度構える)
カイト:
っ…もう一回っ!
(またもや風圧が爆発する)
上田:
カイト!やめろ!無理するのが一番ダメだ!
カイト:
いや!まだもう一回っ…!
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(夕方、上田家。上田がちゃぶ台に湯呑みを置く)
上田:
カイト、焦るんじゃない。
才能ってのはな、努力と馴染むまでに時間がかかる。風だってな、急に吹いたら嵐になっちまう。
カイト:
…僕、風を感じ取れきれてないのかな…
上田:
カイト。
…風っていうのはな、見えないけど感じ取るもんだ。それは気配でもあり、想いでもある。
お前がなんのために強くなりたいか。
その気持ちが宿った時、旋風はお前の中で回り始めるさ。
カイト:
僕は…僕は…
(間)
カイト:
僕はもっと強くなって、恥じないくらい強くなって。
じいさんと、ずっとこうして……平凡な時間過ごしたい。
上田:
カイト…お前さん…
上田:(微笑む)
やっと、本音が聞けて良かったわ。ありがとうな、カイト。
カイト:
…!
カイト:(上田に抱きつく)
じぃさんっ!ぐすっ…じいさん…
上田:
よしよし。いっぱい泣いていいぞ。
(場面転換)
カイト:
そういえば、じいさんってどうして殺し屋辞めたの?
上田:
ああ、その話か。
…少し長くなるが、聞きたいか?
カイト:
うん。聞いてみたい。
上田:
…わかった。せっかくの機会だ。少し俺の話でもしようかね。
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(夜の路地。ナイフを払う音。コンクリートに血が滴る。)
イズミ:(M)
何十年か前の話。
上田は早くして両親をなくし、闇組織に拾われて殺しの鍛錬を積まされた。
殺し以外の稼ぎを学ばなかった上田は、頼まれた依頼を無心でこなしていった。
イズミ:(M)
若かりし日の上田は、「業界最強」と恐れられた殺し屋だった。
人間離れした索敵能力と、風のような殺気。
目を合わせたもののほとんどは、次の瞬間には首を刎ねられていた。
上田(若):
「また一人か…。名も知らねぇ。なにも感じねぇ。
けど、それでいい。」
イズミ:(M)
初めはもちろん感じていた。
恐怖や葛藤、重みを。
けれども、人を殺すたびに、彼の心はどんどん死んでいった。
感情を殺し、他人の痛みに蓋をし、いつしか上田は殺戮マシンになりかけていた。
(薄暗い路地。風がほのかに吹く。)
イズミ:(M)
ある晩、上田の任務の帰り道だった。
誰もいないはずの路地に、小さな音があった。
カサッーー。
イズミ:(M)
見ると、痩せた野良猫が、じっと上田を見ていた。
骨と皮ばかりのその猫は、血の匂いを怖がることもなく、
ただ、上田の足元に寄ってきて――すり、と顔を押し付けた。
その瞬間――
上田の記憶に、かつての「小さな命」が蘇った。
(上田の幼き日。少年の上田は、白猫と戯れていた)
イズミ:(M)
まだ「殺し屋」という言葉すら知らなかった少年の日々。
名前もつけずに飼っていた白猫。
寒い夜には布団に潜り込み、熱を分けてくれたあのぬくもり。
上田(少年)/記憶の声
「いい子だな、お前さん。……そばにいてくれて、ありがとうねぇ」
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(薄暗い路地に戻る。上田がしゃがみ込み、猫を抱き上げる)
上田:(若)/独り言
「……なんで。おまえ、そんなに……」
(間)
上田:(若)/独り言
「……あぁ、もういいや。……もう、いい」
イズミ:(M)
涙ではなかった。
けれど、確かにそれは、「熱」だった。
冷えきった心に、小さな風が吹いた。
人を殺すための風ではない。
誰かと、生きるための風だった。
(場面転換)
上田:
そうやって、俺は殺し屋を辞めたな。
カイト:
なんか、深い話だった。
上田:
何言ってんだい(笑)。そうでもないさ。
…まぁでも、猫のおかげで人に戻れたな。
カイト:
…僕、気持ちを乗せるってこと、なんとなくわかった気がする
上田:
そりゃあ良かった。
もうできそうだな。また明日から旋風修行頑張ろうか。
カイト:
うん!分かった!
僕、頑張るよ!
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(軍事風の作戦室。ラトが地図にピンを打つ)
ラト:
計画を前倒しする。
上田は、次の満月に仕留めることにしよう。
イズミ:
了解しました。狙撃班と転送班、配備済みです。
ただ…
ラト:
ただ?
イズミ:
カイトが最近、風術を身につけ始めたとの情報が…
ラト:
…
ナガセ:
あの小僧、ただの子供じゃなかったかぁ。
風術完成させたら、かなり面倒だ。
イズミ:
戦闘経験がない子供が、短期間にも関わらずとんでもない成長速度です。
これは異例中の異例ですね。
ラト:
問題ない。「想い」で術が強くなるなら、私は想 いごと、全てをねじ伏せてみせよう
ナガセ:
これも、「君」のためってかぁ?
