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第4話:無双は楽しい(認めないけど)
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ダンジョンの下層に進むほど、静かになる。
理由は単純だ。
俺が通った後には、敵が残らない。
足音、呼吸、警戒――すべてが無駄だと分かってきた。
必要なのは距離と角度、それだけだ。
火球。
小。
連射。
終了。
俺は歩く速度を変えない。
「……」
違和感があった。
脈拍は安定している。
呼吸も乱れていない。
だが――
「アドレナリン値、上がってるな」
自覚はある。
否定はしない。
だが“楽しい”という感情とは別物だ。
これは、作業効率が上がったときの満足感に近い。
背後から、気配。
「……あの」
振り返ると、昨日の若者パーティの一人が立っていた。
装備はボロボロ、顔色も悪い。
「一緒に……行ってもいいですか」
「却下」
即答だ。
「足手まといになる」
「分かってます。でも……」
彼は視線を落とし、続けた。
「さっきの動き、全部理屈で説明してたでしょう。
魔法なのに……」
俺は少し考えた。
「魔法だから説明できない、という発想を捨てろ。
分からないのは、測っていないからだ」
彼は呆然とした顔で頷いた。
しばらく、後方支援として同行させた。
戦闘は俺がやる。
彼は記録。
「今の、詠唱ゼロでしたよね?」
「無駄だからな」
「威力、なんで一定なんです?」
「最小出力を固定している」
若者は、何度もメモを取った。
――嫌いじゃない。
そう思ってしまったことに、内心で舌打ちする。
ダンジョン深部、強敵が現れた。
彼が息を呑む。
「……あれ、やばくないですか」
「数値的には、そうでもない」
火球一発。
消滅。
彼はしばらく無言だった。
「……楽しい、ですか?」
唐突な質問だった。
「何がだ」
「無双……してる感じ」
俺は少し考え、答えた。
「楽しくはない。
だが――」
間。
「不快ではない」
それで十分だ。
地上に戻ると、人だかりができていた。
配信者、記者、管理局。
「ワンパン爺さんですよね!?」
「感想を一言!」
俺は帽子を深く被り、通り過ぎる。
「魔法は信じていない。
だが、使えるなら使う」
その夜、家に戻ってからも、手が少し震えていた。
恐怖ではない。
老いでもない。
「……慣れだな」
そう言い聞かせ、俺は明日の潜入予定を立てた。
少しだけ、楽しみながら。
理由は単純だ。
俺が通った後には、敵が残らない。
足音、呼吸、警戒――すべてが無駄だと分かってきた。
必要なのは距離と角度、それだけだ。
火球。
小。
連射。
終了。
俺は歩く速度を変えない。
「……」
違和感があった。
脈拍は安定している。
呼吸も乱れていない。
だが――
「アドレナリン値、上がってるな」
自覚はある。
否定はしない。
だが“楽しい”という感情とは別物だ。
これは、作業効率が上がったときの満足感に近い。
背後から、気配。
「……あの」
振り返ると、昨日の若者パーティの一人が立っていた。
装備はボロボロ、顔色も悪い。
「一緒に……行ってもいいですか」
「却下」
即答だ。
「足手まといになる」
「分かってます。でも……」
彼は視線を落とし、続けた。
「さっきの動き、全部理屈で説明してたでしょう。
魔法なのに……」
俺は少し考えた。
「魔法だから説明できない、という発想を捨てろ。
分からないのは、測っていないからだ」
彼は呆然とした顔で頷いた。
しばらく、後方支援として同行させた。
戦闘は俺がやる。
彼は記録。
「今の、詠唱ゼロでしたよね?」
「無駄だからな」
「威力、なんで一定なんです?」
「最小出力を固定している」
若者は、何度もメモを取った。
――嫌いじゃない。
そう思ってしまったことに、内心で舌打ちする。
ダンジョン深部、強敵が現れた。
彼が息を呑む。
「……あれ、やばくないですか」
「数値的には、そうでもない」
火球一発。
消滅。
彼はしばらく無言だった。
「……楽しい、ですか?」
唐突な質問だった。
「何がだ」
「無双……してる感じ」
俺は少し考え、答えた。
「楽しくはない。
だが――」
間。
「不快ではない」
それで十分だ。
地上に戻ると、人だかりができていた。
配信者、記者、管理局。
「ワンパン爺さんですよね!?」
「感想を一言!」
俺は帽子を深く被り、通り過ぎる。
「魔法は信じていない。
だが、使えるなら使う」
その夜、家に戻ってからも、手が少し震えていた。
恐怖ではない。
老いでもない。
「……慣れだな」
そう言い聞かせ、俺は明日の潜入予定を立てた。
少しだけ、楽しみながら。
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