雷魔法士ライム ――現代ダンジョンの守護者――

塩塚 和人

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第28話 支援職という戦力

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支援職は、
後ろに立つものだ。

 

少なくとも、
現代日本の探索者社会では
そう認識されている。

 



 

「回復役は前に出るな」

 

それが、
暗黙の了解だった。

 



 

だが――
マリルは違った。

 



 

「……行きます」

 

小さな声。
だが、
迷いはない。

 



 

第十八ダンジョン。
中層。

 

これまでとは、
明らかに空気が違う。

 



 

「反応が、
 多いですね」

 

雨宮かなえが、
周囲を警戒する。

 



 

「魔物が、
 集団で動いてる」

 

百瀬くるみが、
短く告げる。

 



 

「マリル、
 下がれ」

 

ライムが、
即座に言った。

 



 

「……いいえ」

 

マリルは、
首を横に振る。

 



 

「後ろにいるだけでは、
 間に合わない場面があります」

 



 

「それは……」

 

言いかけたライムは、
口を閉じた。

 



 

彼女の目は、
怯えていなかった。

 



 

魔物出現。

 

三体。
連携行動。

 



 

「来る!」

 

佐野すすむが、
盾を構える。

 



 

ライムの雷が走る。

 

だが――
今回は、
一点集中ではない。

 



 

雷は、
網のように広がり、
魔物の動きを縫い止めた。

 



 

「今!」

 



 

前衛が踏み込む。

 

しかし、
一体が死角から飛び出した。

 



 

「くるみ!」

 



 

マリルが、
前に出た。

 



 

詠唱。

 

短い。
だが、
明確。

 



 

「癒しは、
 命を守るためにある」

 



 

光が、
弾ける。

 



 

それは、
回復ではなかった。

 



 

魔物の動きが、
鈍る。

 



 

「……デバフ?」

 

かなえが、
目を見張る。

 



 

「回復魔力を、
 逆流させた?」

 



 

「聖属性の特性です」

 

マリルは、
息を整えながら言う。

 



 

「癒しは、
 生命に干渉する力」

 

「なら……
 生命を持たないものには、
 抑制として働きます」

 



 

魔物撃破。

 



 

静寂。

 



 

「……支援職、
 って言葉」

 

佐野が、
呆然と呟く。

 



 

「見直す必要が
 ありそうだな」

 



 

ダンジョン奥。

 

魔力濃度が、
さらに上がる。

 



 

「来るぞ」

 

ライムが、
低く言った。

 



 

中型魔物。
防御特化。

 



 

「通常攻撃、
 通りません!」

 



 

「任せろ」

 

ライムが、
一歩前に出る。

 



 

だが――
雷を放たない。

 



 

代わりに、
マリルを見る。

 



 

「……できるか?」

 



 

「はい」

 

即答。

 



 

マリルが、
両手を広げる。

 



 

「生命の流れを、
 正常へ」

 



 

光が、
敵の体表を覆う。

 



 

防御が、
“回復”されてしまう。

 



 

だが――
過剰だ。

 



 

魔力が、
飽和する。

 



 

「今だ!」

 



 

ライムの雷が、
一点に落ちる。

 



 

過剰な魔力が、
爆ぜた。

 



 

撃破。

 



 

全員が、
しばらく言葉を失った。

 



 

「……これが、
 支援?」

 

ひまわりが、
ぽつりと言う。

 



 

「いいえ」

 

マリルは、
首を振った。

 



 

「これは、
 共闘です」

 



 

帰還後。

 

ギルド会議。

 



 

「評価を改めます」

 

ギルドマスターが、
正式に告げた。

 



 

「マリルさんを、
 戦術支援職として
 再分類」

 



 

「前線同行、
 許可」

 



 

カード更新。

 

――――――――
名前:マリル
レベル:5
職能:戦術回復支援
特性:高位神聖魔力
――――――――

 



 

「……数字が」

 

マリルが、
驚く。

 



 

「努力の結果だ」

 

ライムは、
微笑んだ。

 



 

夜。

 

帰り道。

 



 

「俺さ」

 

ライムが、
ぽつりと言う。

 



 

「昔は、
 雷は壊すものだと
 思ってた」

 



 

「でも今は……」

 



 

「守るために、
 形を変える力だと
 思えます」

 

マリルが、
静かに答えた。

 



 

雷は、
破壊だけの象徴ではない。

 

命を繋ぐためにも、
落ちる。

 



 

支援職は、
後ろに立つ存在ではない。

 

前に出て、
世界を支える戦力だ。

 

それを、
この日――
全員が知った。
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