ラト:
ああ、そうだとも。君のためなら、私はなんでもやるよ。
たとえ、カタギの人間をまきこむかもしれなくてもね。
ラト:(眼光を光らせて)
私の革命の邪魔になるものには消えてもらう。
上田、そしてカイト。待っていなさい。
すぐ会いに行くよ。
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(午後の縁側。上田とカイトが茶を啜る)
上田:(湯呑を置きながら)
カイトよ、風術ってのはな、心が濁ると渦が乱れる。
だからまあ、お茶でも飲んで落ち着くことがだいじなんだ。
カイト:(ゴロ寝しながら)
ふぁ~。爺さんはいつも、風術の話を茶と混ぜるね。
でもまあ、ありがと。
上田:(笑って)
ふん、誰が混ぜてるか。
茶が主役だ。風術は副菜みたいなもんよ。
カイト:(クスクスと笑いながら)
なにそれ。
(カイトが背伸びしながら、ゆっくりと立ち上がる)
カイト:
ちょっと、買い出し行ってくるよ。冷やし中華が食べたい。
上田:
お。いいなぁ、冷やし中華。
ついでにミョウガも買ってきてくれ。あれうまいからな
カイト:はーい!行ってきまーす。
(間)
上田:
…まったく。あいつも随分成長したなぁ。
会った時よりも幾分も立派な子になった。
誇らしいなぁ。
ラト:
やっと会えた、上田。
上田:
っ…!誰だっ…ぐっ!
(六角が上田の脇腹に突き刺さる)
ラト:
あれぇ?意外と脆いですね。
もう殺し屋の面影がないのかな?あははっ
上田:
ぶっ!誰だ、あんた。
ラト:
私はラト・サクライ。犠牲をいとわず、この国を立て直す革命家です。
もう活動していないとはいえ、かつての「業界最強」に横っ腹を刺されては私でも苦杯をなめる。
大人しく、消えてください。
上田:(血反吐を吐きながら)
ラト・サクライ…。聞いたことない名前だな。ぶっ。あんた、俺を消してどうするつもりだ。
ラト:
あなたがいなくなれば、革命はより順調に進む。
上田:
ふざけんな!
俺たちみたいな奴らを殺しても、日本は変わらない!
ラト:
黙りなさい!
上田:
があぁっ…!
(六角が再び上田の脇腹を捉える)
ラト:
殺し屋の感かな。
私の刺突(しとつ)を躱(かわ)せていないとはいえ、全て急所を避けているね。
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カイト:
冷やし中華を食べるなんて久しぶりだな~。
…いきなり出ちゃったから身なり大丈夫かな。
(自分の体の周りをキョロキョロ見回す)
カイト:あ、やべ。財布忘れたな。
じいさんとこ戻ろ~。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カイト:
じいさ~ん。ごめんごめん財布忘れちゃったから戻っ…
上田:
久々に腹刺されたなくそが…ぶっ。
ラト:
良い加減しぶといですね、あなた。
(ラトが六角を持った腕を振り上げる)
ラト:
そろそろお逝きなさ――
ん?
ラト:(M)
何。何かとてつもない違和感が…
イズミ:(M)
「怒り」という名の風が、全身を駆け巡る。
血の気が引くどころか、逆に熱が湧く。
体が――軽い。
鋭く、そして暴風のように。
イズミ:(M)ラトの第六感が警鐘を鳴らした次の瞬間。ラトと上田の前に、カイトが現れた。
カイト:(怒声)
じいさんに何してんだてめぇ。この野郎。
ラト:
何っ!?上田のガキ――
カイト:
オラァ!
ラト:
ぐうっ!
イズミ:(M)
ラトが防御するも、カイトの凄まじい蹴りで吹き飛ばされ、家の壁に激突する。
ラト:
ごはっ…
(M)どうなっている。何故上田のガキがこんな早く戻ってきて
…むぅ!?
イズミ:(M)ラトが思考していると、すでに眼前にカイトが迫っていた。
カイト:シャアッ!
ラト:ちぃっ!
イズミ:(M)
ラトがカイトの拳を躱す。
ラトの額があったところの壁に、カイトの拳がめり込む。
すぐさま拳を引き抜き、カイトが再び攻撃体制に入った。
ラト:(M)
まさか、カイトがこんなに力を付けていたなんて計算外だ!あと少しで上田を仕留めれたのに…!
ラト:
致し方あるまい!転送術!
イズミ:(M)
転送の歪音(いびつおん)と共に、ラトが姿を消した。
(カイトが上田に駆け寄る)
カイト:
じいさん!!
くそ、あの野郎!
上田:
…お前さん……きてくれたのか――
カイト:
喋らなくていい、じいさん!今すぐに闇医者を呼ぶ!
(カイトが闇医者に電話をかける)
カイト:
上田のじいさんがやられた!脇腹二箇所に刺し傷だ!7番ルートで頼む!今すぐきてくれ!
(カイトが通話を切る)
カイト:
…じいさん、悪い。
この包帯、自分で巻いてくれ。僕はあいつを追う。
上田:
カイト、辞めろ。
あまりに無茶すぎる。
カイト:
じいさん。
(直後、カイトの纒う雰囲気が一変した)
上田:
カイト…お前さん…
カイト:
ここであいつを逃したら、またじいさんとの生活が脅かされる。
ここであいつを潰す。
僕に任せて、じいさん。
(上田がそっと、カイトの顔を撫でる)
上田:
分かった、カイト。
いってこい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イズミ:(M)
ラトは転送術を使い、都心部の高層マンション屋上へ逃げ込んだ。
冷たい夜風が吹き抜ける中、月明かりだけが静かに照らしている。
ラト:
よし…。流石にここまで逃げ込めば…。
カイト:(低く、怒りに満ちて)
後ろの正面、だぁれ…!
