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第18話 雷が世界を守った日
しおりを挟む光が、すべてを呑み込んだ。
雷と闇が衝突した瞬間、
最終深層の空間そのものが、悲鳴を上げた。
音は、遅れてやってきた。
◆
衝撃に弾き飛ばされ、
ライムの身体が地面を転がる。
「……っ!」
呼吸が、追いつかない。
雷装・完全展開の反動が、
一気に身体を蝕んでいた。
◆
『はぁ……はぁ……』
視界の向こうで、
ドラグもまた、膝をついていた。
黒い装甲のような皮膚に、
無数の亀裂が走っている。
◆
『……見事だ』
ドラグが、低く笑う。
『異世界でも、
ここまで追い詰められたことはない』
◆
「……なら」
ライムは、
震える脚で立ち上がった。
「ここで、
終わりにする」
◆
ドラグが、
ゆっくりと立ち上がる。
『終わり?』
『違うな』
『世界とは――
奪い合うものだ』
◆
闇が、
再び集まり始める。
◆
「ライム!」
雨宮の声が、
遠くで響く。
「もう限界だ!
下がれ!」
◆
ライムは、
首を横に振った。
「……下がらない」
◆
異世界では、
逃げた。
だが――
ここは違う。
◆
「この世界は」
雷が、
微かに灯る。
「俺の、
居場所だ」
◆
雷は、
もう荒れ狂っていなかった。
静かで、
鋭い。
◆
「――《雷心》」
※雷魔法士が、自身の感情と魔力を完全に同調させる精神集中技
攻撃力は増さないが、魔力効率と制御精度が飛躍的に向上する
◆
ドラグの動きが、
手に取るように見える。
怒り。
焦り。
そして――恐怖。
◆
『……貴様』
『その目……』
◆
「見えてる」
ライムは、
一歩、踏み出した。
◆
仲間が、動く。
佐野が、
盾で地面を叩く。
「今だ!」
◆
ひまわりの魔法陣が、
ドラグの動きを縛る。
◆
くるみの声が、
響く。
「魔力循環、
中央一点に集中してる!」
◆
「……そこか」
◆
ライムは、
拳を握った。
雷が、
一点に集束する。
◆
「――《雷穿(らいせん)》」
※雷を極限まで圧縮し、
一点貫通力に特化させた必殺技
◆
雷は、
音もなく走った。
◆
次の瞬間。
ドラグの胸を、
貫いていた。
◆
『……が……』
ドラグの口から、
黒い霧が溢れる。
◆
『雷……』
『なぜ……
ここまで……』
◆
ライムは、
静かに答えた。
「守るものが、
あるからだ」
◆
ドラグの身体が、
光に包まれる。
◆
悲鳴は、
なかった。
ただ、
風に溶けるように消えた。
◆
玉座が、
崩れ落ちる。
門が、
軋みながら閉じていく。
◆
深層が、
静かになった。
◆
ライムは、
その場に崩れ落ちた。
◆
「……終わった、のか」
◆
雨宮が、
駆け寄る。
「……ああ」
「あなたが、
世界を守った」
◆
意識が、
遠のく。
最後に見えたのは――
仲間たちの顔。
◆
◆
目を覚ますと、
白い天井があった。
医療施設のベッド。
◆
「……生きてるな」
佐野の声。
◆
「当然でしょ」
くるみが、
ほっとした顔をする。
◆
ひまわりが、
涙を拭っていた。
「……おかえりなさい」
◆
数日後。
記者会見。
世界中が、
注目していた。
◆
「魔族ドラグは、
完全に消滅しました」
雨宮の言葉が、
はっきりと響く。
◆
その横で、
ライムは立っていた。
◆
雷を操る異世界人。
だが――
もう、それだけではない。
◆
「彼は――」
「世界を守った存在です」
◆
拍手が、
湧き上がった。
◆
ライムは、
小さく目を閉じた。
◆
異世界で失った居場所。
だが、
ここで見つけた。
◆
視界に、
光が浮かぶ。
【ステータス更新】
名前:ライム
レベル:20
称号:世界守護者(仮)
称号効果:
・対魔族戦闘時、全能力微増
・周囲への安心感付与(精神影響・小)
◆
雷魔法士ライムは、
この日――
世界を守った。
そして、
この現代は――
彼の第二の故郷となった。
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