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第16話 最終深層へ
しおりを挟む集合は、夜明け前だった。
探索者ギルド本部の地下。
普段は使われない、
大型転送ゲート前。
空気が、冷たい。
◆
「全員、揃ってるな」
雨宮かなえの声は、
いつもより低く、引き締まっていた。
「今回の任務は、
最終深層の確認および封鎖」
「――そして」
一拍置く。
「魔族ドラグの撃破」
◆
誰も、声を上げなかった。
その名が持つ意味を、
全員が理解している。
◆
ライムは、
静かにゲートを見つめていた。
五年前にダンジョンが現れ、
三年前にギルドが設立され、
二年前に探索が始まった。
だが――
この“深層”だけは、
誰も踏み込めなかった場所。
◆
「怖いか?」
佐野すすむが、
隣で小さく聞いた。
「……少しな」
ライムは、正直に答えた。
「でも、
それ以上に――」
「終わらせたい」
◆
佐野は、
短く笑った。
「だろうな」
◆
転送が、始まる。
光が、
視界を覆った。
◆
次の瞬間。
重力が、
一段階増したような感覚。
◆
「……ここが」
ひまわりが、
息を呑む。
◆
最終ダンジョン。
空間は、
地下であるはずなのに、
空が見えた。
黒い雲が、
ゆっくりと渦を巻いている。
◆
地面は、
石とも金属ともつかない素材。
脈打つように、
微かに光っている。
◆
「魔力濃度、
測定不能……」
くるみが、
機器を下ろす。
「完全に、
異世界側だ」
◆
「気を抜くな」
雨宮が、
全員を見渡す。
「ここから先、
退路はない」
◆
進行開始。
足音が、
異様に響く。
◆
最初の敵は、
配下魔族だった。
人型。
だが、
目が三つある。
◆
「来る!」
◆
連携は、
すでに完成されていた。
佐野が、
前線を固定。
ひまわりが、
援護魔法を展開。
くるみが、
弱点を即座に共有。
◆
ライムは、
中央突破。
雷を、
過剰には使わない。
◆
「――接触雷」
一撃。
魔族が、
崩れ落ちる。
◆
だが、
終わらない。
第二波。
第三波。
◆
「数が……!」
◆
「問題ない」
ライムは、
雷装を発動する。
◆
「――《雷装・深化》」
世界が、
再び遅くなる。
◆
敵の動きが、
線で見える。
◆
一体、一体。
確実に、
倒していく。
◆
やがて――
静寂。
◆
全員、
息を整える。
「……成長したな」
雨宮が、
ライムを見る。
「異世界から来た頃とは、
別人だ」
◆
「仲間が、
いたからだ」
ライムは、
そう答えた。
◆
進行。
奥へ。
さらに奥へ。
◆
やがて、
巨大な空間に出た。
◆
中央に――
玉座。
◆
そこに、
“座っている”存在がいた。
◆
黒い角。
赤い瞳。
圧倒的な魔力。
◆
「……来たか」
低く、
だがはっきりとした声。
◆
「ドラグ……!」
ライムの胸が、
強く鳴った。
◆
『随分と、
仲間が増えたな』
ドラグは、
愉快そうに言った。
『雷よ』
『今度は、
守る側か?』
◆
「……ああ」
ライムは、
一歩前に出る。
「この世界は、
俺の居場所だ」
◆
『ならば』
ドラグが、
立ち上がる。
空間が、
軋む。
◆
『その覚悟、
力で示せ』
◆
雷が、
空間を走った。
ライムの全身が、
眩い光に包まれる。
◆
「――行くぞ」
仲間たちが、
無言でうなずいた。
◆
最終決戦。
それは、
始まったばかりだった。
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