ラト:
なっ…!ぎぃっ!
イズミ:(M)
際で反応するも、ラトの背に浅く切り傷が刻まれ、鮮血が月光に舞う。
ラトが即座に前方に飛び避ける。
ラト:
カイト、いつの間に…!
カイト:
上田のじいさんをやろうとしたあんたは、ぜったい許さねぇぞ。
ラト:
……!
(M)何このガキ。雰囲気がまるで別人になってる…!
カイト:
僕の心の中の狼よ。目覚めろ。
我流奥義、「怒嚇狼(どかくろう)」
イズミ:(M)
カイトの瞳が、燃え盛る狼の如く赤く光る。
次の瞬間、カイトが鬼の形相でラトに突っ込む。
ラト:
何かやばい!
転送術!「次元斬」!
イズミ:(M)
ラトが手を突き出してそう言い放つと、カイトの前の空間が割け、紫紺の刃が現れる。
しかし――その刃が、空を切る。
カイトの姿は、既にそこにはいない。
ラト:なっ…!どこ行った!
イズミ:(M)
ラトがすぐさま振り向くと、低く構えるカイトの姿がそこにあった。
ラト:
まずい!次元ざ――
カイト:
もう遅い。
(ラトが突き出した手を、カイトが掴む)
ラト:
しまった…!?
カイト:
手首、もらうわ。
(バキィィッ)
ラト:
う、あああああっ!!??
イズミ:(M)
カイトの掌が、ラトの手首を関節を逆方向に捻り折る。
乾いた音とともに、ラトの手が力なく弛緩する。
あまりの痛みに、ラトの動きが一瞬止まった。
カイト:
オォォラアア!
ラト:
……!
イズミ:(M)
渾身の拳が、ラトの側頭部を打ち抜いた。
空中を舞い、マンションの外壁に激突――
壁がヒビ割れ、粉塵とともにラトの体が地に落ちる。
ラト:
ぐ……ぁ………。
イズミ:(M)
血反吐を吐くも、膝をつきながら立ち上がるラト。
その顔に宿るのは、執念か、あるいは狂気か――
ラト:
てめぇみたいな…てめぇみたいなクソガキに、私の革命の邪魔をされてたまるかあぁぁ!!!
イズミ:(M)
地面を踏み抜く震脚。
カイトの腕に風が纏わりつき、空気そのものが刃に変化する。
カイト:
僕の、じいさんとの生活を、邪魔すんじゃねえぇ!
風術奥義、「旋風」!
ラト:
ごおぉぉあぁぁ!
イズミ:(M)
旋風の掌底が、ラトの腹部に直撃した。
ボロ雑巾(ぞうきん)のように、ラトが吹き飛ばされる。
しかし、微かながらもラトの意識が残った。
ラト:
転……送術……。
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イズミ:(M)
ラトは、転送術の最後の一手で、都内の廃ビルの一室に逃れた。
体はズタズタ。肋骨は複数箇所が折れ、右手首は動かない。
イズミ:(M)
視界が揺れる。吐血と共に、肺が悲鳴を上げる。
しかし、足音が――静かに、だが確実に近づいてくる。
ラト:
嘘だ…。
そんな、馬鹿な。
カイト:
じいさんやろうとしたんだ。
どこに逃げようとしてもぜってえ逃さないよ。
ラト:(わずかに笑いながら)
…私は…
日本を…変えようとしただけだ…
腐った制度を…腐った大人たちを…消して…
新しい秩序を――
カイト:
違えよ。
日本を良くするのはな――カタギの人間だ。
カイト:
カタギの人間殺しといて、日本良くするとか言ってんじゃねぇぞ。
お前がやってきたのは、革命じゃねぇ。
ただの虐殺だ。
ラト:
最後に聞いてくれ!
私の革命は…本当に素晴らしいもので…
カイト:
聞きたくないな。
耳が腐る。
(カイトの拳が、唸りを上げてラトの胸部にめり込んだ)
ラト:
があっ!ああぁ……っ………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カイト:(M)
病室には、夏の風と風鈴の音。
真っ白なシーツの上に、上田のじいさんが横たわっている。
腹部には包帯。腕には点滴。
それでも、どこか元気そうに口元を歪め、笑っていた。
上田:
カイト。無事で良かった。
カイト:
こっちのセリフだよ、じいさん。
上田:
…そうだな。
カイト:
じいさんをやろうとしたあの野郎は、きっちりカタしたからね。
上田:
…ありがとう。本当に強くなったな、お前さん。
カイト:
じいさんのおかげだよ。
上田:
…なぁ、カイト。
カイト:
ん、何?
上田:
自分の居場所が欲しいって言っとったよな。
お前さんを、俺んとこに居させてほしい。
カイト:
え…い、いいの…?
上田:
お前さんと楽しい時間過ごせた。そして命を救われた。
いつくたばるか分からんけど、余生をお前さんと過ごしたい。
カイト:
っ…!じいさんっ!
