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第28話 支援職という戦力
しおりを挟む支援職は、
後ろに立つものだ。
少なくとも、
現代日本の探索者社会では
そう認識されている。
◆
「回復役は前に出るな」
それが、
暗黙の了解だった。
◆
だが――
マリルは違った。
◆
「……行きます」
小さな声。
だが、
迷いはない。
◆
第十八ダンジョン。
中層。
これまでとは、
明らかに空気が違う。
◆
「反応が、
多いですね」
雨宮かなえが、
周囲を警戒する。
◆
「魔物が、
集団で動いてる」
百瀬くるみが、
短く告げる。
◆
「マリル、
下がれ」
ライムが、
即座に言った。
◆
「……いいえ」
マリルは、
首を横に振る。
◆
「後ろにいるだけでは、
間に合わない場面があります」
◆
「それは……」
言いかけたライムは、
口を閉じた。
◆
彼女の目は、
怯えていなかった。
◆
魔物出現。
三体。
連携行動。
◆
「来る!」
佐野すすむが、
盾を構える。
◆
ライムの雷が走る。
だが――
今回は、
一点集中ではない。
◆
雷は、
網のように広がり、
魔物の動きを縫い止めた。
◆
「今!」
◆
前衛が踏み込む。
しかし、
一体が死角から飛び出した。
◆
「くるみ!」
◆
マリルが、
前に出た。
◆
詠唱。
短い。
だが、
明確。
◆
「癒しは、
命を守るためにある」
◆
光が、
弾ける。
◆
それは、
回復ではなかった。
◆
魔物の動きが、
鈍る。
◆
「……デバフ?」
かなえが、
目を見張る。
◆
「回復魔力を、
逆流させた?」
◆
「聖属性の特性です」
マリルは、
息を整えながら言う。
◆
「癒しは、
生命に干渉する力」
「なら……
生命を持たないものには、
抑制として働きます」
◆
魔物撃破。
◆
静寂。
◆
「……支援職、
って言葉」
佐野が、
呆然と呟く。
◆
「見直す必要が
ありそうだな」
◆
ダンジョン奥。
魔力濃度が、
さらに上がる。
◆
「来るぞ」
ライムが、
低く言った。
◆
中型魔物。
防御特化。
◆
「通常攻撃、
通りません!」
◆
「任せろ」
ライムが、
一歩前に出る。
◆
だが――
雷を放たない。
◆
代わりに、
マリルを見る。
◆
「……できるか?」
◆
「はい」
即答。
◆
マリルが、
両手を広げる。
◆
「生命の流れを、
正常へ」
◆
光が、
敵の体表を覆う。
◆
防御が、
“回復”されてしまう。
◆
だが――
過剰だ。
◆
魔力が、
飽和する。
◆
「今だ!」
◆
ライムの雷が、
一点に落ちる。
◆
過剰な魔力が、
爆ぜた。
◆
撃破。
◆
全員が、
しばらく言葉を失った。
◆
「……これが、
支援?」
ひまわりが、
ぽつりと言う。
◆
「いいえ」
マリルは、
首を振った。
◆
「これは、
共闘です」
◆
帰還後。
ギルド会議。
◆
「評価を改めます」
ギルドマスターが、
正式に告げた。
◆
「マリルさんを、
戦術支援職として
再分類」
◆
「前線同行、
許可」
◆
カード更新。
――――――――
名前:マリル
レベル:5
職能:戦術回復支援
特性:高位神聖魔力
――――――――
◆
「……数字が」
マリルが、
驚く。
◆
「努力の結果だ」
ライムは、
微笑んだ。
◆
夜。
帰り道。
◆
「俺さ」
ライムが、
ぽつりと言う。
◆
「昔は、
雷は壊すものだと
思ってた」
◆
「でも今は……」
◆
「守るために、
形を変える力だと
思えます」
マリルが、
静かに答えた。
◆
雷は、
破壊だけの象徴ではない。
命を繋ぐためにも、
落ちる。
◆
支援職は、
後ろに立つ存在ではない。
前に出て、
世界を支える戦力だ。
それを、
この日――
全員が知った。
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