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第21話 雷は、再会を呼ぶ
しおりを挟む雷は、嫌いじゃない。
空を裂くあの音は、
異世界でも、現代でも、
同じように胸の奥を震わせる。
だが――
今日は違った。
◆
ダンジョン発生から五年。
探索者として生き始めて、半年。
ライムは、地方都市にある中規模ダンジョンの前に立っていた。
「……妙だな」
隣で、雨宮かなえが小さく眉を寄せる。
「雷属性の反応が、
このダンジョン……強すぎない?」
◆
通常、雷属性の魔力は一過性だ。
溜まり続けることはない。
だが今――
入口付近ですら、
肌が静電気を帯びるように痺れている。
◆
「ギルドの測定器も、
誤作動かと思ったけど……」
かなえは端末を確認する。
「数値が、
ダンジョン深層並みよ」
◆
ライムは、
ゆっくりと息を吐いた。
「……行こう」
「え?」
「俺が、
呼ばれてる」
◆
ダンジョン内部。
壁を流れる魔力が、
明らかにおかしい。
雷属性が、
脈を打つように循環している。
◆
「まるで……」
かなえが、
呟く。
「誰かが、
内側から叩いてるみたい」
◆
その感覚に、
ライムの胸がざわついた。
雷魔法士としてではない。
一人の人間として。
懐かしい、
だが忘れられない感触。
◆
深層。
本来なら、
このダンジョンに存在しないはずの空間。
そこに――
“裂け目”があった。
◆
空間が、
雷のように歪んでいる。
バチバチと、
音が鳴る。
◆
「撤退!」
かなえが、
即座に判断する。
「これは――」
◆
だが、
裂け目が広がった。
光が、
溢れ出す。
◆
ライムは、
足を止めた。
「……違う」
「これは、
暴走じゃない」
◆
雷が、
“制御されている”。
◆
次の瞬間。
裂け目の中から、
二つの影が――
転がるように現れた。
◆
床に倒れ込む、
ローブ姿の男。
そして、
白を基調とした装束の少女。
◆
雷が、
静かに消える。
◆
「……成功、か」
男が、
掠れた声で呟いた。
◆
その声を聞いた瞬間、
ライムの心臓が跳ね上がる。
◆
「……リドム?」
◆
男が、
ゆっくりと顔を上げる。
眼鏡の奥の瞳が、
見開かれた。
◆
「……ライム?」
◆
次の瞬間、
言葉はいらなかった。
ライムは、
駆け出していた。
◆
「生きてたのか……!」
「お前こそ!」
二人は、
衝動のままに抱き合った。
異世界で別れた、
あの日以来。
五年分の時間が、
一瞬で消える。
◆
「……本当に、
現代だったんだな」
リドムは、
周囲を見回す。
◆
「……?」
その様子を、
呆然と見ていた少女が、
おずおずと口を開いた。
◆
「……あの、
ここは……天界、
でしょうか……?」
◆
ライムは、
我に返る。
「……違う」
「ここは、
俺が生きてる世界だ」
◆
少女は、
戸惑いながらも頷いた。
「……私は、
聖女マリルと申します」
◆
その名を聞いて、
ライムは一瞬だけ目を見開く。
異世界で語られていた、
“最後の聖女”。
◆
「……ようこそ」
ライムは、
ゆっくりと言った。
「現代日本へ」
◆
ダンジョンの奥で、
再会の雷が静かに消える。
だがそれは――
嵐の終わりではない。
新しい物語の、
始まりだった。
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