(カイト、上田に抱きつく)
上田:
これからもよろしくな、カイト。
カイト:
うん!…ありがとう、じいさん。
路頭に迷っていた少年が辿る、熱き旅路の物語。
※推定時間は、分かり次第記載いたします。
比率2:1:1
【登場人物】
カイト♂:道端で、上田に拾われた少年。
上田(かみだ)♂:かつては最強の殺し屋と謳われた熟年者。風術の使い手。落ち着いた話し方をする。
※一部、少年と若手の時の上田登場。
ラト・サクライ(不問):日本を良きものにするべく、殺し屋を殺し回る外道革命家。転送術の使い手。皮肉めいた話し方をする。
イズミ♀:冷静沈着な女暗殺者。ラトに忠誠を誓っており、転送術の補助役。
ナガセ♂:荒っぽい実行部隊長。暴力的だが理屈に弱い。ラトに従う理由は「面白いから」。上田と兼ね役。
カイト:♂
上田、ナガセ:♂
ラト:不問
イズミ:♀
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カイト:(M)
あの時のことは、今でもよく覚えている。
体は冷たくて、腹は減って。
でも、涙はもう出なかった。
あの路地の、朝の光の中に――あの人が現れるまでは。
上田:
何してんだ小僧。こんなとこでうずくまってたら、カラスに食われちまうぜ。
カイト:
…うるせぇよ、じいさん。僕のことなんてほっとけよ。
上田:
はは。そりゃあそうだわな。
知らんじいさんに話しかけられたら、少しは警戒するか。
…小僧、腹減ってんだろ。
いいパン屋知ってんだ。あんぱん、あったけぇぞ。
カイト:
…なんで俺に構うんだよ、じいさん
上田:
さぁな。情が湧いちまったからかな。
なんか惹かれんだ、お前さんに。
ほら、こっち来な。飯食わしたる。
カイト:(M)
何故かは分からないけど、僕はついていった。
パンを食べられるという甘い誘惑と共に、変なじいさんに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(数日後、上田の家にて。カイトと上田が机で食事をしている。上田が、ちゃぶ台の上に湯呑みをコトッと置く。)
上田:
でな。あのバカはカレーにキウイ入れやがったのよ。「隠し味ですっ」って自慢げに言ってな?隠し味なら隠せよっつー話だよな。へっへっへ。
カイト:(もぐもぐしながら)
はは…なにそれ。最悪じゃん。
上田:
だろう?それがな、そいつの嫁が「美味い美味い」つって言っててな。
はぁ~…。人間の味覚は信用できねぇもんだ。
カイト:
ふっ。でも…美味いよ、これ。
上田:
ははっ。そりゃあ良かった。
(間)
カイト:(M)
最近よく思うことがあるのだが、この人には不可解なことが多い。
手と腕の傷跡、皮膚の厚さ。
ドアから入ってきた時の、気配の無さ。
カイト:
…じいさん、前職って何やってた?
上田:
…聞いて驚くなよ、お前さん。
殺し屋をやっていた。
カイト:
殺し屋…
(間)
カイト:
なぁ、じいさん。僕を鍛えてくれない?
上田:
ん?急にどうした。
カイト:
強くなって、自分の居場所を作りたいんだ。
上田:
強くなってって…なんでそんなに強さにこだわるんだ。
カイト:
…くそ野郎のせいで、両親が殺されたんだ。
殺し屋を処刑するって言って、関係ない二人まで巻き込んでさ。
…そっからずっと、居場所なくして路地裏にいたんだ。
上田:
だからって言っても…。
カイト:
じいさん、頼む!僕に修練を積ませてくれ!
この通りだ!
上田:
…自分の居場所、か。なるほどな。
分かった。俺の流派である「風術」ってやつ、教えてやるよ。
カイト:
ほ、ほんと!?
上田:
ただし。厳しい訓練になるから覚悟しとけ。
カイト:
わ、わかった。僕、頑張る!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(工場の空き倉庫にて。靴の音と扇風機の回る音が響く。)
イズミ:
また殺ったのですか、ラト様。五人も…。
しかも今回は、一般人も混ざっていました。
ラト:
彼らは「巻き込まれた」のではない。
「眠っていた」んだ。腐敗の上でね。
ナガセ:
でもよぉ、あいつらカタギだったぞ。
「殺し屋の知り合い」ってだけで殺すんか?流石にやりすぎじゃねぇの?
ラト:
腐敗の根は太いんだよ、ナガセ。
腐った土では、何も育ちやしない。
だから、抜き取るしかないんだよ。根こそぎにね。
イズミ:(手帳を見ながら)
次は……「上田」。例の風術の老人ですね。
名前はいまだに聞きますが、もうすっかり面影ないですね。
ラト:
ああ。彼は最も古い毒だ。もう殺し屋から足を洗っているらしいがね。
彼の存在そのものが、私の革命の邪魔になる。
そろそろ、抜く頃合いだね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(上田家、庭先の早朝。鳥の囀(さえず)りが聞こえる中、カイトが竹ぼうきで掃いている。)
カイト:(ぼやくように)
なんで朝から庭の掃除なんだよ。
全然訓練じゃねえじゃん。あのじいさん、ホラ吹きやがって。
上田:
風術の極意は「流れを読むこと」だ。
まずは空気を読む修行からだぞ、カイト。
カイト:
それただの親父ギャグじゃんか、じいさん。
上田:
ぶつぶつ文句を言うんじゃあない。
カイト:
だって事実だもーん。
上田:
お、今の風、東南東。次枯れ葉くるぜ。
カイト:
えっ?
(風がふわっと吹き、落ち葉が流れてくる)
カイト:
…本当にきた。なんだこれ。
上田:
自然の流れを感じろ、カイト。
感覚を研ぎ澄ませて、風の流れを感じんだ。
そうすりゃあ、もっといろんなことがわかるようになるさ。
カイト:
………
(間)
カイト:
じいさん………ほんとに、なんで僕なんかを拾ったの?
