雷魔法士ライム ――現代ダンジョンの守護者――

塩塚 和人

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第22話 異世界人、現代に立つ

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「……音が、止まらない」

 

賢者リドムは、硬直したまま天井を見上げていた。

 

正確には、
天井から伸びる蛍光灯と、
絶え間なく低く響く空調の音。

 

「これが……
 お前の言っていた“文明”か」

 



 

ダンジョンから回収された三人は、
探索者ギルド本部の医療区画に通されていた。

 

白いカーテン。
金属製のベッド。
消毒薬の匂い。

 



 

「落ち着いてください」

医療スタッフが、
やや緊張した様子で声をかける。

 

「ここは安全です」

 



 

「……安全、ですか」

 

マリルは、
小さく胸の前で手を組んだ。

 

白を基調とした聖衣は、
すでに簡易的なガウンに替えられている。

 



 

「魔力が……
 薄いですね」

 

その一言に、
医療スタッフが言葉を詰まらせた。

 



 

ライムが、
すぐにフォローに入る。

 

「この世界は、
 魔力が希薄なんだ」

 

「だから……
 最初は、
 疲れると思う」

 



 

マリルは、
ゆっくりと頷いた。

 

「……それでも」

 

「空気が、
 とても穏やかです」

 



 

リドムは、
端末を指差す。

 

「それは……
 魔道具か?」

 



 

「スマートフォン」

ライムは、
苦笑した。

 

「通話と、
 情報収集用」

 



 

「……魔導書より、
 危険な匂いがするな」

 



 

数時間後。

 

ギルド幹部と、
政府関係者が集められた会議室。

 



 

「結論から言います」

 

スーツ姿の男が、
淡々と口を開く。

 

「お二人は、
 現代日本における
 “特定保護対象”となります」

 



 

「つまり?」

リドムが、
腕を組む。

 



 

「強制送還も、
 拘束も行いません」

 

「ただし、
 無断行動は控えていただく」

 



 

「……妥当だな」

リドムは、
即答した。

 

「我々は、
 侵略者ではない」

 



 

マリルは、
不安げにライムを見る。

 



 

「大丈夫だ」

 

ライムは、
静かに言った。

 

「俺が、
 保証する」

 



 

その一言で、
空気が変わった。

 



 

会議後。

 

仮住まいとして用意された、
ギルド近くのマンション。

 



 

「……箱だな」

 

リドムが、
玄関で呟く。

 

「箱だけど、
 住める」

ライムが言う。

 



 

「……この扉、
 鍵が小さすぎないか?」

 



 

「慣れろ」

 



 

リビング。

 

テレビがついている。

 

映像が動いた瞬間、
マリルが小さく息を呑んだ。

 



 

「……幻術?」

 



 

「映像技術」

 



 

「……すごい」

 

その声は、
純粋な驚きだった。

 



 

夜。

 

簡単な食事。

 

コンビニ弁当。

 



 

「……これは?」

 

「唐揚げ」

 



 

マリルは、
恐る恐る口に入れ――
目を見開いた。

 



 

「……美味しい……」

 



 

「聖女も、
 普通に食べるんだな」

リドムが、
冗談めかして言う。

 



 

「はい」

 

マリルは、
小さく笑った。

 

「……今日は、
 誰のためにも
 祈らなくていい日ですから」

 



 

その言葉に、
ライムの胸が、
少しだけ痛んだ。

 



 

夜更け。

 

ベランダ。

 



 

「……ありがとう、
 ライム」

 

リドムが、
夜風に向かって言う。

 

「俺たちを、
 ここに迎えてくれて」

 



 

「当然だ」

 

「俺は、
 ここで生きてる」

 

「だから、
 迎えられる」

 



 

雷は、
鳴らなかった。

 

だが――
確かに、
世界は繋がっていた。
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