上田:
言っただろ?情が湧いたんだよ、お前さんに。
誰にも頼れず、でも目だけは死んでいない。
そんなやつを野放しにすることは、できないさ。
カイト:
………
上田:
所詮俺は落ちぶれた人間さ。
でもな、カイト。昔と比べたら、これでも少しはマシになったんだ。
おかげで、お前さんみたいなやつと巡り会うことができた。嬉しく思うよ、カイト。
カイト:
ありがとう、じいさん。僕も感謝してるよ。
上田:
よぉし、その調子だ。
そのまま風の流れを読みながら、箒(ほうき)を動かせ動かせ!
カイト:
…やっぱただの掃除係させられてるだけじゃない?
上田:
そんなことはない!決してない!
あ!ほら、手が止まってるぞ。動け動け!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(廃工場跡、革命拠点。壁には地図や写真がびっしりと貼られている。辺りで鉄骨の軋む音が鳴り響いている。)
イズミ:
標的リスト、更新されました。
民間情報からの報告です。上田はまだ活動中とのことです。
ただ…何故かパン屋を営んでいるそうです。
ナガセ:ん~!?あのジジイがパン屋だってぇ?
ハハハ!(手や膝を叩いて笑う)
あの殺し屋じいさん、変なことしてやがんの。
イズミ:
それと、「後継者らしき少年」の存在も確認されました。
名前は、カイト。
(ラトが無言で写真を見つめる)
イズミ:
?
ラト様、如何なさいましたか。
ラト:
(静かに)風術の継承者、か。
上田め、面倒なことしてくれる。
このカイトって子も、放っておけないね。
イズミ:
処分しますか?彼も上田と同じく、「旧世代」の者として。
ラト:
(目を細めて)そうだね。
(間)
ラト:
「君」のために、私はやらねばならない。
ナガセ:
はぁ…まぁた始まったよ。
ラト:
分からないかい?君たちは。
この国は腐っている。裏社会の人間共はその象徴だ。
連綿(れんめん)と続く闇の世界が、この日本という国を腐敗させ切る!
ラト:
(笑みを浮かべて)ならばその根ごと、塗り替えなければ。
イズミ:
あの、ラトさん。
その「君」っていうのは、誰なんです?
ラト:
(壁の地図を見つめたまま)日本だよ。
この国が、もう一度澄んだ風を取り戻すために。
そのためならば、私は手段を選ばない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(夜、上田家にて。縁側に座るカイトと上田。いろんな虫の音が聞こえる。)
上田:
(湯呑みを手に)なぁ、カイト。風ってのはな、いつもどこかに吹いてんだ。
カイト:
うん?
上田:
でも、どこに吹いてるなんて誰も分かりはしない。
追いかけようとすると逃げるし、止まってるように見えても流れてる。
人の心も、人生も、多分似たようなもんだ。
カイト:
へぇ。上田のじいさんって、意外といいこと言えるんだ
上田:
んん~?なんだぁ?「意外といいこと」って。
舐めとんのかお前さん。
カイト:
え~?別にぃ~?舐めてませんよぉ。
上田:
嘘つけい。
(上田とカイトが、顔を見合わせてながら笑い合う)
上田:
んじゃ、もう夜遅いし、そろそろ寝るかねぇ。
カイト:
了解~。
(上田が立ち上がり、寝床へと歩き出す)
上田:
また明日な、カイト。あんまり夜遅くまで起きんなよ~。
カイト:
はぁーい!
(夜風がふっと吹き、風鈴が揺れる)
カイト:(M)
じっと外で、夜風の匂いを感じる。
上田のじいさんと一緒に暮らし始めてしばらくが経った。僕の中で、今までになかった気持ちが、芽生えはじめようとしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(裏山にて。)
カイト:(M)
朝五時。
眠い目を擦りながら、俺はじいさんの後ろを歩いていた。
背中は小さいけど、どこか風の中心にいるようだった。
上田:
カイト。お前さんには風術のなんたるやを、今までいっぱい教えてきたな。
そこでだ。今日はお前さんに、風術の「必殺技」ってやつを教える!
それが、旋風だ。
カイト:
んぇ?ひっさつわざ?
上田:
そうだ。風術の終着点みたいなもんだ。
カイト:
…僕そんなとこまで来れちゃってたの?
上田:
おん。来れちゃったな。
カイト:
うへぇ…
上田:
旋風ってのはな、俺流の発勁(はっけい)だな。ふつうの発勁に風の力が乗るんだ。
カイト:
へぇ、発勁!めちゃくちゃ強そう!
上田:
ただな、カイト。終着点っていうだけあってな、中々身につかないんだなこれが。
カイト:
そ、そうなんだ。
上田:
うし。そんならば、やっていこうか。
まず、掌底を突き出して、手の周りに「旋」を感じろ。
カイト:(構えながら)
う、うん。旋を感じる…
上田:
風が巻くとき流れは収束して、
はあっ!
(掌底が放たれ、衝撃で前方の木が何本か折れる)
こういう風に放たれる。
カイト:
わあ…すげぇ!なんだこれ!
上田のじいさんすげえ!
上田:
腕で旋を巻いて、腰、丹田(たんでん)、足に力を集めろ。風の「芯」ってやつを作るんだ。
カイト:
わ、わかった!
カイト:
…風よ、集え。
(数秒間の沈黙)
(バシュンッ!ーー風圧が爆発する)
カイト:
うわっ!
カイト:(息を切らして)
ぐっ…っ、くそ、制御が……
上田:(駆け寄り)
おい馬鹿!無理するな!身体の流れと合ってない!
風を引っ張るな。自分が風になれ!
(カイト、しばらく呆然とした後、もう一度構える)
カイト:
っ…もう一回っ!
(またもや風圧が爆発する)
上田:
カイト!やめろ!無理するのが一番ダメだ!
カイト:
いや!まだもう一回っ…!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(夕方、上田家。上田がちゃぶ台に湯呑みを置く)
上田:
カイト、焦るんじゃない。
才能ってのはな、努力と馴染むまでに時間がかかる。風だってな、急に吹いたら嵐になっちまう。
カイト:
…僕、風を感じ取れきれてないのかな…
上田:
カイト。
…風っていうのはな、見えないけど感じ取るもんだ。それは気配でもあり、想いでもある。
お前がなんのために強くなりたいか。
その気持ちが宿った時、旋風はお前の中で回り始めるさ。
カイト:
僕は…僕は…
(間)
カイト:
僕はもっと強くなって、恥じないくらい強くなって。
じいさんと、ずっとこうして……平凡な時間過ごしたい。
上田:
カイト…お前さん…
上田:(微笑む)
やっと、本音が聞けて良かったわ。ありがとうな、カイト。
カイト:
…!
カイト:(上田に抱きつく)
じぃさんっ!ぐすっ…じいさん…
上田:
よしよし。いっぱい泣いていいぞ。
(場面転換)
カイト:
そういえば、じいさんってどうして殺し屋辞めたの?
上田:
ああ、その話か。
…少し長くなるが、聞きたいか?
カイト:
うん。聞いてみたい。
上田:
…わかった。せっかくの機会だ。少し俺の話でもしようかね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(夜の路地。ナイフを払う音。コンクリートに血が滴る。)
イズミ:(M)
何十年か前の話。
上田は早くして両親をなくし、闇組織に拾われて殺しの鍛錬を積まされた。
殺し以外の稼ぎを学ばなかった上田は、頼まれた依頼を無心でこなしていった。
イズミ:(M)
若かりし日の上田は、「業界最強」と恐れられた殺し屋だった。
人間離れした索敵能力と、風のような殺気。
目を合わせたもののほとんどは、次の瞬間には首を刎ねられていた。
上田(若):
「また一人か…。名も知らねぇ。なにも感じねぇ。
けど、それでいい。」
イズミ:(M)
初めはもちろん感じていた。
恐怖や葛藤、重みを。
けれども、人を殺すたびに、彼の心はどんどん死んでいった。
感情を殺し、他人の痛みに蓋をし、いつしか上田は殺戮マシンになりかけていた。
(薄暗い路地。風がほのかに吹く。)
イズミ:(M)
ある晩、上田の任務の帰り道だった。
誰もいないはずの路地に、小さな音があった。
カサッーー。
イズミ:(M)
見ると、痩せた野良猫が、じっと上田を見ていた。
骨と皮ばかりのその猫は、血の匂いを怖がることもなく、
ただ、上田の足元に寄ってきて――すり、と顔を押し付けた。
その瞬間――
上田の記憶に、かつての「小さな命」が蘇った。
(上田の幼き日。少年の上田は、白猫と戯れていた)
イズミ:(M)
まだ「殺し屋」という言葉すら知らなかった少年の日々。
名前もつけずに飼っていた白猫。
寒い夜には布団に潜り込み、熱を分けてくれたあのぬくもり。
上田(少年)/記憶の声
「いい子だな、お前さん。……そばにいてくれて、ありがとうねぇ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(薄暗い路地に戻る。上田がしゃがみ込み、猫を抱き上げる)
上田:(若)/独り言
「……なんで。おまえ、そんなに……」
(間)
上田:(若)/独り言
「……あぁ、もういいや。……もう、いい」
イズミ:(M)
涙ではなかった。
けれど、確かにそれは、「熱」だった。
冷えきった心に、小さな風が吹いた。
人を殺すための風ではない。
誰かと、生きるための風だった。
(場面転換)
上田:
そうやって、俺は殺し屋を辞めたな。
カイト:
なんか、深い話だった。
上田:
何言ってんだい(笑)。そうでもないさ。
…まぁでも、猫のおかげで人に戻れたな。
カイト:
…僕、気持ちを乗せるってこと、なんとなくわかった気がする
上田:
そりゃあ良かった。
もうできそうだな。また明日から旋風修行頑張ろうか。
カイト:
うん!分かった!
僕、頑張るよ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(軍事風の作戦室。ラトが地図にピンを打つ)
ラト:
計画を前倒しする。
上田は、次の満月に仕留めることにしよう。
イズミ:
了解しました。狙撃班と転送班、配備済みです。
ただ…
ラト:
ただ?
イズミ:
カイトが最近、風術を身につけ始めたとの情報が…
ラト:
…
ナガセ:
あの小僧、ただの子供じゃなかったかぁ。
風術完成させたら、かなり面倒だ。
イズミ:
戦闘経験がない子供が、短期間にも関わらずとんでもない成長速度です。
これは異例中の異例ですね。
ラト:
問題ない。「想い」で術が強くなるなら、私は想 いごと、全てをねじ伏せてみせよう
ナガセ:
これも、「君」のためってかぁ?
ラト:
ああ、そうだとも。君のためなら、私はなんでもやるよ。
たとえ、カタギの人間をまきこむかもしれなくてもね。
ラト:(眼光を光らせて)
私の革命の邪魔になるものには消えてもらう。
上田、そしてカイト。待っていなさい。
すぐ会いに行くよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(午後の縁側。上田とカイトが茶を啜る)
上田:(湯呑を置きながら)
カイトよ、風術ってのはな、心が濁ると渦が乱れる。
だからまあ、お茶でも飲んで落ち着くことがだいじなんだ。
カイト:(ゴロ寝しながら)
ふぁ~。爺さんはいつも、風術の話を茶と混ぜるね。
でもまあ、ありがと。
上田:(笑って)
ふん、誰が混ぜてるか。
茶が主役だ。風術は副菜みたいなもんよ。
カイト:(クスクスと笑いながら)
なにそれ。
(カイトが背伸びしながら、ゆっくりと立ち上がる)
カイト:
ちょっと、買い出し行ってくるよ。冷やし中華が食べたい。
上田:
お。いいなぁ、冷やし中華。
ついでにミョウガも買ってきてくれ。あれうまいからな
カイト:はーい!行ってきまーす。
(間)
上田:
…まったく。あいつも随分成長したなぁ。
会った時よりも幾分も立派な子になった。
誇らしいなぁ。
ラト:
やっと会えた、上田。
上田:
っ…!誰だっ…ぐっ!
(六角が上田の脇腹に突き刺さる)
ラト:
あれぇ?意外と脆いですね。
もう殺し屋の面影がないのかな?あははっ
上田:
ぶっ!誰だ、あんた。
ラト:
私はラト・サクライ。犠牲をいとわず、この国を立て直す革命家です。
もう活動していないとはいえ、かつての「業界最強」に横っ腹を刺されては私でも苦杯をなめる。
大人しく、消えてください。
上田:(血反吐を吐きながら)
ラト・サクライ…。聞いたことない名前だな。ぶっ。あんた、俺を消してどうするつもりだ。
ラト:
あなたがいなくなれば、革命はより順調に進む。
上田:
ふざけんな!
俺たちみたいな奴らを殺しても、日本は変わらない!
ラト:
黙りなさい!
上田:
があぁっ…!
(六角が再び上田の脇腹を捉える)
ラト:
殺し屋の感かな。
私の刺突(しとつ)を躱(かわ)せていないとはいえ、全て急所を避けているね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カイト:
冷やし中華を食べるなんて久しぶりだな~。
…いきなり出ちゃったから身なり大丈夫かな。
(自分の体の周りをキョロキョロ見回す)
カイト:あ、やべ。財布忘れたな。
じいさんとこ戻ろ~。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カイト:
じいさ~ん。ごめんごめん財布忘れちゃったから戻っ…
上田:
久々に腹刺されたなくそが…ぶっ。
ラト:
良い加減しぶといですね、あなた。
(ラトが六角を持った腕を振り上げる)
ラト:
そろそろお逝きなさ――
ん?
ラト:(M)
何。何かとてつもない違和感が…
イズミ:(M)
「怒り」という名の風が、全身を駆け巡る。
血の気が引くどころか、逆に熱が湧く。
体が――軽い。
鋭く、そして暴風のように。
イズミ:(M)ラトの第六感が警鐘を鳴らした次の瞬間。ラトと上田の前に、カイトが現れた。
カイト:(怒声)
じいさんに何してんだてめぇ。この野郎。
ラト:
何っ!?上田のガキ――
カイト:
オラァ!
ラト:
ぐうっ!
イズミ:(M)
ラトが防御するも、カイトの凄まじい蹴りで吹き飛ばされ、家の壁に激突する。
ラト:
ごはっ…
(M)どうなっている。何故上田のガキがこんな早く戻ってきて
…むぅ!?
イズミ:(M)ラトが思考していると、すでに眼前にカイトが迫っていた。
カイト:シャアッ!
ラト:ちぃっ!
イズミ:(M)
ラトがカイトの拳を躱す。
ラトの額があったところの壁に、カイトの拳がめり込む。
すぐさま拳を引き抜き、カイトが再び攻撃体制に入った。
ラト:(M)
まさか、カイトがこんなに力を付けていたなんて計算外だ!あと少しで上田を仕留めれたのに…!
ラト:
致し方あるまい!転送術!
イズミ:(M)
転送の歪音(いびつおん)と共に、ラトが姿を消した。
(カイトが上田に駆け寄る)
カイト:
じいさん!!
くそ、あの野郎!
上田:
…お前さん……きてくれたのか――
カイト:
喋らなくていい、じいさん!今すぐに闇医者を呼ぶ!
(カイトが闇医者に電話をかける)
カイト:
上田のじいさんがやられた!脇腹二箇所に刺し傷だ!7番ルートで頼む!今すぐきてくれ!
(カイトが通話を切る)
カイト:
…じいさん、悪い。
この包帯、自分で巻いてくれ。僕はあいつを追う。
上田:
カイト、辞めろ。
あまりに無茶すぎる。
カイト:
じいさん。
(直後、カイトの纒う雰囲気が一変した)
上田:
カイト…お前さん…
カイト:
ここであいつを逃したら、またじいさんとの生活が脅かされる。
ここであいつを潰す。
僕に任せて、じいさん。
(上田がそっと、カイトの顔を撫でる)
上田:
分かった、カイト。
いってこい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イズミ:(M)
ラトは転送術を使い、都心部の高層マンション屋上へ逃げ込んだ。
冷たい夜風が吹き抜ける中、月明かりだけが静かに照らしている。
ラト:
よし…。流石にここまで逃げ込めば…。
カイト:(低く、怒りに満ちて)
後ろの正面、だぁれ…!
ラト:
なっ…!ぎぃっ!
イズミ:(M)
際で反応するも、ラトの背に浅く切り傷が刻まれ、鮮血が月光に舞う。
ラトが即座に前方に飛び避ける。
ラト:
カイト、いつの間に…!
カイト:
上田のじいさんをやろうとしたあんたは、ぜったい許さねぇぞ。
ラト:
……!
(M)何このガキ。雰囲気がまるで別人になってる…!
カイト:
僕の心の中の狼よ。目覚めろ。
我流奥義、「怒嚇狼(どかくろう)」
イズミ:(M)
カイトの瞳が、燃え盛る狼の如く赤く光る。
次の瞬間、カイトが鬼の形相でラトに突っ込む。
ラト:
何かやばい!
転送術!「次元斬」!
イズミ:(M)
ラトが手を突き出してそう言い放つと、カイトの前の空間が割け、紫紺の刃が現れる。
しかし――その刃が、空を切る。
カイトの姿は、既にそこにはいない。
ラト:なっ…!どこ行った!
イズミ:(M)
ラトがすぐさま振り向くと、低く構えるカイトの姿がそこにあった。
ラト:
まずい!次元ざ――
カイト:
もう遅い。
(ラトが突き出した手を、カイトが掴む)
ラト:
しまった…!?
カイト:
手首、もらうわ。
(バキィィッ)
ラト:
う、あああああっ!!??
イズミ:(M)
カイトの掌が、ラトの手首を関節を逆方向に捻り折る。
乾いた音とともに、ラトの手が力なく弛緩する。
あまりの痛みに、ラトの動きが一瞬止まった。
カイト:
オォォラアア!
ラト:
……!
イズミ:(M)
渾身の拳が、ラトの側頭部を打ち抜いた。
空中を舞い、マンションの外壁に激突――
壁がヒビ割れ、粉塵とともにラトの体が地に落ちる。
ラト:
ぐ……ぁ………。
イズミ:(M)
血反吐を吐くも、膝をつきながら立ち上がるラト。
その顔に宿るのは、執念か、あるいは狂気か――
ラト:
てめぇみたいな…てめぇみたいなクソガキに、私の革命の邪魔をされてたまるかあぁぁ!!!
イズミ:(M)
地面を踏み抜く震脚。
カイトの腕に風が纏わりつき、空気そのものが刃に変化する。
カイト:
僕の、じいさんとの生活を、邪魔すんじゃねえぇ!
風術奥義、「旋風」!
ラト:
ごおぉぉあぁぁ!
イズミ:(M)
旋風の掌底が、ラトの腹部に直撃した。
ボロ雑巾(ぞうきん)のように、ラトが吹き飛ばされる。
しかし、微かながらもラトの意識が残った。
ラト:
転……送術……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イズミ:(M)
ラトは、転送術の最後の一手で、都内の廃ビルの一室に逃れた。
体はズタズタ。肋骨は複数箇所が折れ、右手首は動かない。
イズミ:(M)
視界が揺れる。吐血と共に、肺が悲鳴を上げる。
しかし、足音が――静かに、だが確実に近づいてくる。
ラト:
嘘だ…。
そんな、馬鹿な。
カイト:
じいさんやろうとしたんだ。
どこに逃げようとしてもぜってえ逃さないよ。
ラト:(わずかに笑いながら)
…私は…
日本を…変えようとしただけだ…
腐った制度を…腐った大人たちを…消して…
新しい秩序を――
カイト:
違えよ。
日本を良くするのはな――カタギの人間だ。
カイト:
カタギの人間殺しといて、日本良くするとか言ってんじゃねぇぞ。
お前がやってきたのは、革命じゃねぇ。
ただの虐殺だ。
ラト:
最後に聞いてくれ!
私の革命は…本当に素晴らしいもので…
カイト:
聞きたくないな。
耳が腐る。
(カイトの拳が、唸りを上げてラトの胸部にめり込んだ)
ラト:
があっ!ああぁ……っ………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カイト:(M)
病室には、夏の風と風鈴の音。
真っ白なシーツの上に、上田のじいさんが横たわっている。
腹部には包帯。腕には点滴。
それでも、どこか元気そうに口元を歪め、笑っていた。
上田:
カイト。無事で良かった。
カイト:
こっちのセリフだよ、じいさん。
上田:
…そうだな。
カイト:
じいさんをやろうとしたあの野郎は、きっちりカタしたからね。
上田:
…ありがとう。本当に強くなったな、お前さん。
カイト:
じいさんのおかげだよ。
上田:
…なぁ、カイト。
カイト:
ん、何?
上田:
自分の居場所が欲しいって言っとったよな。
お前さんを、俺んとこに居させてほしい。
カイト:
え…い、いいの…?
上田:
お前さんと楽しい時間過ごせた。そして命を救われた。
いつくたばるか分からんけど、余生をお前さんと過ごしたい。
カイト:
っ…!じいさんっ!
(カイト、上田に抱きつく)
上田:
これからもよろしくな、カイト。
カイト:
うん!…ありがとう、じいさん。
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